コラム&トピック

話を聞くだけで良いのです

くらこ(漫画家・今田たまアシスタント)



 お葬式が終わり、やらなければならないことのいろいろが終わった今田から電話がかかってくるようになりました。
 精神も情緒も不安定な彼女が私を頼ってくれることはとても嬉しかったけれど、気の利かない私は何を言えば良いのかわからず、話を聞くことしかできませんでした。できるだけ時間を作って、電話に出れる時は出て、出れなかった時は必ずリターンして。

 犯人が悪いのに、彼女から出てくる言葉は自分への後悔ばかりです。

「閉店後はひとりだって知っていたし、危険だって思ってたんだから毎日迎えに行けば良かったのに」
「もう定年になっても良い年だったんだから引退して貰えば良かったんだ。私の稼ぎが不甲斐ないから」
「殺されたのが私なら良かった」

 基本は話を聞くだけでしたが、さすがにそうなってくると「あなたが亡くなっていたらその後悔をするのはお父さんだし、私たち友人だって大好きなあなたがいなくなるのは嫌だからね」と反論はしましたが。
 半年が過ぎて犯人が捕まり、それでもしばらくは自分を責めていた今田ですが、やっと相手への憎しみを吐露してくれた時に、ものすごく安心したことを覚えています。
 そう。いいぞ。いい傾向だぞ。悪いのはあなたじゃないんだから。




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