コラム&トピック

当事者が声を上げるということ

石川(インターネット管理・メディアサポート)



 犯罪被害に遭遇した場合,被害者は被害の賠償を加害者側に求める事ができます.
 殺人事件の場合など,被害者家族の立場から見ますと,亡くなった家族を金銭に換算することになりますから,提訴するだけでも相当に辛い行為に他なりません.
 さらに,その民事訴訟に勝訴したとしても,加害者側の支払能力という問題があります.罪を犯すぐらいですから加害者側には支払い能力が無い場合も多いですし,資産を他に付け替えて逃れようとするような事例もありました.

 犯罪被害者の家族が加害者に賠償を求める民事訴訟というものは,時として回収の難しい債権,言うなれば「不良債権」を自ら抱え込みにいく様なものなのです.被害者や家族が賠償金をしっかりと受け取るのは,難しいのが現実です.そこで兵庫県の明石市が,2014年の4月から賠償金の一部を立て替える「立替支援金制度」をはじめています.未払いの賠償を抱えた被害者側から見ても,とても助かる革新的な救済制度といえます.

 しかしながらこのような救済制度も,規模が小さいうちは良いのですが,被害者感情で不良債権を国に押し付けている様なものですから,バブル崩壊以降,不良債権処理で塗炭の苦しみを味わった日本社会全体から見れば疑問符がつくものでもあります.少なくとも何らかのかたちで加害者側からの債務回収の道筋を示さない限り,制度の拡大は難しいでしょう.犯罪被害者が声を上げて,それが国の制度や広く社会を動かす様な事があれば,時として被害者の側が批判を受けることもあります.そんな時に真摯に批判と向き合うことができなければ,被害者がバッシングの対象となってしまいます.

 「声を上げたことに対する責任」もまた,存在しているわけです.
 被害者としての感情と理性の狭間での葛藤となりますが,それもしっかりと受け止めていかなければなりません.

 さらには「犯罪被害者として声を上げる」事自体がとても困難である場合もあります.
 性犯罪などの例では,ただでさえ声を上げるのが難しい上に,起訴されて司法の場で裁かれない事も多く,和解や不起訴になった件で犯罪の被害として声を上げられるのかという問題が起こります.一筋縄ではいきません.そして触法精神障害者による被害があります.日本の刑法では,39条で「心神喪失者の行為は罰しない」と定められています.実際には起訴前の精神鑑定の段階で処置が決まってしまい,被疑者が司法の場で裁かれるのは稀です.その様な事件で被害者が「犯罪被害者」として声を上げると,それが逆に人権侵害になってしまうわけですね.触法精神障害者による犯罪被害を受けた当事者や家族から直接情報を発信する事は,遺憾ではありますがいまだ難しい状況にあります.




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