コラム&トピック

LGBT性暴力被害者の実態

浅川浩己(フリーライター)



<LGBT性暴力被害者の支援はコミュニティやライフスタイルを知ることから>
Q、そもそも岡田さんや宇佐美さんの活動の原点は、どこにあるのでしょうか?

A、16年前、アメリカのワンストップセンターのスタッフが日本に来て養成講座
を実施したことがあって、その受講をした際、講師の先生が一番最初に言った
言葉ですね。
『みなさんLGBTのことを知っていますか? LGBTのコミュニティや
ライフスタイル、どんな考えを持っている人たちがいるのか。
もし知らないという人がいるのであれば、帰ったらすぐ、あなた達のホームページ
を「一部の性暴力サバイバーに対応している」と書き換えてください。』と。
私は、その言葉に衝撃を受けましたし、LGBTの性暴力被害者も、ちゃんと支援を受ける権利があるんだと、自分たちが思っていたことは間違いではないんだと、
すごく勇気をもらいました。
当時の日本はというと、女性の性暴力被害者以外のことは、ほとんど考えられて
おらず、LGBTの性暴力被害者については、当事者たちの語りがほんの少しある
だけの状況で、団体によっては存在すら認識していませんでしたから。
実際、私たちも「LGBTの人たちが性暴力被害を訴えることによって、性暴力被害者の大多数を占める女性の被害が矮小化されるので、被害を訴えるのは止めて欲しい」と言われたこともありますし。

Q、では、現在、性暴力被害者の支援機関はLGBTのコミュニティについては
知っているんですか?

A、私の知る限り、知っているところは、数少ないというのが実際のところだと
思います。LGBTの人たちはこういう人たちですよ、みたいな初歩的な研修を
行っているところは、ちらほら出てきているのですが、LGBTのコミュニティや
ライフスタイルを知る研修まで行っているところは、ほとんどないですね。
LGBTの人たちは、LGBTがまだまだ社会に認知されていない上に、
性暴力被害に遭うと、より困難な状況に陥りやすいですから、
もっと等身大のLGBT、そしてLGBTのレイプサバイバーの人たちを知ってほしい
ですね。私たちとしては、女性だけを重点的に対応をするのではなく、
そろそろ性暴力被害者の全体像を見てほしいと思います。

Q、「性暴力被害の全体像を見てほしい」とのことなんですが、もっと詳しく説明していただけないでしょうか?

A、性暴力被害に遭い、相談機関に相談しても、LGBTに対する無理解や無知を
ぶつけられ、LGBTの説明に労力をかけざるをえない人たちをたくさん見てきま
した。一度でも相談したことのあるLGBTの人たちは、疎外感や壁を感じることが多く、もう2度と相談はしたくないと言っている人は結構多いです。

女性から相談を受ける人が女性が生きている社会的な環境やコミュニティ、
その生活形態を知らないで相談を受けるのは難しいと思います。それと同様に、LGBTのコミュニティやライフスタイルを知らないで、LGBTの人に合った言葉を
かけたり、対応が出来たりしますか? 出来ませんよね。
LGBTの性暴力被害者に届く言葉で対応しないと、被害者の声はあがって
こないですし、可視化されません。このままだと、LGBTの性暴力被害者は、
ほとんど存在していないことになってしまいます。

私たちは、多様な性暴力被害者がいることを踏まえて、社会制度を構築していく
必要があると思っていますし、このことって、LGBTでない人たちが言うことが、
本来の姿ではないかと思います。
なぜなら「当事者たちに語らせる」ということを、これまで同様にさせる社会というのは、どうしても人柱を作ってしまいます。今の社会はマイノリティに優しいとは言えません。
当事者たちが頑張って声をあげても、そこにはいつもバッシングや嘲笑が
目立ってしまいます。そういうものから当事者を守ること、当たり前の権利を
得られるようにしていくことが、社会運動の基本かなと思っています。




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