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<もんじゅ事故自殺裁判> 東京地裁棄却に対し遺族が控訴

 1995年12月、高速増殖炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)のナトリウム漏れ事故を巡り、動力炉・核燃料開発事業団(動燃、現・日本原子力研究開発機構)のビデオ隠し問題の内部調査を担当し、自殺したとされる職員の遺族が「記者会見でうその説明を強いられ、死に追いやられた」として、同機構に損害賠償を求めた訴訟の判決が5月14日東京地裁で言い渡されました。
 訴えていたのは、動燃の総務部次長だった西村成生さん(当時49歳)の妻トシ子さん(61歳・当会会員)と息子さん2人です。山崎勉裁判長は「動燃側が職員に記者会見で虚偽発表を強いたとは認められない」と述べ、西村さんの会見での発言は「意図的に何らかの勘違いによるもの」とし、動燃側は自殺を予見できなかった、と遺族の請求を棄却しました。

 判決によると、動燃は事故翌日の1995年12月9日に現場をビデオ撮影したが公表せず、西村さんが担当した内部調査で、同月25日に社内で保管していたことが判明しました。しかし西村さんは96年1月12日に開いた記者会見で、動燃本社がビデオの存在を知った時期について調査結果とは異なる「1月10日」と発言し、会見の翌13日未明、都内のホテルから飛び降り自殺したとされています。
 西村さんの妻トシ子さんは、判決後記者会見を開き「(虚偽発表が)夫の勘違いというなら、どうして同席していた上司は訂正しなかったのですか。上司に無断で発表内容を変える訳がありません」と無念の思いを述べ、その後控訴しました。

 事件当時はまだ「過労死」という言葉も無く、業務の内容にかかわらず自殺は労災の対象として見なされていませんでした。動燃の特命を受けた調査であり、事態の重大性を認識していたからこその「死」であったと思われ、渦中の動燃側は担当者の心身に「安全配慮義務」があったとの西村さんの主張は、11年以上を経た今日の社会では十分に理解でき得るものです。また、この問題には、原子力関係という特殊な業種であるため、社会からの偏見もありました。

 当会としては、控訴審では動燃側の責任が認められ、西村さんの死亡について労災が適用されるよう支援していきたいと思います。

2007/6/8掲載
2007/6/25修正


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