空力中心と風圧中心 (06-05-11)

飛行中の翼に働く空気力は、翼を進行方向に対して垂直上方に持ち上げる揚力、進行方向に逆らう抗力と、翼を回転させようとする働き:回転モーメント(トルク)があります。これらの力が作用する場所を表す大切な概念が空力中心と風圧中心です。
本質的に重要な概念は空力中心(ac, aerodynamic center)の方です。風圧中心(cp, center of pressure)は計算上の便宜から導入された二次的な概念と思ってください。その証拠として、迎角がだんだん小さくなり揚力係数Clが0に近づくとcpは、翼から10m、100mと後退しついには無限遠まで後退します。翼の揚力がその翼の外で発生すると言うのは直感的にも変です。

翼の回転モーメントは前縁から25%付近の位置で測ると迎角に無関係にぼぼ一定の値を示します。この位置が翼の空力中心acです。翼の揚力、抗力もこの位置に発生すると考えていいことになります。

一方の風圧中心cpはその位置に翼の揚力が作用すると考えれば、回転モーメントが0になる場所です。飛行機の縦の安定を考えるときなどはcpが便利かも知れません。

cpの位置は空力中心acにおける揚力と回転モーメントから計算できます。図で太線はコードcの翼、前縁からacの位置に空力中心ACがあり、そこに揚力Clと回転モーメントc*Cmが発生しています(註1)。この2つの働きを一つの力で表現するために必要になるのが風圧中心cpです。揚力ClによりACの周りに回転モーメントc*Cmが発生する場所(表現できる場所)が風圧中心CPの位置になります。位置cpを仮定すると図から
(cp-ac)*Cl=c*Cm (腕cp-ac*力Cl=腕c*力Cm)
の関係が成立します。これを変形すると教科書にでている
cp/c=ac/c+Cm/Cl  (註2)
が得られます。Clを0に近づけるとcpは段々大きくなり、無限大に近づきます。
(以上では説明の都合上Cl、Cmを力としましたが、これを揚力係数、モーメント係数と読み替えると普通の説明になります。)

(註1)cを梃子の長さ、Cmを梃子に加える力と考えるとわかり易い。
(註2)Cmの符号の取り方によりcpとacの位置が入れ替わります。