サーマルを捕捉する機体(08-02-16)

松本投稿
佐々木正司さんのコメント抜粋(関連事項として引用)
松本コメント

02113/02115 松本允介 a:サーマルを捕捉する機体
( 8) 96/01/29 17:36 02104へのコメント

a/A-dynamics c/C-Line e/Engine g/General h/HLG p/Paper r/Rubber s/Scale
t/Tow

高崎さん 皆さん 今晩は

>>>なおサーマルに近付き・中心に留まるには、
>>>1. 縦の慣性モーメントが小さく
>>>2. 旋回の内側!の主翼の迎え角を主翼外側よりも大きい
>>>機体が良い、と言うのが定説になっている様です。
>>2説ともはじめて聞きました。
>>1.については、サーマルに当たったときの(短い間の)縦方向の
>>機体の暴れを押さえるという意味なのでしょうか。

1.は高崎さんの解釈が正解の様です。
2.についてはサーマルの構造が佐々木さんの#2072の通り
>泡は実は中央が上昇風、周囲が下降風のドーナツ状と思われます。
となっているの所がポイントです。
(なおドーナツは全体として上昇しているため、周囲の下降風も相対的なもので、
その部分も対地速度は上昇と考えて良いと思います。サーマルの影響外の場所は
サーマルの上昇分を補償するため、全体として非常に弱い下降風になっているのでは
無いでしょうか。)
このドーナツの部分は丁度原爆のきのこ雲の様な形(事実あれは巨大な上昇気流だと
思います。)で、ドーナツの心に向かって上昇速度が徐々に上がっています。
ドーナツが段々太って、中心のすきまが無くなったものを想像した方が良いかも
知れません。

文献によれば正の上昇速度勾配に向かって機が進入すると機は加速されます。
逆に上昇速度が徐々に下がっている方向に機が進めば機は減速されます。
この理屈が私には今一つ理解出来ませんが、これを前提に話を進めます。
サーマルの外周から中心に近づく時は上昇速度勾配は正、離れる時は負です。

右旋回滑空に調整された右翼取り付け角が大きい機を考えます。
この機の滑空速度が通常より上がると左翼よりも右翼の揚力の増加が大きいため
右翼持ち上げ、左へ横滑り、機首左転向のステップで旋回半径が通常よりも大きく
なります。つまり直線飛行の傾向になります。
滑空速度が通常より下がると逆に旋回半径が通常よりも小さくなります。

この様な機が上昇気流のドーナツの付近を旋回している状況を考えると、機がドーナ

の中心に向いた時は直進傾向(旋回半径増大)でドーナツの中心に近づき、中心から遠

かる場合は旋回半径が小さいのでドーナツの中心から離れる距離が減少します。
この様子はコイルスプリングを横にずらして押しつぶした様子に似ています。

この過程が繰り返されると機はサーマルの中心に徐々に近づき、最後にはサーマルの
中心を旋回し続けることになります。

この原理のゴム動力機サーマル捕捉能力は日本でも「こうすれば飛ぶ模型飛行機」の
勝山彊さん他が確認済です。

文献は今週末高崎さんがグリーンパークに来られたときコピーを差し上げます。
内容の吟味をお願いします。

なお前回の発言の「定説」は少し言い過ぎでした。
以下は高崎さんの発言へのコメントですが、本筋には関係の薄い付け足しです。

>>・旋回内側の翼をねじり上げるというのは、グライダーのように翼幅が細長くて
>> 翼の揚力係数が大きいときは、翼の抵抗差によって逆に旋回を助ける
>> 方向に働くと言う話を聞いたことがあります。
外翼が前進して揚力増加、翼上げ、横滑り、垂直尾翼で首振り、で旋回でしょうか。
ただし今回の議論では上記の通り、旋回ではなく直進が必要です。

>> (実際8字飛行及びドーバー海峡を横断の人力機ゴッサマー・コンドルと
>>  アルバトロスは主な横操縦に主翼のねじり(エルロンとは逆方向)
>>  を積極的に利用していたそうです。これはスパイラル不安定
>>  (紙飛行機で言うらせん降下に近い?)を防ぐ効果もあったそうです。)
確かに旋回内側の翼が下がらないので横滑りもなく、スパイラルダイブの心配は無さ
そうです。

>> 紙飛行機でも、水平尾翼の傾きがないのに投げ上げ時と滑空時のの旋回方向が
>> 異なることがあり、よく見ると滑空旋回内側の翼端がねじり上がっていました。
WEST君の受け売りですが、エルロンリバーサル、つまり高速時に強い空気力が
働いて一瞬ねじり下げの状態になり逆方向に旋回したのでは有りませんか。

>>2)サーマルの端を抜けてしまい、一時的に機の揚力が失われるときに
>>  単にラダーだけで旋回上昇を調整していると、垂直上昇の方向への調整の
>>  度合いにもよりますが、一気にらせん降下に入ってしまいます。
上記の通り空気の上昇速度勾配がマイナスの場合の機の速度低下が原因では無いで
しょうか。だとすれば左翼より大きな右翼の揚力の低下がキッカケでらせん降下に
入るのが理解出来そうです。

>>  水平尾翼の傾き(スタブティルト)はそれを防ぐ効果もあると思うのですが、
>>  翼端のねじり上げは同様の効果があるのでは?
逆に、翼端のねじり上げがある場合はらせん降下を防ぐ対策が必要なのでは無いで
しょ
うか。

松本允介

02123/03119 佐々木正司 RE:a:サーマルを捕捉する機体
( 8) 96/01/30 00:26 02113へのコメント コメント数:1

(省略)

サーマルを捕捉する機体、松本さんの解説、良く分かりました。
R/Cグライダーでは、目を皿のようにしてリフトのある方、翼の上がる方と
探しているのですが、内翼の迎角大で補足する様子、自動操縦ですばらしいです。

私が実機でやる、センタリング法の一つにバンク変化法があります。
旋回中、上昇の弱いところから、強いところへ向かう時バンクを5度ゆるめ
プラスのピークを越えたら、元のバンクより5度ほど深くします。(10度変化)
これを旋回のたびに行い、全体が均一に上がるまで繰り返します。
中心へ向かうとき、旋回半径を大きくし、離れるとき半径を小さく、
#2113の自動補足と同様の事を、実際おこなっています。

ピッチ姿勢を一定に保っていても、リフトが強くなると確かに速度が増えます
(イエーツ効果)。それで遠心力も増え、多少は旋回半径増大にもつながっていま
す。

釣り合い旋回では、ラダーをやや内側へ切り、エルロンはやや外にたおしている
(内翼の迎角大の状態で飛行している)ので、模型同様、自動補足機能も
働いていると考えられますね。
(以下省略)

02129/03119 松本允介 RE^2:a:サーマルを捕捉する機体
( 8) 96/01/31 17:35 02123へのコメント

a/A-dynamics c/C-Line e/Engine g/General h/HLG p/Paper r/Rubber s/Scale
t/Tow

佐々木さん 皆さん 今晩は

佐々木さんの丁寧な解説で実機グライダーでの様子が大分理解できました。
#2113を書きながら「実機グライダーではどうなんだろう」と思っていたんです。

>>#2113の自動補足と同様の事を、実際おこなっています。
これはグライダーの世界では常識なのかもしれませんが、さすがですね。

>>ピッチ姿勢を一定に保っていても、リフトが強くなると確かに速度が増えます
>>(イエーツ効果)。それで遠心力も増え、多少は旋回半径増大にもつながっていま

これも聞いて安心かつ勉強になりました。

>>(キャノピーに貼った毛糸がまっすぐ=滑りのない旋回)になります。
横滑りなどが目に見えるのがうらやましい。

ところで前回書き落とした文献名です。
Martin, Brian: Wakefield Thermal Dynamics "Seeking Thermals By Design"
Twenty-Third Annual Report of NFFS Symposium(1990), p. 29 - 39、 NFFS

Brian氏は英国の電気メーカーに勤める技術者でWakefield級のベテラン、
航空工学が本職ではない様です。

松本允介

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