キャッツ

視察日:2001年8月11日(土)・昼の部


興行の概要

場所−−−ニュー・ロンドン・シアター
客席数−−不明
作品初演−1981年5月11日
上演終演−2002年5月11日(土)
上演期間−21年間
入場料−−37.5ポンド(ストール)

劇場の概要

ロンドン・ウエストエンドの中では比較的モダンな劇場。1965年に誕生。1973年に、舞台とともに客席の一部まで回転する劇場に改築。1981年から、キャッツの専用劇場として使われてきた。2000年1月に、英国の作曲家アンドリュー・ロイド・ウェバーがオーナーとなった可能性がある。

作品の概要

ノーベル賞作家T.S.エリオットの描いたユーモアとセンス溢れる猫についての詩集からヒントを得て、アンドリュー・ロイド・ウェバーとキャメロン・マッキントッシュが初めてコンビを組んで制作された作品。次々と個性豊かな猫たちが登場し、踊り、歌う。作品の大半は猫たちの自己紹介であり、全体としてのストーリー性はあまり強くないので、全体としてのドラマチック性に欠けるが、逆に各シーンがそれぞれ独立した魅力を持っているので、子どもでも分かりやすい作品となっている。

ロンドン、ニューヨークに続き日本でも1983年に劇団四季により公演が開始され、それぞれロングランを続けてきた(日本のみ、常設の専用劇場がない)。しかし、さすがに観客動員力が低下してきたため、ニューヨークでは2000年8月に終演、続いて2002年5月にロンドンでも終演。日本では今後も公演される予定。

公演の様子

 チケット受取

開演時刻の3時の30分前に劇場に到着。劇場窓口ですんなりとチケットを受け取った。席番も予約通り。便利な世の中になったものだと思った。

 入場

入口には、「この公演、チケットあります」の看板。毎日出しているからであろう、少々くたびれた感じで、ロングラン末期の寂しさが漂っていた(視察日時点では公演打ち切り日は未発表だったが、視察日の9か月後に終演となった)。

ロビーはハー・マジェスティーズ・シアターよりも広く、キャッツに関する展示がなかなか興味深かった。世界各国での公演を紹介するパネルには、熱心なファンが見入っていた。またキャッツのステージ衣装を着たマネキンは、思わ素晴らしいリアルさで、もしかしたら瞬きをするのではないかとじっと見つめてしまった。

劇場内は、日本のキャッツシアターと同じように、ステージから左右の壁までをフルに使って立体的にゴミ捨て場を演出している。これを見るだけで、わくわくしてくる。

客席まわりのゆとりも、ハー・マジェスティーズ・シアターよりも上。しかし、劇団四季の春・秋の劇場の方がもっとゆったりしている。イギリス人は日本人よりも体格が大きいのに、このような座席では、大人の男はつらいと思う。

 公演

日本の劇団四季の公演を10回くらい見ており、1990年にはブロードウェイで見た。さらにCDも頻繁に聞いているので、日本語のセリフや歌詞はほとんど覚えていた。そのため、オペラ座の怪人と同じように、英語ながらもセリフと歌詞がすんなり入ってきて、しっかり楽しめた。

歌は劇団四季の公演よりもはっきり1ランク上。特にグリザベラの歌はうまいだけでなく感情がたっぷりとこもっていて、名曲「メモリー」では思わず目頭が熱くなってしまった。英語力のない私が英語の歌でぐらっとくるとは、まさか思わなかった。

ダンスは素晴らしく、日本版よりも2ランクか3ランク上。ブロードウェイでの公演もそうだったが、欧米人のダンスは、とてもシャープでダイナミックだ。伸長180センチを超える女性ダンサーの全員が、軽々と足を頭上に蹴り上げる様は、実に圧巻。劇団四季でもシャープなダンスを踊るダンサーはいるが、筋肉の質と量が違うのだろう、ダイナミックさの点では欧米人に大きく差をつけられている。

また、歌とダンスが両立している俳優ばかりである点にも驚いた。日本版のキャッツでは、シンガーはダンスが下手だし、ダンサーは歌が下手なので、誰がシンガーで誰がダンサーだか分かりやすい。しかしロンドン版では、ダンサーの歌がうまく、シンガーのダンスがうまいので、どっちがどっちだかまったく見分けが付かなかった。全員が歌えて踊れる、レベルの高いアクターが揃っている。層の厚さ、ということなのだろうか。

ストーリーでは、日本版と違う点がいくつかあった。日本版にない犬同士の喧嘩のシーンがあり、また第1幕と第2幕の間の休憩が入るタイミングが異なった。

座席はP列の26〜27、前から15列目でステージからは適度の距離。ほぼ正面なので、ステージを見渡すことができる。1階のストールの中でもかなりいい席だ。4か月前の予約でこのような席が取れると言うことは、チケットの売り行きが芳しくないということだろう。

飲食&物販

 アイスクリーム販売

オペラ座の怪人と同じように、休憩時間にアイスクリームが販売され、よく売れていた。商品も同じだったので、今回は買わなかった。

 売店

開演前、終演後とも、日本の劇団四季の劇場と同様に売店がごった返していた。品揃えは、オペラ座の怪人よりもグッズ類が豊富に見えた。

 プログラム販売

ロビーの端に、プログラム専用ミニ売店があった。売り子がとても美しい娘なのに、目立たない位置にあるためか、売れ行きは悪い。近づいていくと、寂しそうな顔がぱっと明るくなった。プログラムは3ポンド。「あなたはアクターか?」と聞くと、「アクターになるために、歌とダンスのトレーニングをしている」。にっこり笑った口がとても大きいので、いいシンガーになれるかもしれない。細く可憐なたたずまいは、オペラ座の怪人のクリスティーヌのイメージだ。がんばれ。

備考

 客層

オペラ座の怪人ではほとんど見かけなかった子ども連れの客が、キャッツではあちこちにいた。たいていの子どもは、ちゃんと着飾っていた。

 チケット価格

チケット本体は37.5ポンド。公演の4か月前にファースト・コール・チケッツというオンラインチケット販売業者を通じて購入した。販売手数料は1枚5.65ポンド。さらに、劇場窓口でのチケット交付料として3枚で1.5ポンドが加算された。合計すると、1枚43.65ポンド(当時の為替レートは1ポンド=185円、約8000円。オペラ座の怪人とまったく同額であった。

企画のネタとして

劇団四季の公演を見ている限りでは、「子どもでも楽しめるファミリーミュージカル」は、その大半が「大人としては、1回観ればもう充分」という感じだ。しかし、キャッツは違う。子どもでも楽しめる、そして大人の鑑賞にも充分耐えうる。耐え得るどころか、大人でもリピーターにしてしまう奥の深さがある。ミュージカルとして、キャッツは独特の位置にある。ミュージカルの可能性を大きく広げたエポックメイキングな作品とも言えるだろう。そしてイベント業界にも、大きな影響を与え続けている。

英米で終演になったとはいえ、この作品がファミリーミュージカルの最高傑作であることにかわりはない。日本公演、ブロードウェイ公演、ロンドン公演の3種を観て、演出の「その国らしさ」をそれぞれに感じることができて、実に興味深かった。

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