モール・オブ・アメリカ(MOA)

視察日:2002年8月3日(土)・5日(月)


施設の概要

場所−−−ミネソタ州ブルーミントン(ミネアポリス郊外)
敷地面積−31.6ha
延床面積−38.7ha
売場面積−23ha
開業時期−1992年
駐車台数−12750台(周辺を含むと30000台)
営業時間−10時−20時、金曜と土曜は21時まで
店舗数−−583店(うちアンカーテナント4店、460店とする資料もある)
従業員数−約1万人
来場客数−1日約11万人、年間4000万人以上
総工費−−6億2500万ドル(1/3が本体建設費、2/3は周辺環境対策費)

施設の特徴

アメリカ最大のショッピングセンター。ノースウエスト航空のハブ空港になっているミネアポリス空港の近くにあり、飛行機を使ってモール・オブ・アメリカに訪れる人も少なくない。年間来場者数は4000万人以上、そのうち3割以上が旅行者。なお、世界最大のショッピングセンターはカナダのウェストエドモントンモール。

現地の様子

 モールの設計

中央の吹き抜けの遊園地を真四角に囲むように3層(一部4層)の建物が建っている。動線はぐるりと一周できるレーストラック型。動線の角の部分(真四角の四隅)に核テナントのデパート(ノードストローム、メーシーズ、ブルーミングデール、シアーズ)が配置されている。非常にシンプルなレイアウトで、初めて訪れた人でも分かりやすい。

建物の入り口まわりのデザインは、良く言えば自然体、悪くいえば安っぽい。館内の内装の仕上げも、あまりお金をかけていない。高級感をアピールしようとはしてない模様。

 ゾーニング

核テナントと核テナントの間の直線部分は、East Broadway、South Avenue、West Market、North garden と名付けられ、それぞれ異なった演出がなされている。キーカラーはそれぞれ水色、紫、青緑、赤。

 テナント構成

これだけ大きければ、何でも揃っている。それ以上に、何でも複数の店舗で比較検討できるという感じ。空きテナントは極めて少なく、一生懸命探したが8軒程度。そのいずれも、新しいテナントが決定済み。

 来店客数

土曜日の10時、開店と同時に到着した際は、周辺道路からクルマが続々と集まっている流れができていた。駐車場にすごい勢いでクルマが吸い込まれていく、という感じ。館内は、開店と同時にたくさんの来店客が流れ込み、通路が空いているように見えたのは最初の30分だけ。あとは夕方まで、大にぎわいの状況が続いていた。しかし動線が太くゆったりしているので、混雑日のららぽーとのような歩きにくさはない。

その後、平日の午前中にまた訪れてみた。空いているかと思ったが、意に反して館内は大にぎわい。MOAのすさまじい集客力に驚いた。

 オリジナルグッズのギフトショップ

MOAのオリジナルグッズを揃えたギフトショップが数軒あり、かなり賑わっていた。

 クーポンブック

インフォメーションセンターで、分厚いクーポンブックを有料(9,95ドル)で販売していた。総額で1500ドル以上の割引を受けられるとのこと。

 キャンプ・スヌーピー

スヌーピーをメインキャラクターとするテーマパーク。面積2.8ha。5階の高さにある屋根まで吹き抜けたなので、広々と見える。メインキャラクターにスヌーピーが選ばれた理由は、ミネソタ州セントポールがスヌーピーの作者チャールズ・シュルツ氏の生まれ故郷であるため。なお、スヌーピーがキャラクターに選ばれているテーマパークとしては、ロサンゼルスのナッツ・ベリー・ファームがあるが、こことの関係については不明。

ジェットコースター、メリーゴーランド、観覧車などのアトラクションは合計28。アメリカ各地にあるスリルライドパークとはターゲットが異なるため、比較的マイルドなライドが主体。入場無料、乗り物を乗る際に料金を払う方式。基本は1ポイント=75セントで、回数券は10ドル(14ポイント)、20ドル(29ポイント)、30ドル(45ポイント)、50ドル(90ポイント)の5種類。乗り物ごとに3〜6のポイント数が決められている。1日乗り放題の乗り放題のアームバンドは22.95ドル(大人・子ども同額)。回数券、アームバンドのどちらが主ということはなく、客は自分の予定に合わせて選んでいる様子。ただし、大人でアームバンドを付けている人はほとんどいなかった。

土曜日の午前中に、人気のありそうな Xcel Energy Log Chute (Waterfall)、Ripsaw Roller coaster (ジェットコースター)、Skyscraper Ferris Wheel (観覧車) に乗ってみた。この時点ではどれも5〜10分程度の待ち時間だったが、その後どんどん客が増えてきたので、ピーク時には30分かそれ以上の長蛇の列ができる可能性がある。

 アンダー・ウォーター・アドベンチャー

地下にある全長90mの水族館。ミネソタ州から始まるミシシッピ河を表わしていて、巨大なエイやサメなどの泳ぐ姿を下から眺めながら、実際に川底を歩いているような気分になれる。

 映画館

モールの最上階には映画館が入っている。スクリーン数は14と、それほど規模は巨大ではない。

 レストラン

フルサービス・レストランは25軒(ナイトクラブを含む)。Rainforest Cafe と Planet Hollywood があり、行列ができていた。何故か Hard Rock Cafe はなかった。

 フードコート

2カ所に分かれており、South Avenue と North garden の3階。それぞれ12店ずつ。南にマクドナルド、北にバーガーキングが入っているので、この2店がそれぞれアンカーテナントと言えるかもしれない。

相当な数の席が用意されているが、土曜日の13時の時点ではどちらも満員で、空席探しの客が多く簡単には空席を確保できない状況。1時間前の12時にはどちらも空席が目立っていたのに、昼食時になると急に混雑する模様。

 配布印刷物

館内マップ&ショップリストと、ニュースタイムズ風の催事・バーゲン情報の2種類。日本語版はなかった。ショップリストは、店が多すぎるから仕方がないのだが文字のサイズが小さくて、一目見ていやになる。改良の余地あり。しかしキャンプ・スヌーピーのマップは高精細の俯瞰のイラストマップで美しい。美しいが各施設の位置の表示がおおざっぱで、アームバンドを売っている売店(実は管理事務所だった)を探すのに15分もかかった。改良の余地多し。

備考

 空港とのアクセス

ミネアポリス空港からは、MOA行きのバスが出ている。運賃は1ドル。所要時間は10分あまり。便数が多く、また乗車券は2時間半以内なら帰路が無料となる。

 建設の経緯

MOAの敷地は、MLBミネソタツインズとNFLミネソタバイキングの本拠地であったメトロポリタン・スタジアムの跡地。スタジアムがダウンタウンに移転し、その跡地の再開発として計画されたプロジェクトがMOAである。開発コンセプトは「広範囲な顧客サービスと便利性、家族ぐるみで楽しめるように計画されたワンストップ・デスティネーション」。計画当初は、あまりの巨大さゆえ、事業としての成立を危ぶむ声も強かった。

 周年イベント

2002年8月は、オープン10周年記念イベントが開催されていた。内容は、バースデーパレード、先着1,000名樣に無料ケーキ&ペプシサービス、キャラクター・ブレックファースト、テレビ生中継、タレントサイン会、花火大会など。

企画のネタとして

SCも巨大化すれば観光地になるという事例だ。キャンプ・スヌーピーは予想以上の大きさで、半日は楽につぶせる充実度だった。

建物の設計やゾーニングは実にシンプルで、東西南北の4本の通路で四角形を作り、その角に売り場面積2ha台のデパートが計4軒。これだけ規模が大きいと、動線はシンプルにせざるを得ないが、MOAはこの点で基本に忠実なので、常に自分の居場所が分かりやすかった。吹き抜けにあるキャンプ・スヌーピーも、自分の居場所を湿る道標になる。特に観覧車は、「ここが北の中央部分」と強烈に存在感をアピールしていた。

これだけ大きなSCが、ミネアポリスというあまり大きくない都市圏(都市圏の規模としては全米で17番目)に立地して成立していられるのは、まず何よりもミネアポリス空港の存在だ。空港での乗り継ぎは、いつもドンぴしゃとは限らない。方面によっては4〜5時間待たされることもある。空港で過ごすしかないならば、それはかなり苦痛に感じられる時間だ。しかしバス10分のところに大きなSCがあれば、空港に比べてパラダイスだ。いくらでも時間を潰せるし、忘れていた買い物の用を済ますこともできる。どの店が美味しそうかじっくり選んで食事をすることもできる。映画だって見られる。実にありがたい存在だ。

日本人にはあまり馴染みがないが、ミネアポリス空港はノースウェスト航空のハブ空港なので、毎日ものすごい数の便が発着している。ということは、時間つぶしに困っている長時間乗り換え待ち客を、毎日確実にたくさん生産してくれる。これに目を付けて大規模SCを建設するとは、見事な着想だ。

関西国際空港の近くに、チェルシー系列のりんくうプレミアムアウトレットがある。発想はMOAと似ている。しかし関空からりんくう(紀伊半島側)に渡るのに、バスでも電車でも運賃が法外に高い(橋の通行量が高いため)。また、そもそも関空の便数は、国際空港と呼ぶには恥ずかしいレベルだ。客が少なく、さらに移動費用も高いのでは、りんくうプレミアムアウトレットは関空をあてにできない。実際、2年前に視察した際には、りんくうプレミアムアウトレットの客は大半が関西弁だった。どのような経緯でりんくうにアウトレットが作られることになったのか、詳しい経緯は知らないが、MOAと比べると、ひどく貧しい発想であるように感じてしまう。

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