コラム・会員の声

京都アニメーションに寄せて

―たとえ答えが見つからなくとも

今田たま(漫画家・強盗殺人事件被害者遺族)

2019年。令和元年も、まもなく終わろうとしています。

今年も喜ばしいニュースの影で、悲しい悲惨な事件や事故が
たくさんありました。

特筆して心に刺さったのは、京都アニメーション放火殺人事件です。

私事ですが、子供のころから漫画やアニメが大好きで、
今では漫画やイラストに携わる仕事もさせて頂いています。
京都アニメーションの作品もよく見ていました。
都心に現場が無くても、地方からでも、質の高いクリエイティブな
アニメを世の中に発信できる。
そんな『良いものであれば作品はどこからでも世界に送り出す事が
出来るのだ』と言う事を教えてくれた、先駆けのようなスタジオでした。

そこで働いて方たちは、きっとみなさん「より面白い作品を作る」という
夢を持って、毎日を懸命に、真摯に生きていたのだと思います。

それなのに身勝手な1人の手によって無残に踏みにじられた現実を
私たち残された人間は、どう受け止めたらよいのでしょうか。
そう簡単に受け止めきれるものでもありません。

悲しみや憎しみは、吐き出せばきりがありません。
ただ今は、亡くなった多くのクリエイターの皆様の魂に、
心からご冥福をお祈り申しあげます。

皆様の作る作品が、本当に大好きでした。
そして、これから皆様が生み出すはずだった作品を
この世ではもう見る事が出来ない事が、本当に残念です。

この事件を風化することなく、今後もこの悲しみを、怒りを忘れずに、
これまでの京都アニメーションを語り継ぎ、今後の京都アニメーションを
応援していきたいと思っています。
歯がゆいですが、それが私にできる今の精一杯です。

どうすれば、辛い事件はなくなるでしょうか?
悲しむ遺族や苦しむ被害者を、生まない世の中になるでしょうか?

その答えは無いのかもしれません。

2019年 今田たま
漫画家・強盗殺人事件被害者遺族
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