ニュース・活動報告

当会の主張―危険運転致死罪への変更が認められました

 埼玉県熊谷市で2009年(平成21年)9月、書道教室からの帰宅途中だった小関孝徳君がひき逃げされ死亡した事件に対して、ポエナの会として「事件の時効は自動車過失運転致死罪として10年と定められているが、危険運転致死傷罪で起訴されるべき事件であった可能性は否定できない。容疑を切り替え、時効を20年(2029年9月まで)に変更すべきである」と提言・主張をさせていただきました。

 そして先日の9月18日に、このような主張が認められるかたちで、小関孝徳君の事件に危険運転致死傷罪が適用され、時効が20年に変更となり、捜査が継続されることになりました。この決断をされた関係者各位に当会からもお礼を申し上げます。

 危険運転致死傷罪という罪は、2001年(平成13年)の刑法改正で規定されたもので、当初は、危険運転致死傷罪による量刑と、過失運転致死傷罪とされた場合の刑罰に格差があり、問題視されるものでもありました。その後2014年の5月に「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」が成立、翌年に施行され、危険運転致死傷罪の規定がより整備されたものとなりました。

 しかしながらその改正された法律の運用実態を見ますと、危険運転致死傷罪の立証は困難であるとして、検察からは自動車運転過失致死傷罪で起訴され、被害者遺族らが署名を集め訴えることで危険運転致死傷罪への訴因変更が行われた事例もあり、適切な運用がなされていたのか疑問符がつくこともありました。

 危険運転致死傷罪の適用可能性が不透明な事件については、捜査の進展状況や被害者の状況を考慮の上、起訴当初段階から重罰を科すことを排除しないようにすること。そして警察の厳正な捜査を求めるという要望が国会議員の連盟から提出されていたと聞き及んでおります。

 法律の運用というものは、常に見直しと改正が続けられるべきものです。小関孝徳君の事件の、今回の判断も、そうしたものの一つです。異例な判断と受け取られるかもしれませんが、決して不当なものではありません。

 未解決事件の遺族になりますと、誰を恨んでいいのかすらわからない、先の見えない絶望感に苛まれます。犯罪被害者等基本計画の中でも言及されていますが、被害者や家族・遺族にとっては、事件の正当な解決こそがその回復にとって不可欠なものであり、解決に至る過程に関与することは、その精神的被害の回復に資する面があります。

 孝徳君の事件では、母の小関代里子さんが10万件に及ぶナンバープレートの情報を集めているそうです。被害者の家族としての無意識の中での行動だったのかもしれません。池袋駅立教大生殺人事件の被害者遺族であり当会会長の小林邦三郎も懸賞金をかけ情報収集を行った他にも、免許証からの顔写真の照合の試みや、当時一日に300万人以上の利用者があった池袋駅でどうやって意味のある情報を集めるか苦心していました。

 残念ながら池袋駅での事件では、そうして集めた情報を事件の正当な解決につなげることはかないませんでしたが、今ではIT技術が発展し、人では扱いきれないほどの巨大で複雑なビッグデータの処理も可能になってきています。小関孝徳君の事件では、なんとか集めた情報を意味のあるものにしていただきたいと切に願っております。

2019年9月19日掲載


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