ゴム動力ヘリコプターの中立点(08-09-16)

普通の飛行機の縦安定の中立点は主翼の不安定モーメントと水平尾翼の安定モーメントが一致する重心位置です。両モーメントは正確には翼の面積モーメントではなく揚力に基づく力のモーメントです。
ゴム動力ヘリコプターでは上昇時に前方にあるローターまたは安定板を前翼(略称f)、後方にあるローターまたは安定板を後翼(略称r)と呼べば、前翼が重心より前にあれば不安定要素、後翼は重心より後にあれば安定要素です。ゴム動力ヘリコプターでは後翼のモーメントが前翼のモーメントより大きい場合には機体は弧を描いて墜落(ダイブ)する特徴があるため、中立点は飛行試験により比較的簡単の求められます。僅かにダイブの傾向がある重心点を求め、それから僅かに重心を前進させダイブ傾向が消えた時の重心位置が中立点です。
以下、15cmプロペラと4種の安定板の組み合わせで中立点をもとめ、併せてNACA Technical Report: Propellers in yaw, by H. S. Ribnerの結論を検証します。

テストしたヘリコプターのプロペラ(前翼)は直径15cm、側面積は12.63cm^2です。安定板(後翼)は15*13, 15*8. 14*1.8, 10*1.26(単位はcm)の4種です。

ゴム動力ヘリコプターの中立点、中立点周りの面積モーメント

安定板 f-np np-r.ac f mmt r mmt p mmt/r mmt
15*13 11.9 1.2 150.3 224.3 0.67
15*8 10.9 1.8 137.7 216.0 0.64
14*1.8 10.4 4.9 131.4 122.2 1.07
10*1.26 10.1 10.9 126.9 137.3 0.92
単位 cm cm cm^3 cm^3

f: 前翼 r: 後翼 np: 中立点 ac: 空力中心 mmt: 面積モーメント


面積モーメントは力もモーメントの近似値です。中立点周りの前翼と後翼の力のモーメントは定義により同一(方向は逆)ですが、面積モーメントでは両者が一致していません。その原因となりうる要因としては前翼と後翼の迎角の相違、翼特性の相違が考えられますが、迎角の相違については判定する材料がないので不問にして、翼特性について調べてみます。
今回の15cmプロペラは10cm*1.26cmの翼に相当しますから安定板15*13、15*8とはアスペクト比・レイノルズ数ともに大きく異なります。これが両ケースの面積モーメントの相違の原因と思われます。14*1.8、10*1.26の場合はアスペクト比はプロペラと同一、レイノルズ数もほぼまたは全く同一ですから面積モーメントの差が小さい(10%以下)のは当然です。あるいはプロペラの面積モーメントの計算はRibner論文に従っているため、Ribner論文の結論の正確さの検証の一例ともなります。


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