ゴム動力模型飛行機ホームページ プロペラ効率の動的測定

プロペラの効率の動的測定−(1)基本的数式など

傾斜をつけて張った張線に掛けたゴンドラをプロペラにより上昇走行させ、その時に与えた、あるいは計測される各種パラメータを基にしてプロペラの効率を測定する。地上に固定した状態で測定する所謂静的測定に比べて、実際の飛行状態の効率が測定できることが期待できる。

この方法によるプロペラ効率測定はすでに1930年に米国で行われており、その概要が文献1,pp. 82-83に簡潔に紹介されている。傾斜した張線上をゴム動力駆動のゴンドラを上昇走行させ、バルサ製のプロペラによる2000回以上のテストが行われた。ピッチ直径比1.3のプロペラで最高の効率が得られたとしている。

ゴムの放出エネルギー*プロペラ効率=獲得した位置のエネルギー+
                        空気抵抗によるエネルギー損+
                        張線との摩擦抵抗によるエネルギー損・・・(1)
の関係がある。また
ゴムの放出エネルギー=2*pi*プロペラ回転数*平均トルク・・・(2)
プロペラ回転数=出発時巻数−到着時巻数・・・(3)
平均トルク=(出発時トルク+到着時トルク)/2・・・(4)

の関係がある。巻き数は容易に計数でき、トルクも実測できるのでゴムの放出エネルギーの算出は容易である。
抵抗によるエネルギー損=抵抗*走行経路長・・・(5)

の関係があるため走行経路長も知る必要がある。

獲得した位置のエネルギー=ゴンドラ全質量*g*獲得高度差・・・(6)
(gは重力の加速度)

であり、ゴンドラ全質量、獲得高度差ともに容易に計測できる。

プロペラの効率はその進行率=プロペラの前進速度/(毎秒回転数*プロペラ直径)により大きく変化することが知られている。進行率をしるためには上記に加えてゴンドラの走行時間も知る必要がある。一人でテストを行う場合、ストップウォッチ計測は困難であり、テープレコーダ利用が現実的である。

空気抵抗と張線の摩擦の測定にはプロペラを取り外したゴンドラの降下試験を行う。
ゴンドラが降下する場合の関係式は先の米国文献1に与えられている:

W*sin a=W*cos a*C1+V^2*C2=総抵抗 但し、W:ゴンドラ重量(質量*g) a:張線傾斜角 V:ゴンドラ速度 C1:張線ゴンドラ間摩擦抵抗係数 C2:ゴンドラの空気抵抗・・・(8)

C1は張線の材質とゴンドラの張線接触部分の材質により定まる定数、C2はゴンドラの形状により定まる定数である。この式が成立するのはVが定常速度に達した時であり、その位置で計測を行う必要がある。未知数が2個あり1回の測定では定まらないのでWを変えて2回測定を行いC1、C2を確定する。どの程度の降下で定常速度に達するかの把握も必要であり、一案としては趣味際人氏提案のディジタルカメラの連続撮影による確認も考えられる。

ゴンドラの空気抵抗が無視できる場合は文献2、39-40頁より
C1=tan a-2*s/(g*t^2*cos a) 但し、C1:張線ゴンドラ間摩擦抵抗係数 a:張線傾斜角 s:ゴンドラ走行距離 t:ゴンドラ走行時間 g:重力の加速度・・・(8)

でC1を決定できる。sを変えた測定によりC2の影響の評価も可能かもしれない。その結果によっては空気抵抗を無視して(8)を採用するのが現実的かも知れない。

前進速度も毎秒回転数も1回のテスト中に実際は変化するがこれらは平均値を採用する。それらによる誤差も避けられないが、異なるプロペラ間の性能比較には十分に有効なことが期待できる。

この方法がうまくいけば模型飛行機の色々の抵抗を降下試験で行うのも興味深い。例えば、直径の異なるプロペラ、空転プロペラと静止プロペラの比較、ピント張った動力ゴムとだらりと垂れた動力ゴム、主翼のパイロンなどなど。

参考文献

1.R. J. Hoffman, Model Aeronautics made Painless, Model Aeronautic Publications, 1955, pp 82-83
2.曽田範宗、摩擦の話、岩波新書1971年、39-40頁