ロイヤルハワイアン滞在記
(2000年8月)
7.全体的な印象
ハワイの集客力についての考察
さすがに5回目ともなると、緊張感がない。以前はホノルル空港に着陸すると、「さあ、ここからは外国だ、置き引きやスリに遭わないように気を付けよう」と少しは気が張りつめたものだった。しかし今回は、ロサンゼルスからの国内線ということで出国手続きもなかったため、精神は弛みきっていて、「あー、やれやれやっと着いた。さてこの時間だと、ホテルに着くのは何時頃になるから、あーしてこーして、夕飯は何を食べようかな」などと考えている。
タクシーでホテルに向かう風景もいつも通りで、タクシーの運転手がちゃんと最短距離を走っているかどうか、もはや地図を見なくても分かる。そのため、タクシーに乗っていても、緊張感がない。「まあいつも通りだと、メーターの料金で22ドルくらいだろうから、25ドル渡せばいいかな。しかし街並みは、あまりかわらないなあ。あ、あのお姉さん、かっこいい。やっぱり白人は足が長くて、ハワイの街に似合うなあ」などと考えている。
チェックインも、余裕である。以前はベルボーイが持っていった自分の荷物がどこに行くのか気になって、フロントで名前を書きながらキョロキョロしたものだが、任せっぱなしにしても大丈夫なことを知っている今は、どこに行こうと全然気にならない。予約内容が間違って伝わっていたことがないので、予約条件の再確認の際も肩の力が抜けている(一応は聞いて、「シュアー」と言うけど)。妻子も慣れたもので、タクシーを降りてレイをかけてもらったら、フロント前のソファに一直線で、斜めになって伸びをしていたりする。
部屋に案内される時も、「このボーイは前回もいたかな」などと思いながら顔をじっくり観察している。案内係やポーターへのチップも、阿吽の呼吸が分かってきたので、タイミング良くすっと渡せるようになった。
「女房と畳は、新しいほどいい」という諺がある。「旅先は、いつも変えて、新鮮な体験をしたい」という流儀の人もいる。この考え方は、農耕民族系の発想だと思う。いつも同じ場所で農業をしていると、たまの休暇は、見知らぬ土地へ行き、あれやこれやを見て回りたい、つまり狩猟民族型の余暇を過ごしたいと思う人が多くなるのは、自然なことだ。
逆に、定住地を持たず、獲物を追って移動しながら暮らしている狩猟民族系の場合は、たまの休暇は、心が安まる土地に行き、じっくり静養して心と身体をリフレッシュしたい、つまり農耕民族型の余暇を過ごしたいと考える人が多くなるだろう。
私もカミさんも、仕事は不安定な自営業。稼ぎは毎月ダイナミックに変動する。仕事がないと、無収入になる月もある。「一定の収入が約束されていない」ということは、どちらかというと狩猟民族型の仕事と言える。そのためか、農耕民族型の余暇が好きだ。ハワイは、あれやこれや見るものがたくさんあるから好きなのではなく、極楽気分でプールサイドで昼寝ができるから行くのである。緊張感はいらない。新鮮さがなくてもいい。いつもと同じような、快適な環境さえあればいい。「お宅は飽きもせず、いつも同じところに出かけているね」と言われることがあるが、快適な環境は、決して飽きることがない。そもそも、環境の良さというものは、飽きる飽きないと言う次元のものではない。
このように考えると、環境の良い快適な観光地は、それを素晴らしいと感じる人(主として農耕民族型余暇を求める人)に対しては、強力な魅力を発揮でき、なおかつその魅力は陳腐化しにくい。その結果、たくさんのリピーターを獲得できることになる。そして、リピーターの方から見ると、何度も訪れるうちに慣れて緊張感がなくなるので、行けば行くほど深くリラックスできるようになり、本人にとってよりよい環境となるため、その地の魅力はさらに強くなる。
5回訪れても、ハワイの集客力には、死角が見つからない。

ガイドブックの必要性について
5回目(ロイヤルハワイアンは4回目)ともなると、ガイドブックを買わなくなる。93年の初回は、5冊くらいガイドブックを買い込んだ。その後は、行くたびに最新版のるるぶ情報版だけ買って、その他のガイドブックは立ち読みで済ませた。今回は、るるぶ情報版でさえ、ほとんど目新しい記事がないので、買わなかった。
そのかわり、現地で配布されているフリーペーパーは、毎回プールサイドで丹念に読んでいる。こちらも情報にあまり変わりばえがしないが、割引クーポン券が付いていたり、今月のイベントが紹介されていたりするので、ガイドブックよりもはるかに楽しい。今回は英語版でもイベント紹介のページを探した。ステートフェアのような大型のイベントは見つからなかったが、なかなか味わい深い灯籠流しの情報を発見できて、役に立った。
ハワイに行く観光客の中で、リピーターの割合が増えれば増えるほど、日本で発行されているハワイのガイドブックの売上は落ちていくだろう。さらに、ガイドブックはいいことしか書いていないが、ニフティサーブのハワイのフォーラムやハワイ旅行記のホームページには、いいことも悪いことも正直に、そして旅行者の視点で指摘されている。この情報の信頼性の点でも、日本で発行されているハワイのガイドブックの将来は暗いと思う。
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