ロイヤルハワイアン滞在記

(1994年12月)


8.全体的な印象

 ハワイの気候についての考察

1994年12月の雨期と1993年7月の乾期を比べると、やはり気候は大きく違った。結論から言うと「プールに常駐するようなリゾートスタイルの人には、雨期と乾期では大違い、絶対に乾期に限る」。

今回は、これまで集めた旅行記などの情報によると、12月としてはそれほど悪くない、安定した気候であった。プールサイド・カフェのARTも「12月はだいたいこんな天気だ、気温がもっと下がることもある」と言っていた。しかし前回と比較すると、やはり雲が多く、直射日光が照りつける時間が少なく(前回は日中の90%以上が直射日光、今回は日中の40%くらいが直射日光)、また風が強く(前回はソヨソヨ、今回はヒューヒュー)、さらに雨が多い(1回当たり10分以内だが1日数回はパラパラと雨まで降る、前回は7泊で1回だけ)という天気だった。前回の超快適気候でのプール暮らしを経験してしまった私にとっては、この天気では、プールで1日過ごすには寒すぎて、とても快適な気候とは言えなかった。

やや強い風が吹いているので、直射日光が当たっている時は適度な暑さだが、日が陰ると急に寒くなり、タオルにくるまりたくなる。こぶりな雲がダイヤモンドヘッドから次々と流れ出て来るので、この寒暖の急変化が、1時間に5回とか10回ある。こんな気候では、とてもプールサイドで熟睡はできない。プールの水が冷たかったのも、プールサイドのテーブル席に空きが多かったのも、このような天気で気温が低かったためと思われる。

ただし、雨期の気候にもメリットはある。まず、表で長い時間遊び続けてもあまり日焼けしないという点。前回は日中は砂遊びはできないくらい日差しが強烈だったが、今回は寒暖の繰り返しなので、真っ昼間から砂遊びに専念できた。プールサイドでも、なるべく日なだいるようにしたが、わが家は今回は誰も皮がむけなかった。また、プールサイド常駐型ではなく外出がメインの観光客にとっては、乾期よりも過ごしやすい涼しい気候だったと思う。

プールに常駐するようなリゾートスタイルの日本人は、プールが素晴らしいロイヤルハワイアンであっても、めったにいない(と、プールサイド・カフェのARTが言っていた)。大多数の日本人にとっては、ハワイの乾期と雨期の気象条件の違いは、あまり気にならないのだ。そのため、「ハワイは雨期でも気にならない」と書いているガイドブックは、わが家にとっては大うそつきだが、大多数の日本人に対してはウソではない、ということになる。しかし、ごく少数かもしれないが、わが家のような過ごし方をする人のことも配慮して、「プールサイドで1日のんびりするには雨期は不向き、乾期にすべき」くらい書いてくれてもいいと思う。

 モアナ・サーフライダーとロイヤルハワイアンの比較

泊まりたかったモアナ・サーフライダーは、前回よりもホテルのグレードがダウンしているように思えた。まず、プールの注意書き。ゲストオンリー、席を1時間以上放置すると空席とみなす、という2点はロイヤルハワイアンも同じだが、タオルを借りるにはルームキーを見せろ、返却しないと罰金を取る、なんてことはロイヤルハワイアンでは書いてない。モアナ・サーフライダーのプールは、客層が悪くなったのかもしれない。また、客室内にあった「シェラトン・ラグジュアリー・コレクション」という写真集に、ロイヤルハワイアンやハナマウイは載っていたが、モアナ・サーフライダーは載っていなかった。

人が少なく落ち着いたロイヤルハワイアンに比べて、モアナ・サーフライダーは来訪者が多いため、パブリックスペースがいつもにぎわっている。そしてモアナ・サーフライダーのプールはパブリックスペースの一角にあるため、裏庭的な場所にあるロイヤルハワイアンのプールと比べて、空間としての独立性が低い。そのため、ロイヤルハワイアンのプールに非宿泊客が入り込むには勇気がいるが、モアナ・サーフライダーのプールなら、その気になればもぐり込めそうだ。あのような注意書きは、そのためかもしれない。

似たように思われるロイヤルハワイアンとモアナ・サーフライダーだが、じっくり比較すると、プールは全然違う。プールでのーんびりするなら、広くて人口密度が低く閉鎖的でよそ者が入ってこないロイヤルハワイアンの方が、はるかに落ち着ける。

 今回気が付いたロイヤルハワイアンの長所と短所

ただし、ロイヤルハワイアンについても、2回目の今回は、不満点が増えた。まずは隣のアウトリガー・ワイキキのバンドのサウンドがうるさいこと。金、土、日の16時から、ロック系のライブがはじまる。ロックは嫌いではないのだが、プールサイドでぼーっとしているときにドンチャカやられては、ゲンナリして部屋に戻りたくなってしまう。今回はたまたま到着した日から3日連続でライブの日だったので、特にうるさく感じた。

また、夕方プライベートビーチのスペースに行くと、歩くのをためらうくらいタバコの吸いがらが散乱している。パブリックビーチの方が、吸いがらが少ない。これは宿泊客のマナーの問題。プールサイドの係員に言えば灰皿を貸してくれるので、良識ある人はビーチに灰皿を持って出る、そうしない人がかなり多いようだ。深夜になると、ビーチにはバギーの清掃車が出てきて、砂をふるいにかける方法でゴミ収集をしていたが、プライベートビーチの部分を特に丁寧に掃除していたのは、念を入れてではなくて、単にゴミが多いからだと思う。

さらに、日本人の中高年ツアー(中京地区のとある市の遊戯業組合)を受け入れていて、プールの入口脇の新館のホールにツアーデスクが特設され、せっかくの落ち着いた雰囲気をだいぶ壊していたことも気にくわない。ゴルフ班、観光班のスケジュール表が貼り出されていて、それがまたすごいハードスケジュールで、見るたびに気分がゲンナリした。見なければいいのだけど、毎日貼り変わるから、つい見てしまった。しかし、チェックイン寸前の係員の説明を盗み聞きしたら、「このホテルは一流ホテルですから、一流のマナーが要求されます、なんだらかんだら・・・・・」と一生懸命マナーについて説明していて、ツアコンはツアコンなりに苦労があるのだと思った。

新館も部屋の設備が少々くたびれてきた点がある。冷蔵庫の温度調整つまみが破損していて、設定を変えるのに苦労した(最弱でないと牛乳が凍る)。また部屋の入口のカーペットを留めるピンが少し浮いていて、室内で裸足でいるわが家には危険だったので、ハウスキーパーにトンカチで10カ所くらい打ち付けてもらった。しかし、翌日には3カ所がまた浮いてきた。そこで、室内履のスリッパをピンの上に置いて、踏んづけて通ることにした。

逆に、今回新たに気に入った点もある。レンタカーの手配でコンシェルジュに、そして潜水艦ツアーの質問でツアーデスクに相談に行ったが、どちらもじっくりと親切に応対してくれて、好感が持てた。私のブロークンイングリッシュに合わせて、言葉を選んで、ゆっくりと分かりやすく教えてくれたので、ちゃんと意思の疎通が図れた。ホテルライフの上級者はコンシェルジュを使いこなすと聞くが、あのような応対なら、気軽にコンシェルジュに相談できると思う。ロイヤルハワイアンのコンシェルジュやツアーデスクは、扉の奥にあり、広くて立派な部屋になっていて、一見入りにくい雰囲気だからであろう、「日本人のお客さんはほとんど相談に来ない」とスタッフが言っていた。

また、12月の上旬なので、ホテル内のあちこちにクリスマスツリーやクリスマスリースが飾られていて、特に玄関や廊下にはたくさんの電飾が付いた大きなクリスマスツリーがあって、見事な美しさだった。ホテルとしてのやる気、気合いを感じた。

前回届いた「ウェルカム・カクテル小パーティー」の招待状は、今回は届かなかった。2回目の訪問だったからか、アーリーチェックインではなかったからか、閑散期だったからか、35%offだったからか、それても曜日が決まっているためなのか、理由は分からない。チェックインの際も案内係がいなかったし、今回はなんだか「勝手にやってちょーだい」という感じがした。わが家は、かえってその方が気が楽でいいと思ったのでその点を不満には感じなかったが、初めて来た人だと、どこかの大型高層ホテルのような面倒見の悪さを感じると思う。たぶん、おそらく初めての人に対しては、きちんと応対するのであろう。

 シェラトン系ホテルの割引キャンペーンについての考察

帰国後、シェラトンクラブの会員誌が届いた。1995年は2月から6月まで、ハワイのシェラトン系ホテルの35%引きが設定されている。1994年は9月からクリスマス休暇前まで35%引きだったので、「7月・8月・クリスマス休暇・1月以外の時期は35%引き」という状況になっている。実質的な大幅値下げだ。

ハワイのホテルは、稼動率で苦しんでいるのだろうか。それともシェラトングループとしての何か大きな戦略があるのだろうか。日本からのツアー客の数は、円高もあって好調と聞く。ロイヤルハワイアンをはじめとするハワイのシェラトンのホテルは、ルームチャージは基本的に1年間同額で、日本の観光地の旅館やオーランドのウォルト・ディズニー・ワールド近辺のような「ピークシーズン割り増し」は設定していない。これを改め、時期によるルームチャージの違いを明確に打ち出して、収益性を高めていこうという考えなのかもしれない。

 リピーターにとってのハワイの魅力についての考察

1年半前と同じホテルということで、勝手が分かっている分、緊張することは少なかった。そのため、前回よりもより深くリラックスできた。これは、本来の意味でのリゾート(休息)を求める場合、とても大切なことだと思う。

ハワイがリピーターを集めている理由は、まず第一に、短時間ではとうてい味わいつくせない集積度であろう。観光地やレストラン、ショップという、遊ぶ・食べる・買うの基本3要素がいずれも膨大にストックされている。この点で、ハワイはTDLと似ている(TDLではややレストランが弱点となっているが)。

そして日本人にはまだ少ないようだが、リゾート志向の旅行者にとっては、ハワイの快適な気候は、他ではなかなか手に入らない素晴らしいメリットだ。これがリピーターを集めている第二の理由と思われる。ロイヤルハワイアンはリピーターの割合が高いとのこと(プールサイド・カフェのARTによる)だが、ロイヤルハワイアンのリピーターは、おそらくその大半がリゾート志向型であろう。外出ばかりでホテル内にいる時間が短い名所旧跡観光スポット巡り型(日本人の大半はこの型と思われる)にとっては、ロイヤルハワイアンは値段の高い、その割に施設が古い小さなホテルだ。しかしリゾート志向型にとっては、素晴らしく快適なプールやプライベートビーチ、そして高質な人的サービスが提供されるロイヤルハワイアンは、特に気候が快適な乾期ならば何度でも訪れたいホテルになるはずだ。

このようにハワイは、懐が深い(多種多様な過ごし方に対応できている)ため、リピーターに対しても、多面的に集客力を発揮している。このような層の厚い集客力を持った観光地は、日本には見つからない。世界の観光地の中でも、まれな存在なのかもしれない。

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