日本の少子化防止プラン
(PART U)

提案日:2005年6月28日
更新日:2005年8月27日


これまでの経緯

 これまで指摘されてきた少子化の原因

少子化の原因は一般的に未婚化、晩婚化、晩産化だと言われている。たしかに1980年以降、未婚率や平均初婚年齢、出産時平均年齢は上昇している。

未婚化や晩婚化、晩産化の背景には、仕事と育児を両立できる環境整備の遅れ、核家族化による育児の負担感の増大、高学歴化による教育費負担の増大、女性の就業率上昇による結婚・出産の機会費用の増大、結婚・出産を軽視する価値観の広まり、雇用情勢の悪化によるニート・フリーター等の経済的に不安定な若者の増加、などなどが指摘されている。

 これまで講じられてきた少子化対策

少子化対策の考え方としては、少子化を食い止めようとする「阻止論」と、少子化を受け入れその上で対応していこうとする「対応論」がある。

たとえば内閣府は、「対応論」として「人口減少化に関する研究会」を催し、女性・高齢者の就職率の上昇、生産性の上昇などによって少子化のマイナス面を補うことが可能であるという試算をしている。しかし対応論は消極的対策論であり、それよりも積極的対策を急げという声が強い。

現在の日本政府は主に「社会の整備による阻止」を行おうとする姿勢をとっている。政府・財界では、高齢者の増加による社会保障費の増大や、労働人口の減少により社会の活力が低下することへの懸念などから抜本的な対策を講じるべきだとの論議が盛んとなった。そこで政府は1995年度から本格的な少子化対策に着手し、育児休業制度の整備、病気の子どもの看護休暇制度の普及促進、保育所の充実などの子育て支援や、乳幼児や妊婦への保健サービスの強化を進めてきた。 しかし、これら政府の対策では十分な効果が上がらず、2003年の調べによれば、2002年の合計特殊出生率が1.32から1.29へさらに低下し、第二次世界大戦後初めて1.2台に落ち込んだ。社会保障制度の設計や将来の経済活動などの影響、年金制度改革について政府・与党が公約した「現役世代に対する給付水準50%の維持」も、前提とした数値1.39が揺らぐ(少子化による高齢化社会)懸念が一層強まり、「1.29」は社会にショックを与えた。

「女性の多くは、本音では子どもを産みたいと望みながら、社会的・経済的に子どもを産みにくい状況に置かれている」という指摘もある。2003年のある調査では、夫婦の理想とする子ども数は平均2.5人でありながら、実際の子どもの数は1.33人にとどまっている。このため、公共保育施設の増設や産休、育休時の給与補助、男性の出産・子育てに対する意識改革の促進などを始め、抜本的対策を国に求める声は、政財官界を中心に根強いものがある。

最近では2003年7月23日、超党派の国会議員による議員立法「少子化社会対策基本法」が参議院本会議で可決・成立し、9月に施行されている。衆議院での審議過程で女性議員から「結婚など個人的な領域に踏み込み、女性の自己決定権の考えに逆行する」との批判があったが、与党と民主党が前文に「結婚や出産は個人の決定に基づく」の一文を盛り込むことで合意して修正された。基本法は少子化社会に対応する基本理念や国、地方公共団体の責務を明確にした上で、安心して子どもを生み、育てることのできる環境を整えるとしている。

その後、「子ども・子育て応援プラン」(仮称:新新エンゼルプラン)が、2004年12月24日の少子化社会対策会議で決定され、2005年度から開始された。保育事業中心から若者の自立・教育、働き方の見直し等を含めた幅広いプランとなり、子育て中に長時間労働する親を現在の半分に減らすことや、育児休業を取る人の割合を父親は10%・母親は80%とする数値目標が設定され、同プランの最終年度に当たる2009年度までの達成を目指している。

 参考記事

04年の出生率1.29に 少子化傾向続く
2005.06.01 アサヒ・コム

日本人女性1人が産む子どもの平均数を示す04年の「合計特殊出生率」は1.29で、過去最低を記録した前年並みの水準だったことがわかった。近く厚生労働省が確定値を発表する。経済の縮小や、年金など社会保障制度の財政悪化にもつながる少子化の傾向は続いており、政府はさらなる対策を迫られることになりそうだ。

04年の出生率は1.28台の後半。03年は1.2905だったため、小数点第3位まで含めると過去最低で、低下傾向に歯止めはかかっていない。

出生率は75年に1.91を記録して以降、長期的に人口を維持できる2.07を常に下回っている。04年生まれの赤ちゃんは約111万人と過去最少だったこともあり、出生率の集計結果が注目されていた。

日本の人口は06年をピークに、07年から減少に転じると予想される。国立社会保障・人口問題研究所が02年1月に公表した推計人口によると、合計特殊出生率は中位推計の場合、04年が1.32で、07年に1.30程度で底を打つとされていた。低位推計だと04年は1.25でその後も1.10まで下がり続ける。今回の1.29はその間の値だ。

昨年成立した年金改革関連法は、夫婦2人のモデル世帯での給付水準(受け取り開始時点)で「現役世代の手取り年収の50%」を維持するとした。それも出生率が07年を境に持ち直し、50年にかけて1.39に回復するという中位推計が前提だが、現実はこの想定を下回っている。少子化の進行によっては、改革法に盛られた給付の抑制策をより長期間続けるなどの対応が必要になる。

出生率の低下は、未婚化・晩婚化が進み、もともと数が少ない現在の20代が子どもを産まなくなっているのが大きな要因。71〜74年生まれの団塊ジュニアが30代前半の出産適齢期にある今後5年間は、「出生率回復にとって重要な時期」(内閣府の少子化社会白書)と位置づけられている。

政府は95年度から本格的な少子化対策に着手。だが、出生率は下げ止まらず、昨年末にとりまとめた「子ども・子育て応援プラン」では、施策の範囲を拡大し、若者の雇用安定化についても数値目標を掲げた。今年4月には「次世代育成支援対策推進法」も全面施行され、企業や自治体に残業削減などの行動計画の策定が義務づけられた。

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