JR中央線の飛び込み事故防止プラン
(PART V)

提案日:2005年5月17日
更新日:2005年5月20日


基本的考え方

 中央線の飛び込み事故多発の真の原因

前ページの新聞記事で指摘されている原因(未高架区間の存在、密着度の高さ)は、どちらも核心をついているとは思えない。

まず、「三鷹以西が高架化されていないため線路内に入りやすい」という点。確かに三鷹以西においては、踏切での飛び込み事故が多いが、駅のホームから飛び込む人もいる。また、三鷹以東の高架区間でも、駅のホームから飛び込む人が少なくないのが現状だ。三鷹〜立川間の連続高架の工事が進められているが、それが完成しても飛び込み事故の件数が減少することは期待できない(踏切はなくなるので踏切での飛び込み事故は減るが、その分駅のホームからの飛び込み事故が増えるはず)。

次に、「住宅街を通っているので沿線住民との密着度が高い」という点。東京の鉄道路線で、住宅地を通らない路線は少ない。都会を一周しているので沿線の夜間人口が少ない山の手線を除くと、よほど田舎の方に行かない限り、東京では線路のまわりはほとんど住宅地だ。「住民との密着度が高い」というのは、中央線に限ったことではない。

それ以前に、「密着度の高さ=飛び込みやすさ」と言えるのかどうかも疑問だ。確かに良く知っている路線ならば失敗せず確実に死ねるというメリットがあるが、逆にその路線は愛着があるので飛び込むときはそれ以外の路線に行こうと考える人もいるだろう。

以上のような考察を踏まえ、中央線沿線住民歴46年(生まれてから今までずっと武蔵野市に在住)の私としては、中央線で飛び込み事故が多い本当の理由は以下のように考える。
  1. 電車の色−−−中央線のオレンジ色は血の色に似ている。そのため、飛び込んで電車を血まみれにしても汚れが目立ちにくいようなイメージがある。日本人には「立つ鳥跡を濁さず」という思想があるので、その「できることならあまり汚したくない」という意識から、飛び込み先として中央線が選ばれる傾向が強いのではないだろうか。
  2. 特別快速の存在−−−特別快速は、猛スピードで通過駅を通り過ぎていく。中央線沿線住民なら、だれでもその衝撃的な風圧を感じたことがあるはずだ。「あれだけスピードが出ていれば、そう簡単には止まれないので、確実に死ねそうだ」と自殺志望者が中央線を選んでも不思議ではない。また、中央線の特別快速は列車の先頭部分に「特別快速」と大きく表示されているので、遠くからでも見分けがつく。この点でも、「なるべく確実に死にたい」という自殺志望者のニーズに合致している。
  3. 特急電車をはじめとする長距離列車の存在−−−中央線においては、通勤・通学電車と同じレールの上を、長距離(甲府行き、松本行きなど)の特急や急行、普通列車が走っている。東京近郊区間においては比較的珍しいパターンである。これらの列車の停車駅は少なく、下り線では新宿駅の次は三鷹駅(一部の特急電車は三鷹駅も通過し立川駅や八王子駅まで止まらない)となっており、大多数の中央線の駅をスピードを落とさず通過していく。また、電車の形状が異なるので、遠くからでも見分けがつく。特に新型の特急車両は斬新なデザインであるため、ヘッドライトの位置を見ただけで特急電車であることが分かる。
  4. 特別快速と長距離列車の連チャン走行−−−中央線は過密ダイヤとなっている。そのため、時間帯によっては、多数の駅を通過する特別快速と長距離列車(特急など)は、2編成が続けて走行していることが多い。途中の駅で効率的に低位列車を追い越すためだ。自殺志望者から見ると、この状況は、1編成目で飛び込む決心がつかなくても、まだ気持ちが熱いうちに数分後にまたチャンスがやってくるということだ。

 解決の方向性

中央線における飛び込み事故を防止するためには、根本的には、自殺志望者が少なくなるような社会づくりが必要不可欠である。しかし最近の日本の政治家を見ている限り、近い将来そのような社会が実現するとは思えない。そのため、次善の策として対処療法的な対策が求められることになる。

殺人事件の裁判においては、犯人の計画性の有無が量刑に大きく影響する。同様に自殺志望者も、その決意の固さから、非計画的自殺志望者と計画的自殺志望者に分けられるであろう。具体案の立案に当たっては、この2種のターゲットの特性を考慮した上で、そのいずれかあるいは双方に対して効き目のあるプランを考えていきたい。
  1. 非計画的自殺志望者向け対策−−−疾走する中央線の電車を見て、ついふらっと自殺したくなって飛び込むような者に対しては、中央線がこれまで以上に自殺しにくい存在となれば、自殺そのものを減少させることができるはずだ。
  2. 計画的自殺志望者向け対策−−−自殺することをしっかり決意している者に対しては、自殺をやめるよう働きかけることが根本的な解決になるが、それは容易ではない。次善の策として、中央線を含む鉄道への飛び込み自殺以外の方法を採用するように働きかけるべきである。

次の項目 −−− JR中央線の飛び込み事故防止プラン(PART W)

JR中央線の飛び込み事故防止プラン メニューページ

トップページ