カリフォルニア州中部ステートフェア(CMSF)

視察日:2000年8月5日(土)


イベントの概要

場所−−−カリフォルニア州パソ・ローブルス(ロス中心部の北北西約450km)のフェアグランド(イベント用空き地)
面積−−−不明、かなり広い
開始時期−不明、かなり昔からやっているはず
営業時間−標準的に正午−24時、初日は16時から、最終日は22時まで
入場料−−大人6ドル、ユース(12−16歳)5ドル、子供2ドル

イベントの特徴

ステートフェアは基本的に農林畜産業の振興のためのイベントで、農業王国のアメリカでは各州(ステート)及び各郡(カウンティ)で開催されている。郡単位で開催されているものは正確にはカウンティフェアと呼ぶが、狭義のステートフェアとカウンティフェアを総称して、広義のステートフェアと呼ぶこともある。州としてのステートフェアは、カウンティフェアよりも一般的に規模が大きい。ただしハワイのステートフェアは、ハワイ州が他州に比べて農林畜産業が盛んでない(州としては観光を主たる収入源にしている)ためか、1998年に視察したところ、1991年のオレンジカウンティ・ファーマーズフェア(地元ではカウンティフェアと呼ばれている)と同程度の規模であった。

内容は、農林畜産に関するコンテスト(家畜の品評会、巨大野菜コンテスト、農家の娘コンテストなど)が本来の中心であるが、地域の企業の見本市や地域の学校の作品展などが付加され、展示だけでもかなりのボリュームとなっている。これに、農林畜産に関する公開型コンテストやイベントステージなどの催事、各種飲食、各種物販、さらには移動遊園地までが加わり、全体としてはごった煮状態の大型イベントとなっている。

ごった煮状態の大型イベントという点で、ステートフェアは博覧会の原型と言える。ステートフェアの形式で、展示のテーマを農林畜産業から工業とか産業とかに変更すれは、博覧会になる。世界初の万国博覧会は19世紀のロンドンで開催されたが、その原型になったのは、当時のイギリスかアメリカで開催されていたステートフェアまたはそれに近いイベントであろう。最近の日本の博覧会は、万国博も地方博もみな同じようにプレイランドと称して移動遊園地を設置しているが、これはステートフェアの形式がいまだに守られていることを意味している。

なお、カリフォルニア州としてのステートフェアは、北部・中部・南部の3エリアでそれぞれ別々に開催されている。

駐車場

パソ・ローブルスのフェアグランドは、市街地の中にある。1991年に視察したオレンジ郡のファーマーズフェアの会場は、誰も人が住んでいない荒野のまっただ中にあったため、駐車場は会場の周辺に無限に確保できるような状況だった(駐車場は当然無料)が、この会場は周辺を住宅地で囲まれている。そのため、大型イベントの場合は慢性的に駐車場が不足するようだ。

視察日は閉幕を翌日に控えた土曜日で、比較的混雑する日だったため、19時に現地に到着したが、公的な駐車場(4ドル)は満車だった。周辺に点在する民間駐車場は、ゲートまでの距離に応じて6ドル〜10ドル。空き地や広い敷地を持った住宅の庭の一角が民間駐車場となっていた。

ゾーニング

特に意識的にゾーニングはされていない。内容と敷地形状からは、
 @メイン会場(展示・飲食・物販)
 Aグランドスタンド(催事)
 Bカーニバル(移動遊園地&各種ゲーム)
の3ゾーン。

催事(ロデオショー)

 催事会場

19時10分に会場に到着したら、すでにロデオショーが始まっている時間だったので、催事会場のグランドスタンドに直行した。グランドスタンドでの催事はすべて有料で、12日間の会期中10日間は毎晩タレントのコンサート(25ドル程度)、最終日前日の土曜がロデオショー(10ドル)、最終日の日曜はモンスタートラックレース(10ドル)となっていた。

グランドスタンドには19時半に到着。かなり広い馬場をスタンドが取り囲んだ構造で、陸上競技場に近い。座席は全席指定だが、ソールドアウトにはなっておらず、バックスタンドの上段には空席も多かった。座った席は正面スタンドのほぼ中央のブロックの中段で、なかなかいい場所だった。客層はほとんどが白人。カウボーイハットをかぶったり、ブーツを履いた人もたくさんいて、西部開拓時代という言葉を思い出す。

 カーフ・ローピング

ちょうど第1種目のカーフ・ローピングがはじまったところだった。子牛が放たれ、同時にカウボーイがロープを回しながらダッシュ、走る子牛の首にロープをかけ、馬から飛び降りて素手で牛を押さえ込み、ロープで4本の足をぐるぐる巻きに縛り上げる。作業完了までのタイムを競う。

うまいカウボーイは、首にロープをかけるまで3秒、その後縛り上げるのに5秒という早業で、観客席から「オーッ」という歓声が上がる。下手なカウボーイはそもそも首を狙ったロープが外れて、その時点で失格。コミカルなカウボーイは、うまく首にロープをかけるも、暴れる子牛を抑えきれずなかなか縛り上げられず、そのうち子牛が逃げ出したりして、観客席は大笑い。なかなか楽しい種目だった。

 ベアバック・ライディング

暴れる裸馬に乗るロデオ。馬の背中に自分の背中をくっつけるようにして乗る。首にはむち打ち症のときにつけるような装具を着用していた。観客は盛り上がっていた。

 クラウン・アクト

カウボーイのスタイルをしたピエロのパフォーマンス。会場が広いので、たった1人の演技ではなかなか受けるのは難しいはずだが、たくさんの拍手を集めていた。

 サドル・ブロンコ・ライディング

鞍つきの荒馬乗り。一般にイメージされるロデオ。ブロンコとは、北米西部産の小型半野生馬。観客はこの手が好きらしく、盛り上がっていた。

 ウイメンズ・バレルレース

カウガールの樽まわり競争。馬のダッシュ力だけでなく、樽の場所で失速させずしかし大回りさせず最速で180度ターンするという乗り手の操縦力が問われる。

金髪とか黒髪とか、とにかく長い髪の毛の細い若い女性が多く、それを束ねてカウボーイハット、ウェスタン丸出しのシャツで、スタートする前からかっこいい。スタートすると、ばしばし馬に鞭をくれながらダッシュ、樽まわりでは身体を内側にやや落として膝だけで身体を保持しながら必死の手綱さばき、馬も内側に転ぶのではないかと思うくらい傾きながらコーナーをクリアしていく。女性のエキジビジョン競技かと思っていたら、馬もライダーも完全に本気のガチンコ勝負。なぜか観客の盛り上がりはいまいちだったが、私は見入ってしまった。

 ミス・ロデオ大会(正式名称は不明)

各種目の優勝者は、ミス・ロデオ大会とともに2頭で、またはミス・ロデオ大会と2人で1頭の馬に乗って、グランドスタンドの観客席に手を振りながらウイニングランをする。このミス・ロデオ大会もかっこよかった。見とれてしまった。

 チーム・ローピング

3人1組の種目。30頭の牛の群(0〜9の番号のゼッケンが付けられている)の中から、指定された番号の牛(3頭)だけを群れから切り離し、囲いの中に追い込む。

うまいチームはすんなり狙った牛を孤立させることに成功し、そうすればあとは追い込むだけだが、下手なチームはなかなか群れの中から狙った牛が出てこない。また、せっかく孤立させても、牛は群れの中に戻りたいらしく、囲いの脇を通り過ぎて元の場所に戻ってしまうやつもいる。チームワークが問われる競技だった。

 ブル・ライディング

最終種目は、暴れる雄牛に乗るロデオ。観客席は大いに盛り上がった。馬ではなく牛に乗る種目がメインイベントとは意外な気がしたが、見て分かった。暴れ馬よりも暴れ牛の方が危険だ。振り落とされた場合のカウボーイの逃げ方も、馬と牛では違う。馬の場合は落ちた人間に向かってくることはまれなので、落ちたらまず馬を見て、角度的に安全と分かったらゆっくり遠ざかる。しかし牛の場合は、たいてい、落ちた人間に角を向けて突進してくる。そのため、落ちたら必死で逃げる。逃げるが逃げ切れずに角で引っかけられたカウボーイもいた。ケガしたと思う。

終わったら22時。19時開始で暗くなったのは20時半頃なので、3時間のうち前半は夕方、後半は夜、という感じだった。

展示

2000年のハワイのステートフェアでは、農林畜産業関係の展示がおもしろくて引っかかってしまい、企業の見本位置的な展示をゆっくり見学できなかった。そこで今回は、農林畜産業関係の展示をパスして、企業の見本市的な展示を巡ってみた。

出展している企業は大企業からローカル企業までさまざまで、PRやイメージアップに徹しているおしゃれな展示もあれば、展示即売会のブースもあった。並んでいる商品は全体的にアメリカくさいものばかりで、家庭用ジャグジー(庭に埋めるタイプ)がドカンドカンと並んでいるブースや、家庭用雑貨(テレビ通信販売に出てきそうなアイデア商品や新機能商品)のブースは、けっこう人がたかっていた。

カーニバル

 カーニバル会場

マップで見るとそれほど広くは見えないが、実際はかなり広かった。標準的な日本の地方博のプレイランド・ゾーンの2倍か3倍の面積。ライド、ゲーム、飲食売店のいずれもめいっぱいの電飾をまとっているので、会場としての基本照明がほとんどないのに、とても明るく歩きやすかった。このキラキラ感が、いかにもステートフェアだと感じる。

 ライド

ライドの種類は20種類くらい。そのうち4割くらいは子供専用のミニライドだが、観覧車やジェットコースターなど、こんなに大きいのを移動遊園地で良く作れるな、というものもある。全体的に、スリルライド系が多かった。

ライドの料金は、1枚1ドルのチケットが2〜4枚。乗り放題のチケット(リストバンド形式)もあり、子供たちの多くはこちらを使っていた。

観覧車は椅子にパラソルを乗せたような簡単な構造だった。列が短い割になかなか列が進まないのでよく見たら、全部で20基くらいあるカゴのうち、何と6基が使用禁止だった。恐ろしい気がしたが、それが分かったのは10分以上並んで、もうすぐ乗れるという段階だったので、乗ってしまった。涼しい風が吹いていたが、ギシギシと変なきしみ音が聞こえてくるので、とても肌寒く感じた。

 ゲーム

いつものステートフェアのゲームがひととおり揃っていた。多かったのは投げ入れ系(投げるのは輪やピンポン玉やコインなど)と対戦型(水鉄砲まとあてやスマートボール)。全体的に、投げ入れ系は静的なためか高齢者と小さな子供が多く、対戦型はアツクなるので若者と大きめの子供が多かった。

投げ入れ系の中には、「とても安価な(推定価格25〜50セント)景品を最低賞として用意し、1回2ドルくらいの料金設定で、子供は当たるまでできる」というシステムの店があり、小さな子供で繁盛していた。

飲食

メイン会場、グランドスタンド、カーニバルの3ゾーンとも、充分な軒数の飲食売店があった。だんだん暗くなっていくグランドスタンドで、涼しくなってきた風に吹かれながらロデオ見物、手にはビールとBBQの大串、なかなか幸せだった。

カーニバルのエリアの飲食は、客として子供の割合が高いこともあり、おやつに近いジャンクフードが中心だった。ハワイのステートフェアで気に入ったレモネードの売店がここにもあって、うれしかった。

物販

展示ゾーンでは、PRのための展示をしているブースもあれば、展示&販売をしているブース、販売だけをやっているブース(=売店)もあった。

備考

 ロサンゼルスからの距離

パソ・ローブルスの街は、今回使ったホテルのあるブレア(ロス近郊)から片道450キロ。CMSFの視察にあたっては、この街で宿を取るかどうか迷った。大型イベントなのでこの街のホテルは満室だろうから、近い街で探すしかないだろうと思った。しかし近い街は、地図で見ると、50キロとか100キロ離れている。そんなに遠くなるなら、ブレアから日帰りしてしまおう、と考えた。かなり距離があるが、フリーウェイを突っ走れば、平均110キロは出せるから、実質は片道4時間くらいと計算した。

往路は、ホテルを出たのが12時。土曜日の真っ昼間で渋滞は少ないと推測したのだが、現実は厳しくあちこちで渋滞。可能なところでは80マイル(約128キロ)で走るようにしたが、昼食までの300キロ走るのに4時間20分かかった。平均時速は70キロとなる。後半の150キロは1時間40分で走っているので、平均時速は90キロ。結局往路は6時間で450キロ、平均時速は75キロだった。

帰路は渋滞はなし。直線で可能なところでは90マイル(144キロ)で走った。しかしこの速度になると、クルマの操縦安定性がかなり低下し、コーナーではかなりぐらついて恐ろしいので、コーナーでは80マイルまでスピードを下げざるを得なかった。深夜の0時30分に出発し、途中30分休憩して、5時10分にホテル着。4時間10分で450キロを走りきり、平均時速は108キロ。ほぼ事前の試算通りだった。

往路・帰路とも、可能な限りスピードを上げ、休憩を減らし、必死に走った。スピードを上げると目が覚めるものだが、帰路は90マイルでも眠気が取れず、直線でもふらついていた。事故らないで良かった。

いくらアメリカでも、日帰りの900キロはきつい。片道で450キロというと、東名の用賀から、滋賀県の大津の当たりまでになる。次回からは、このような長距離の移動は、クルマなら1泊、できれば飛行機にしようと思った。

 インターネット予約について

CMSFのロデオ大会のチケットは、ホームページを発見したので、ネット上で予約した。当日はメインゲートの窓口で、予約受付メールのプリントアウトを提出した。カリフォルニア州とはいえかなり田舎の、それも恒久施設ではなく仮設のイベントだから、予約してもうまく取れていないのではないかと半分諦めていたのだが、すんなりチケットが出てきて驚いた。かなりいい場所の席だったので、予約した時点できちんと席をおさえてくれていたようだ。

企画のネタとして

ステートフェアは、収穫の後の秋の季節ではなく、夏〜秋のはじめに開催されることが多い。昼から開場しているが、人が集まるのは平日も週末も暗くなってから。連日深夜24時までの開場なので、暗くなってから来てもたっぷり楽しめる。逆に昼間からいると、暑さと日差しの強さに参ってしまう。ステートフェアへの来場交通手段は、ほぼ100%が自家用車なので、この点からも夜間開場しやすい状況になっている。CMSFでもメイン催事会場であるグランドスタンド(屋根なしスタンド席)では、夕方開始・日没後終了といった時間帯に組まれているほどだった。

この時間帯設定は、日本のイベントでも見習っていいと思う。たとえば日本の各県で開催されている地方博覧会では、日中の開場が大半で、夜間開場する地方博覧会は少ない。夏休み期間に開催される地方博覧会には、夜間開場するものもあるが、それでも開場時間は20時か21時くらいまでだ。

主催者にとって、夜間開場するということは、夜間照明の設置が必要であるということで、その分会場整備費用が高くつく。また、開場時間が長くなると、パビリオンやレストラン、売店などの従業員が2交代制(早番・遅番制)になり、人件費も高くなる。日本の地方博で夜間会場が少ない最大の理由は、主としてこれらの費用の問題であろう。

しかし、来場者の立場で考えると、夜間会場はありがたい。夏休みで子供たちは休みでも、平日の父親には仕事がある。夜間開場されており、入場料が比較的低額ならば(または複数回入場割引制度が充実していれば)、平日の夜間に家族揃って来場することができる。気候的にも、夏休みならば日中の来場よりも夜間の来場の方が身体が楽だ。主催者にとっても、平日対策(平日の来場者数アップ)になるというメリットがある。

ただし問題は、自家用車以外の交通手段で来場する者の割合が、ステートフェアよりも高いこと。シャトルバスや鉄道も夜間会場に対応しなければならないことになる。会場から最寄り駅までのシャトルバスと、そこからの列車が動いていたとしても、自宅近辺の列車やバスがある。深夜までの夜間会場に完全に対応した公共輸送体制の確立は、なかなか困難であろう。どうしても、深夜までの夜間会場は、自家用車による来場者のためのシステムになりやすい。

愛知万博は、地方博よりもスケールが大きい国際博覧会なので、夏休みは夜間会場をするはず。とすれば、夏休み期間以外も週末は夜間会場をする可能性が高い。大阪万博や筑波科学万博などの前例に従えば、20時か21時までの夜間会場になるだろう。この開場時間だと、やはり昼間から見に行くしかない。しかし、真夏の名古屋は酷暑だ。蒸し暑くてしんどい思いをすることは間違いない。

もしも愛知万博が深夜会場をするのなら、私としては夏休み期間ならば、朝から夜までの1日(10時−21時とすると11時間)の見学よりも、夕方から深夜まで(18時−24時とすると6時間)で2日間の見学を選ぶ。日中はホテルの部屋で昼寝か、または冷房のある博物館や科学館巡りをしていたい。

春や秋なら季候がいいが、小学生の子供を連れて泊まりがけの旅行に出られるチャンスはあまりない。2泊3日で旅行しようとすると、春休み、ゴールデンウィーク、夏休みしかない(秋の連休はカレンダー次第)。なるべく混雑しない日に見学したいと考えると、春休み中の平日(特に4月1日は新年度のスタートの日で空いている予感がする)か、夏休みの最後の1週間が狙い目だと思う。または、2002年度から小中学校は完全週休2日制に移行するので、金曜の夜の新幹線で名古屋に入り、現地で2泊して、土曜日全日と日曜日の午後までを使うという作戦も、悪くないかもしれない。どちらにしろ、現地近辺に宿泊する場合は、深夜まで夜間会場してくれる方がありがたい。

参考資料 −−− 会場マップ(207KBのJPEG画像)

参考資料 −−− スポンサー企業一覧(101KBのJPEG画像)


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