ディズニーランド・パリ(DLP)

視察日:2001年8月9日(木)


施設の概要

場所−−−フランス・パリ郊外(パリ中心部から東へ32km)
面積−−−1943ha(リゾート全体)
開業時期−1992年4月
営業時間−9時−23時(視察日)
入場料−−大人236フラン、子供184フラン(視察日の為替レートは1フラン約18円)

施設の特徴

アメリカ以外のディズニーランドとしてはTDLに次ぐ2番目のパーク。会場構成もTDLに似ている(ということは、DLやMKにも似ている)。

オープンはTDLより9年後。当初の名称は「ユーロディズニーランド」。関連施設は隣接する「フェスティバルディズニー」(現在の名称は「ディズニービレッジ」、ディズニーホテル宿泊者向けの夜のエンターテイメント施設、WDWにもある)、6軒のディズニーホテル(現在は7軒)。しかし、「アメリカ文化をフランス人がそう簡単に受け入れるものだろうか」という危惧が的中して、オープン当初から不入り。1995年に「ディズニーランド・パリ」と改名。客の入りは、最近になってだんだんと改善されてきたらしい。

ゾーニング

以下の5ゾーン。TDLよりもゾーン設定が少ない(クリッターカントリーやトゥーンタウンがない)。

アトラクション&ショー

 チケットブース&ゲート

入場のピークタイムが終わった平日の午後1時半過ぎに到着。美しいお城に入っていくと、ブースとゲートがある。閑散としていた。

 コインロッカー

お城の一角のコインロッカーは、すでに空きがなかった。パーク内には他にはコインロッカーはない。キャパシティが足りない。

 ガイドマップ

お城からパーク内に出る動線上に印刷物ホルダーがあり、6カ国語のガイドマップが用意されている(日本語版はなし)。しかし入場した時点では、スペイン語しかなかった。インフォメーションで英語版を入手した。

英語版のガイドブックだが、アトラクションの名称はフランス語のままのものが多く、とても読みづらい。私のような「フランス語はまったくダメ、他のヨーロッパの原語もダメ、なんとか英語なら理解できる」というレベルの客は、相手にされていないようだ。

 ディズニーランド・レイルロード

園内一周の鉄道。TDLならば5分か10分の待ち時間と思われる程度の行列なので並んでみたが、降りる人が少ないため、列車が来てもあまり列が進まない。TDLと違い、DLPの鉄道は途中に駅が3つもあるので、TDLの鉄道(駅は1カ所だけ=全員入れ替わる)と違うのは仕方がない。どのくらい待つのか見当が付かなかったので、乗車をあきらめた。待ち時間の表示はなかった。

鉄道の客車には、旧名称(ユーロ・ディズニーランド)が書かれていた。改名から6年たつのに書き直していないのは、費用節約のためだろうが、ディズニーのテーマパークらしくないやり方であるように感じた。

 待ち時間表示板

メインストリートUSAを進むと、アトラクションの待ち時間表示板があった。14時20分の時点で、待ち時間が長いのはビッグサンダーマウンテン:75分、ピーターパン:75分、ダンボ:75分、ケイシージュニア(小さな鉄道):60分など。なお、この表示板でも、不思議と園内一周の鉄道は取り上げられていなかった。ディズニーのテーマパークらしくない、徹底度の低さを感じた。

 「眠れる森の美女」城

TDLと似たような、園内のほぼ中央の位置にある。「眠れる森の美女」城は、WDWのMにもあるが、こちらの城は色合いがややシックでヨーロッパ調。お堀の水面にゴミが目立つのは、フランス調なのだろう。

 王様の剣

「岩に突き刺さった剣を抜くことができれば王になれる」というアーサー王の伝説が、ディズニーアニメでは「王様の剣」という作品になっている。日本での桃太郎とか一寸法師のように、ヨーロッパでは知らない人のいない伝説であると聞く。その「岩に突き刺さった剣」が城の脇にあり、にぎわっていた。ほほえましい風景だった。

 ピーターパン

アトラクション脇の待ち時間表示は90分で、5分前に見た待ち時間表示版よりも15分長い。急に混んだのか、それともどちらかの待ち時間表示がいい加減なのか、どちらかだ。待ち時間が長いので、ファーストパスをもらおうと思ったが、14時30分の時点ですでに本日分の配布は終わっていた。時間当たりのキャパシティが著しく低いアトラクションなので、TDLでも内容の割に待ち時間が長いが、こちらでも同様と思われる。

なお、DLPのファーストパスは、ピーターパンのほか、ビッグサンダーマウンテン、スペースマウンテン、インディジョーンズ、スターツアーズの計5種類。

 インディ・ジョーンズ

ひとつくらいはファーストパスが設定されている人気アトラクションに乗ろうと、インディ・ジョーンズに向かった。券売機が不調で、係員の手書き発券となっていた。14時40分に入手したファーストパスは、15時30分〜16時30分の入場。そんなに後ではない。通常の待ち行列の待ち時間はこの時点では45分だった。

昼食後、15時55分に戻ってきて、ファーストパスの入場口から進む。待ち時間は5分ほどで、すんなり乗れた。ここはフランスなので、ファーストパスを持っていても30分とか待たされるのかと危惧していたが、それは杞憂に終わった。

ここのインディ・ジョーンズはTDSやDLのジープ型ライドとはまったく異なり、後ろ向きに走るジェットコースター。しかし、三半規管が敏感すぎる人には単に気持ち悪くなるだけの乗物である点は、TDSやDLと同じ。

 アドベンチャー・アイル

TDLのトムソーヤ島のような歩行巡回型アトラクション。目玉の長い吊り橋は、風が抜けて、なかなか快適だった。

 イッツ・ア・スモール・ワールド

お気に入りのアトラクションだったので、30分という、平日のTDLやMKやDLでは考えられない待ち時間の長さにもめげず、行列に並んだ。15分で乗れた。

乗り場は明るい屋外の部分(屋根はある)。船は出発すると、すぐに建物の中に入り、そこから先はいつもと同じ。全体的に色使いがソフトで、きつい原色はほとんど使われていない。ヨーロッパ風のおだやかなカラー展開だが、悪く言うといつも曇った空の下という感じ。しかし、このアトラクションはほのぼの系なので、TDLよりもこちらの方が雰囲気に合っていて色使いのセンスがいいように思う。

船を下りてから、ウォークスルー型の展示空間があり、記念写真コーナーと化していた。基本照明をかなり落とし、演出照明主体で情緒的に世界の有名建築物を見せる空間で、見て回る分には幻想的な雰囲気がなかなか素晴らしい。しかし、写真写りは最悪。暗すぎるのでデジカメの感度をISO400レベルに上げてもシャッタースピードが上がらない。仕方なくストロボを使うと、演出照明がぶっ飛んでしまって、実に質感のない安っぽい展示物であることがばれてしまう。着想はすごくいいのに、実施製作の段階でへまをしていて、残念。

 アリスの迷路

「不思議の国のアリス」をモチーフとした植栽の迷路。先ほど見た待ち時間表示版では10分となっていたが、行ってみたら待ち時間はゼロ。楽しい仕掛けが随所にあって、子供だけでなく、大人でも充分楽しめる(ただし、アニメを見ていないと楽しさは半分以下)。アニメ作品のどことなく変な感じが空間全体で表現されていて、完成度の高さが素晴らしい。さりげなく、こんなアトラクションをひょいよ作ってしまうあたりに、ディズニーの底力を感じた。

 スターツアーズ

17時30分の時点で、待ち時間は90分。配布しているファーストパスの入場時刻は、21時15分〜23時で、最短で3時間45分後。ファーストパスは基本的には悪くないシステムだが、混雑すると発券の末期にはこんなに後の時間が指定されることになる。

 スペースマウンテン

17時50分の時点で、待ち時間は50分。配布しているファーストパスの入場時刻は、19時10分〜20時20分で、最短で1時間20分後。こちらは、スターツアーズほどひどいことにはなっていない。

 オートピア

ゴーカート。入口の待ち時間表示は30分だったが、20分で乗れた。コース設定はTDLとはかなり異なり、途中で対面通行の区間もある。クルマのデザインは少し昔の現代風という感じで、とてもださいと私は感じたが、このようなフォルムがヨーロッパではかっこいいのかもしれない。クルマの走行性能はTDLと似たようなレベル。

飲食&物販

 レストラン

14時45分、インディ・ジョーンズの近くのピザ店 Colonel Hathi's で昼食。客席はガラガラだが、注文するレジは長蛇の列。全部で8つあるレジのうち2つしか開いていないためだ。閉まっている6つのレジのうち、2つには売り子が入っているが、2人でおしゃべりで夢中。まだ、勤務開始時刻になっていないようだ。客がこれだけたくさん並んでいれば、TDLでは、従業員がサービス残業覚悟でレジを開けるだろう(優秀な店長なら、後で、サービス残業にならないように配慮するはず)。アメリカのディズニーのテーマパークなら、店長が即座に判断して、サービス残業にならないように取りはからって従業員に指示を出し、レジを開けるはずだ。「フランス人のサービスとは、こういうものだ」という場面を、まさかディズニーのテーマパークで見ることができるとは思わなかった。15分並んで14時ごろ、やっと自分の番が来たころに、おしゃべり2人組はレジを開けた。

メニューを見てびっくり。テーブルサービスではなく、並んで払って受け取って自分で運ぶ方式の店なのに、小さなピザが1枚50フラン(900円)近くする。信じられない値段だ。3人分のピザと飲物で188フラン(約3400円)になった。

客席はガラガラで快適。半屋外の席は喫煙可で、灰皿を貸し出していた。その灰皿が実にユニークで、アルミホイルを灰皿の形に成型した小さなぺらぺらのもの。ちょっと風が吹くと飛んでいってしまうようなちゃちな代物だ。タバコの吸い殻が3本も乗れば満員というサイズ。どう見ても、金を払って入園して、金を払って食べに来てくれた客に出す灰皿ではない。庭でホームパーティーをやるときに、灰皿が足りないので、スーパーで100個単位で売っているのを買ってきて並べて、「ごめんなさい、これで我慢してね」という灰皿だ。フランス風のサービスの独創性が強く感じられた。

味の方は、なかなかのものだった。TDLのピザも最近は以前よりも美味しくなったが、こちらの方がさらに美味しい。イタリアに近い分、一生懸命作っているのかもしれない。サービスと値段が最悪だったので、これで味まで悪かったらまったく救いようのない店だが、最後に頑張った。「うまいけど高くてサービスが最低」という、これまでフランスの飲食店をまったく利用したことのない私が抱いていたイメージ通りの店であった。

 売店

18時20分、メインストリートUSAにある綿菓子の売店に並ぶ。ピンク色の綿菓子が15フラン(270円)。値段は良心的だったが、機材が貧弱で、ついでに作り手の腕が悪くて生産能率が低い(私はプロ仕様の綿菓子機を使ったことがあるので、良く分かる)。さらに、待ち行列の誘導がないため、扇形に30人くらいの客が集まってしまい、押し合いへし合い状態。どのくらいひどいことになっているのか実体験してみようと並んでいたら、何と1時間も待たされた。1本作るのに2分くらいかかっていたので、計算は合っている。フランスをなめたら痛い目にあうことが良く分かった。
 おみやげ
メインストリートUSAにショップが集まっている店は、TDLと同じ。品揃えの点では、DLPオリジナルの商品が意外に少なかった。

 記録資料類

パーク内で何軒かの店を探したが、英語版のスーベニールブックが見つからない。最後に一番大きな店(エンポーリアム)に望みを託すも、品切れ。「ゲートの外のディズニービレッジにあるディズニーストアなら、あるかも」と言われて見に行ったが、ここにもなし。結局、イタリア語版を購入、49フラン(900円くらい)。最後の最後まで、DLPらしさを感じさせてくれた。

備考

 動線設定

来場者動線が基本的に細く、いつも人混みの中を歩いているようで開放感がない。さらに、どういうわけか袋小路が多くて、突き当たるたびにがっくり来る(TDLには袋小路は1カ所もないはず)。こんなに悪意に満ちた動線設定は、テーマパークとしては初めて見た。

 清掃状況

ディズニーのテーマパークとは思えないレベル。至るところでゴミが目についた。天国のウォルト・ディズニーがさぞかし嘆いていることだろう。

 歩行喫煙率

基本的に人混み状態なのに、歩行喫煙率が高い。推定、TDLの10倍。いつぶつかるかと、歩いていても気が気でない。そして歩行喫煙者の大半は、吸い殻をポイ。靴で踏んで消火しているだけましだが、歩行喫煙&吸い殻ポイは、田んぼや畑のあぜ道だけにしていただきたいと、こういう風景を見ると私(都会生まれ&育ち)はいつも思う。フランスは農業大国なので仕方がないのかも。

 交通手段

ロンドンからは、ユーロスターを利用。1日1往復、ディズニーランド・パリ直通便が運行されていて、行きは9時27分発、13時29分着(時差1時間なので所要時間は3時間2分)、帰路は19時35分発、21時39分着(時差1時間なので所要時間は3時間4分)。DLPにいられるのは正味6時間だけ。ウォータールーの駅で、往復の切符とDLP入場券をセットで購入したが、「本当に日帰りするのか、ホテルはいらないのか(ホテルの予約も受け付けている)」と何度も聞かれた。1泊しても良かったかなと思う。

なお、ユーロスターの切符は、2等車で往復170ポンド(31450円)、1等車だと40700円。ユーロスターの1等車は食事付きと聞いていたので、この値段差ならと1等車の切符を買ったが、DLP便は例外で食事無し。実に残念。

ウォータールー駅の出発は、飛行機と似ていて、持ち物のX線検査があり、パスポートを見せる(出国印はなし)。待合室には3人の楽隊がディズニーソングを演奏していて、しみじみと雰囲気を盛り上げていた。DLPの到着時・出発は入国/出国審査のようなものは一切なく、ごく普通の鉄道駅で電車に乗る感覚で、パスポートもノーチェック。ロンドンに帰り着いたら、パスポートに入国印が押されたので、パスポート上はロンドンに2回入国したことになった。

 レポートの書き手の視点について

私はヨーロッパの国の中では、フランスは最も嫌いで、ドイツが最も好きだ。ともにこれまで行ったことはないが、これまで関わりのあった数人のフランス人とドイツ人から、そういう印象を持っている。DLPは見たいがフランスには行きたくなかったので、今回はロンドンからの日帰りで見に行った。

また、私はかつてTDLの年間パスポートを持っていた時代もあったが、これはテーマパークが好きだからであって、いわゆるディズニーマニア(ディズニーのやることを無批判に盲目的に受け入れてしまう人たち)であるからではない。ディズニーのアニメ映画も、片っ端から集めたりはしていない。劇場版で出来のいい作品だけ買うようにしている。

このDLPのレポートは、そのような視点から体験記である。フランスやフランス人が大好きな人や、ディズニーマニアであるならば、私よりももっと満足度の高い1日を過ごせることだろうと思う。

 スポンサー

スポンサー企業として、ガイドマップに掲載されている企業は、エッソ、ハーツ、フランス・テレコム、IBM、コダック、フィリップス、BNP、マクドナルド、コカ・コーラ、ネスレ、マギーの11社。

企画のネタとして

TDLの9年後に、DLPがオープンした。どのくらい進化しているかと少しは期待したのだが、まったくの期待はずれ。ディズニーのテーマパークとは思えないレベルの運営&会場設計であった。

TDLはFC方式なので、儲かってもディズニーの会社はロイヤリティ収入のみ(そのかわり失敗したときのリスクは低い)。DLPは直営方式なので、儲けはすべてディズニーの会社のものになる。だとすると、ディズニーとしては、DLPに力を入れて、しっかり儲かる事業にしていこうと努力するはずだが、そのような積極的な姿勢はパークを見て回った限りではまったく感じられない。逆に、もうこのパークは儲からないことが見えたので、なるべく投資を控えて、経費も節約し、なるべく赤字の幅を小さくして、生き残りを図ろう、という感じ。2002年の春に倒産した宮崎のシーガイア(1995年に視察)や、ずっと昔に潰れた鎌倉シネマワールド(潰れる寸前に視察)と似たような雰囲気だった。いや、シーガイアは、運営はしっかりやっていて、DLPよりもはるかに快適だった(潰れたのは主として立地のまずさとリピーターを呼べない施設づくりにある)。やはり、フランスという特殊な国にディズニーランドを作ろうとしたことに、無理があったのではないかと思う。

しかし、良く考えると、これもディズニーならではの高度な経営戦略かもしれない。視察日のDLPは、客は良く入っていた。もしかしたらDLPは、しっかり黒字なのかもしれない。高度な運営や充分練り混まれた快適な会場設計は、リピーター確保のためには必要不可欠だが、一見さんだけを相手にするなら、重要度は低くなる。フランスは陸続きのヨーロッパ各地から客が集まる観光大国なので、PRさえしっかりしておけば、初めての客は集められる。一見の客だけで経営が成り立つなら、運営に手を抜いた方が利益率は高くなる。さらに、リピーターになればなるほど1回の来訪で落とすお金(客単価)は下がるから、「最初で最後のディズニーランドだ!!!」ということでどかんとお金を使ってくれる初めての客の方がありがたい。

テーマパークでは、リピーターの割合が多くなると、一見の客の居心地が悪くなる。特にTDLで、その傾向が最近顕著だ。たとえば季節もののスペシャルイベントでは、見やすい場所を朝いちダッシュのヘビーリピーターが独占してしまい、出遅れた一般客は遠巻きに見るしかないのが実態だ。レジャーシートを広げての邪魔で見苦しいパレードの場所取りも、早々と始めるのはヘビーリピーターの連中だ。将来、TDLの入場者数が減少していくようなことがあるとすれば、これらのヘビーリピーターの存在が、その理由のひとつになることは間違いない。

TDLのこのような状況を憂慮して、その9年後にオープンしたDLPはさらに進化して、「リピーターを排除したテーマパークづくり」という、画期的なコンセプトを設定した可能性がある。そう考えれば、悪意に満ちた会場設計、最低の来場者サービス、法外な飲食料金など、すべての面で納得がいく。これで経営が成り立っているならば、さすがディズニー、またしても誰も考えつかなかった新しいテーマパーク経営スタイルを確立したことになる。

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