メジャーリーグ・ベースボール
(セーフィコフィールド)

視察日:2002年8月15日(木)


興行の概要

場所−−−セーフィコ・フィールド
面積−−−不明(大リーグの野球場としては普通サイズと思われるが、外野手がいいマリナーズが有利となるよう比較的外野が広いという説もある)
入場料−−6ドル〜45ドル

興行の特徴

アメリカ・メジャーリーグの公式戦、シアトル・マリナーズ対ボストン・レッドソックスの試合。マリナーズにはイチロー、佐々木、長谷川と3人の日本人選手がいる。2002年シーズン、マリナーズはレベルの高いアメリカンリーグ・西地区で優勝争いを演じ、素晴らしい勝率をマークしたが、これを上回るチームがあったので、残念ながらプレーオフ進出はならなかった。

入場するまで

 チケット購入

マリナーズのホームページで3月上旬に購入。予約システムは素晴らしく、どの席が空いているのか座席図を見ながら、自分の好きな席を選べる。どの試合のどの席にするか、さんざん悩んだあげくに、8/15のボストン・レッドソックス戦、ライト側のテラスクラブ・アウトフィールドという40ドルの席を予約した。セクション213で、ライトのイチローの守備位置の真横のあたり。翌日からのニューヨーク・ヤンキース戦はもっと混んでいて、あまりいい席が残っていなかった。

2階席で内野の外れなのに、1階のバックネット裏と同じ値段になっている。その理由は、やや高級な座席だから。テラスクラブのイスはいい素材でやや広めで、飲食店やトイレなどもテラスクラブ専用になっているのであまり混雑しないとのこと。40ドルには、このテラスクラブの利用料金5ドルが加算されている。

セーフィコフィールドの座席表をよく見ると、2階席が最も値段が高い。バックネット裏の2階席はプレスボックスで、その左右がテラスクラブ・インフィールド(45ドル)、そしてそれに続いてテラスクラブ・アウトフィールド(40ドル)だ。

 駐車場

試合開始は19時5分、余裕を持って、3時間以上前の15時過ぎにレンタカーで現地着。どこが一番近い駐車場か、セーフィコフィールドの周囲を一周し、隣接するSAFECO Field Grage Parkingに決めた。駐車料金は20ドル。

5階から、セーフィコフィールドのクラブレベル(2階席)への直行通路がある。そこで、その通路の近くにクルマを止めた。この時点ではいいアイデアだと思ったのだが、試合後の駐車場ビルは出ようとするクルマで大混雑、5階では30分以上ぴくりとも動かなかった。正解は、駐車場の出口に近い1階だ。

 切符の受取

窓口で予約しておいたチケットを受け取る。この日は売り切れのため、当日券の発売は無し。

 記念写真コーナー

入場開始は試合の3時間前(中央入口)か2時間前(その他の入口)。たっぷりと時間があるので、そのへんを歩き回ってみた。市街地にある球場なので、球場のすぐ横は道路。その道路からも良く見える特大サイズで、壁面に選手の写真と名前が表示されている。レギュラークラスの選手が全員並んでいて、記念写真を撮影するファンの数から判断するに、一番人気はイチロー、そして打順3番のブーン、4番のマルチネス、5番のオルルッドのクリーンナップ・トリオが続いている、という感じ。

 セーフィコ・チームストア

記念写真の壁にはさまれるように、マリナーズ公式ショップがあった。店内は広々としているが、試合開始まで3時間以上あるというのに大にぎわい。売れ線は、選手の背番号&名前入りTシャツや帽子など。モノポリーのシアトル・マリナーズ版があり、買うか買うまいか延々迷ったが、すでにトレーナー(42ドル)や帽子(24ドル)、Tシャツ(25ドル)などを買い込んでいて、さらに大きな荷物になるのであきらめた。でもやっぱり、買っておけば良かった。

球場の様子&試合展開

 入場

試合開始の2時間前に、中央入口から入場。瓶や缶の飲物、大きなバッグ、レーザーポインター、ビーチボール、音の出るものは持ち込み禁止。日本のプロ野球の応援のうるささが好きになれない私としては、「音の出るものは持ち込み禁止」というルールはとてもありがたい。レーザーポインターは、少し前に佐々木投手がマウンド上でレーザーポインターで目をやられるという事件があったので、それから禁止されたのだろう。

手荷物検査は、カバンやバッグの口を開けて中を警備員に見せる、というレベル。それほど混雑することなく、入場することができた。

 サイン会

試合開始1時間前までは、観客はスタジアムのどこにいてもいいというルールなので、まずはバックネット裏に向かった。すると、長い2本の行列ができている。よく見ると、選手のサイン会だった。近くの人に聞くと、ブレット・ブーン(3番・セカンド)とカルロス・ギーエン(打順不定・ショート)とのこと。

さっそくブーンの列に並ぶ。何にサインしてもらうかは、並びながら考えた。マジックペンは選手が持っているようなので、こっちで用意する必要はない。サインは1人1点、記念写真を撮るときも1人1枚が暗黙のルールのようだ。そこで、さっき買ったばかりの帽子のつばにしてもらうことにした。デジカメの準備もする。しかし、あと10人だというところで、無情にもサイン会は終了。ブーンはフェンスを乗り越えグラウンドに戻ってしまった。

ならば、とギーエンの列に走る。こっちも列は短くはない。順番が来る前に終わってしまうかもしれないとはらはらしていたが、15分くらい待って、ようやく順番が回ってきた。間近で見るギーエンは、目がくりくり可愛くて、なかなかのいい男。ブーンはさっさとサイン会を終えてしまったのに、ギーエンは長々と頑張っている。これまで良く知らなかったが、こいつ、すごくいい奴だ。その場で、野手としてはイチローの次にギーエンを応援することに決心した。

 試合前練習

その後、ライト側の1階席でボストンの守備練習を見た。練習中の選手は、時折捕球したボールを観客席に投げ込んでくれる。すごく気前がいいサービスだ。当然、外野の選手の後ろには子どもたちが鈴なりで、捕球するごとにぎゃーぎゃー叫んでいる。あれでは練習の妨害になるような気もするが、しかしプロだから、大歓声の中でも冷静なプレーができなくてはいけない。とすると、練習中から試合と同じような騒音状態にしておくのは、極めて実践的な練習と言える。さすが大リーグ、良く考えられている。

 自分の席

試合開始1時間前に、自分の席に着いた。2階席は1階席から隔離されていて、テラスクラブのゾーンに入るためには、階段脇のゲートで入場券をしっかり提示しなければならない。いちいち面倒だが、一度テラスクラブに入ってしまうとほとんど他のゾーンに行く必要はないので、不便さは感じなかった。

イスはクッション入りの本革、素晴らしい座り心地。屋外なのにもったいないくらいの高級素材だ。テラスクラブの真上には屋根があるので、普通の雨になら濡れる心配はないが、嵐が来たらどうするのだろう。濡れるとなかなか乾かない。シートカバーで守ったりするのかもしれない。

 試合

19時10分、試合開始。マリナーズの先発は、エースのガルシア。右腕の本格派だが、すぐカッカとなり、崩れ始めると一気にこてんぱんにやられるという実に大リーガーらしい性格。この時点で12勝8敗、防御率4.15。勝ち星が先行しているが、防御率はあまり良くない。6回までしか投げないとしても、平均して3点くらいは取られている計算になる。いいときは完封ペースだが、悪いとすぐに6点くらい取られるので、ガルシアが投げるとあまり接戦にならないような気がする。

ボストンの先発は、キャシー・フォッサム。2勝1敗、防御率3.28。先発ピッチャーでこの勝敗数ということは、途中でメジャーに昇格してきたのか、故障から戻ってきたのか、どちらかだろう。

試合は、2回にボストンがソロ・ホームランで1点先行。連打に四球やエラーが絡むと必ず頭に血が上るガルシアだが、単発のホームランくらいでは動揺しない。案の定、その後は立ち直り、決めるところではきちんと三振を取る。この調子が続けばいいのだが。

4回に、マリナーズが逆襲。ブーンが倒れた後、マルチネスがヒット、オルルッドが四球。全然打っていなかったシエラはやっぱり内野ゴロ、ゲッツーでおしまいになるはずが、相手のエラーで一死満塁。続くウィルソンが大きな犠牲フライ、どすどすマルチネスがホームインで同点。なおも、ギーエン・イチロー・シリーロの安打で、3点を追加。この回4点を挙げてゲームをひっくり返した。観客席は最高に盛り上がり、あちこちにポップコーンがぶちまかれた。足元にはコーラも流れてきた。

6回、やっぱりガルシアがつかまる。ヒットと四球で満塁。たまらずピネラ監督は中継ぎのローズをマウンドに送る。ガルシアがしっかりしないから、いつもより少しローズの出番が早い。いやな予感がする、と思ったらその通り、いきなりタイムリー2塁打、大悲鳴の中で2者生還。これで4−3、なおもランナーは2・3塁、一打逆転の大ピンチ。しかしローズが踏ん張って、後続を打ち取った。翌日の新聞によると、ローズは「ここらでようやく身体が温まってきた」とのこと。これは本当かもしれない。6回の満塁はあっと言う間の出来事だったので、ローズは肩を作る間もなくマウンドに上がらされてしまった可能性がある。そして7回、8回、しっかり身体が温まったローズは素晴らしいピッチングを披露して、きっちり無失点におさえた。

9回の表、お約束の佐々木が登板。相手の打順は、ガルシアパーラ・ラミレス・フロイドという、かなりの強力クリーンナップ。しかし佐々木は、ライトフライ・三球三振・ピッチャーゴロで難なく抑え、観客総立ちのスタンディング・オベーションの中、30セーブ目をゲットした。ガルシアは13勝目、そしてピネラ監督は1300勝目(翌日の新聞による)。

備考

 飲食

いつもそれほ行列は長くなかった。テラスクラブ以外の飲食店がどうだったのかは、見ていないので分からない。

おもしろかったのは、小さなヘルメットに入れたアイスクリーム。6ドルと安くはないが、なかなか量が多くて満足できた。その他、ビールは6ドル、レモネードは5ドル、パスタのプレートランチが9ドルなど。物価はあまり安くない。

 スーベニールブック

お土産用の印刷物としては、マリナーズ・マガジン(4ドル)と、スコアカード(1ドル)が売られていた。スコアカードはA4ワイド版・8ページで、観戦した試合のスコアブックを付けよう、というもの。1ドルという廉価で販売できるのは、全体の約半分が協賛スポンサーの広告であるため。

 観客参加性の高さ

試合前から試合中に、観客参加型(特に子ども向け)の企画が盛りだくさん実施されていた。試合前には、練習中のボールプレゼント(外野手が捕球した後に適宜観客席に投げ入れてくれる)や、子どもの守備ゲーム(バッティング練習の際、外野を子どもたちが守る、2003年のメジャーリーグ・オールスターゲームの前日のホームランダービーの際も行われていた)。試合中は、ファールボールやホームランボールのプレゼントに加えて、子どもによる選手名のアナウンス(マリナーズの選手のみ)、子どもの似顔絵での電光掲示板選手紹介、観客席の大写しなど。何でも喜ばれそうなことはすべてやっている、という感じ。アメリカ人らしい、人を喜ばせたいというサービス精神にあふれている。

企画のネタとして

やはり予想したとおり、日本のプロ野球とは雰囲気が大違いだった。日本のプロ野球は、「ひいきチームが一番好きで、次に野球が好き」という客が多い気がするが、セーフィコフィールドでは「まず野球が好き、次にひいきチームが好き」という客ばかりのように感じた。だから、応援の仕方が異なる。相手チームのファインプレーにも惜しみなく拍手を送るし、ひいきチームでも凡プレーにはブーイングで抗議する。審判の判定についても同じで、おかしいと思った場合は自軍敵軍の区別なくブーイングを送る。客は、自軍が勝つこともさることながら、それ以上に「いい試合であること」を求めている。

だから選手たちも、自軍の勝利よりも、まずは自分がいいプレーをすることに一所懸命だ。たとえばメジャーリーグでは、外野手はギリギリの打球に対してスライディングキャッチを試みることが多い。いつも取れるとは限らない。取れれば大歓声だが、取れずに2塁打になってしまっても、積極的にがんばった結果の失敗に対してはブーイングは起きない。ブーイングが起きるのは、突っ込めば勝負できそうな打球に突っ込まない場合だ。

また、全体的にフェンスが低いことも特徴的だ。練習中のボールプレゼントは、内外野のほとんどの場所で、観客に直接手渡すことができる。試合中、ファールボールを取る係の女の子(女子の野球選手らしい)がボールをキャッチすると、最前列の子どもに手渡ししたりしている。このような設計なので、セーフィコフィールドでは観客と選手の距離感が近いように感じられる。

さらに、試合のテンポが速い点でも、日本のプロ野球とは大違いだ。ピッチャーはポンポンと投げるし、バッターはブンブン振る。お互いに、長々と間を取ったりしない。リリーフピッチャーも、ブルペンから走って出てくる。日本のプロ野球よりも、ゲームの所要時間が2割か3割短いのではないだろうか。どんどん試合が進むので、飽きる暇がない。

野球の最大の面白さは、スリリングさにある。何回もスリリングなシーンがあれば、そのたびに興奮できて、とても楽しい観戦となる。イチローがサードやショートにぼてぼての当たりを転がすと、果たして内野安打になるかどうか、はらはらする。外野に大飛球が飛ぶと、入るか、取るか、ドキドキする。メジャーリーグ・ベースボールは、このようなはらはらドキドキが多い。そしてそれが濃縮されている。だから観ていておもしろい。

日本のプロ野球は、人気が凋落しつつあると聞く。観客動員数は下がる一方で、視聴率も芳しくない。そのため各球団は、プレゼントなど観客サービスに力を入れたり、割引デーを設けたりしているらしい。しかし、このような小手先の対策では、失った観客を呼び戻すことは到底できない。ワールドカップ・サッカー大会は、日本の人々にサッカーの面白さを充分に伝え、その後世界のサッカーがどんどん紹介されるようになった。NHKのBS放送なら、ほとんど毎日メジャーリーグ・ベースボールを観戦できる。「観戦していておもしろい」というスポーツが急に増えたのだ。そのような状況の中、ライバルたちに打ち勝っていくためには、「試合の面白さ」という、本質的な魅力アップを図る必要がある。

私設応援団のうるさい笛や太鼓、下品なヤジなどをBGMに、相変わらずの間伸びした、そして緊張感のない試合をしている限り、私は高い金を払って日本のプロ野球を見に行く気にはなれない。だったらテレビでメジャーリーグ・ベースボールを観ていた方がおもしろい。このように感じている人は、決して少なくないはずだ。「いかに観客に楽しんでもらうか」を念頭に置いて、抜本的かつダイナミックな改革を進めない限り、日本のプロ野球の将来は暗い。

参考資料 −−− 2002年シーズン・セーフィコフィールド座席図(100KBのPDFファイル)


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