ボーイング・エバレット工場

視察日:2002年8月15日(木)


施設の概要

場所−−−シアトル郊外(北へ50キロ)
面積−−−とても広大(3000m級の滑走路が2本ある)
設立−−−1968年(747の生産開始とともに見学ツアーも開始)
実績−−−累計見学者数は200万人を突破
開始時間−9時・10時・11時・13時・14時・15時(ツアー)
開館時間−8時半−16時(ロビー=ミニ博物館)
休館日−−土曜・日曜
入場料−−大人5ドル、子ども3ドル(ツアー)

施設の特徴

ボーイング社は長らくシアトルに本社を置き、近辺に工場や研究所などを展開してきた。そのうちのひとつが、747、767、777を組み立てているエバレット工場。平日のみ1日6回、所要時間1時間程度の見学ツアーが実施されている。ボーイング社の工場の中で、一般人が飛行機組立を見学できるのはここだけなので、観光シーズンになると午前中に午後の切符が売り切れるほどの人気を集めている。

2001年にボーイング社は本社をシカゴに移転したが、その後もエバレット工場の操業は続き、工場見学も以前と変わらず実施されている。しかし、ボーイング社がシアトルを去った理由のひとつは、滑走路の増設(すでに2本の3000m級滑走路があるが、音速旅客機の開発のために、さらにもう1本が必要になった)に対して、シアトル当局がなかなか認可しなかったこと、とのことなので、いつまでボーイング社がエバレット工場を使い続けるのか、いつまで見学ツアーは続くのか、先行きは不透明だ。

見学ツアー 

 ロビー周辺

ロビーのチケットカウンターに10時20分に到着。11時のツアーに参加できたらと思ったのだが、すでに満員。購入できたのは13時のツアーだった。1階の参加人員は107名とのこと。近くのファミレスで昼食にして、12時20分に戻ってきた。まだ時間があるので、ギフトショップで暇つぶしをした。

駐車場の真ん中あるツーリスト・インフォメーションは、小さいがしゃれた建物で、ギフトショップとは大違いだ。見渡す限りの空間の中で、この建物だけ妙に浮いている。それもそのはず、ここは地元スノホミッシュ郡の観光案内所だった。エバレット工場に来た客を何とか地元観光に誘引しようと、郡が気合いを入れて建築したようだ。しかしパンフレット類を見ても、たいした観光資源は見つからない。手に取ったパンフレットはそのまま返してきた。

12時50分にロビーへ。ロビー空間はボーイング社に関するミニ博物館になっている。ツアーの開始を待つ客のための暇つぶしとして作られた展示だと思うが、なかなか興味深くできていて、じっくり見ていれば10分や20分は楽しめる。この時点で、14時の見学ツアーのチケットも売り切れて、15時の分を発売していた。

なお、工場見学ツアーは、ハンドバックやデイパック、カメラ、ケータイ、ポケットベル、ベビーカーの乳児の持ち込みが禁止されている。警備上の理由とのこと。残念だが仕方ない、カメラとバッグをチケットカウンターに預けた。

 シアター

まずはロビーの一角のシアターへ。上映作品は2本で、最初はボーイング社の航空機の紹介。だいたい見たことがある飛行機なので、あまりおもしろくない。次は、ボーイング747の組立工程の早回し。これは実におもしろい。巨大な機体パーツがクレーンで吊られて工場内をがーっと移動して、定位置に降ろされて、次の部品がどこかから走り寄ってきて、接続されて、そうこうしているうちにだんたんと機体の形になってきて、組み上がったら完成品置き場に移動する。おもちゃを組み立てているみたいだ。

 バス移動

グレイハウンドのバス2台で出発。ロビー棟そ出発したバスは敷地内をずんずん走る。工場の隣の駐機場は車窓観光。しっかりペイントも終わり納品間近の航空機が全部で7機並んでいて、そのうちの2機はANAだった。納品はボーイング社が届けるのではなく、購入した航空会社のパイロットが引き取りにやってきて、自分の国に運転していくとのこと。

 工場見学

その後、工場に到着。見学者専用の入口から地下通路を延々と歩く。その先に長い長い階段があるのかと少しびびったが、待っていたのは大型の金網式エレベーター。これで一気に3階(高さ的には5階か6階の高さ)の見学コースまで上がる。

ここからの眺めは実に壮大。巨大な空間の中で、何機もの飛行機が組み立てられていた。この建物は容積で世界最大(ギネスブックに掲載されている)。飛行機は大きいが、建物はもっともっと大きいので、飛行機が小さく、おもちゃのように見える。工場のほぼ中央にはまだばらばらの飛行機、そして工場の出口側にはほとんど完成形の飛行機。だんだん組み上がるにしたがって、出口に近い方に移動していくシステムだ。内装とエンジン取付は最後の工程で行うということで、ほとんど完成形の飛行機だけにエンジンが付いていた。

人の数は少なく、また部品のクレーン移動もとてもゆっくりのため、遠目に見ると仕事が進んでいるのか止まっているのか良く分からない。しかし、じっと見ていると、確実にクレーンは動いているし、工場全体としてはかなりの人数の人が働いていることが分かる。

この工場は、他の工場で造った部品を集めて、組み立てて、塗装をするだけ。しかしその組立作業だけで、1機に10か月もかかるという。1値段は機200ミリオンドル。1ドル120円として240億円だ。10年か20年前に、新宿西口の超高層ビルの建築費が1棟200億円と聞いたことがある。

何時間も粘れば、ひとつぐらい部品が合体するのを見ることができそうだが、20分程度で見学時間は終了。来た道を引き返し、バスに乗って、ロビーに戻った。14時少し過ぎの時点で、本日の見学ツアーチケットは売り切れとなっていた。

飲食&物販

 ドリンクカウンター

小さなドリンクカウンターがあったが、いつもは店員がいない。客が「ヘイ」とか呼ぶと、奥から店員(チケットカウンターの係員兼用)が出てくる、という方式。スターバックスの本拠地シアトルらしく、コーヒーがなかなか美味しかった。

 ギフトショップ

物販施設は1店のみ、ロビー棟から20mくらいのところにギフトショップがある。プレハブの粗末な建物だが、店内はとてもにぎわっていた。商品はすべてボーイングのロゴ入りグッズで、Tシャツや帽子、安価なアクセサリー、大小の飛行機の航空機模型あたりが売れ線の模様。ボーイングのロゴは基本的にかっこいいので、どの商品も魅力的に見えるが、あまり大量に買い込んでいる人はいなかった。

 記録資料類

スーベニールブックは売っていなかった。その他にも、エバレット工場の見学記念品といったものは見つからなかった。ギフトショップにある商品は、ボーイングのロゴ入りばかり。

備考

 写真出典

尾翼のアップ、工場の全景、工場内の組立風景の計6枚の写真は、ボーイング社ホームページからの転載。

企画のネタとして

大人1人5ドルとそれほど高くはないが、ここの工場見学は有料だ。シアトルの街から50キロ遠く、バスを乗り継げば行けないことはないが非現実的、足はマイカーかレンタカーがグレイハウンドのバスツアーしかない。それなのに春から秋の間はほぼ満員になっている(と、チケットカウンターの係員が言っていた)。視察日は夏休みながらも平日であったが、10時20分到着で参加できたのは13時のツアー、13時到着では最終回の15時のツアーとなっていた。大変な人気だ。

年間が52週とすると、平日は1年に260日。毎日107人×6回で642人とすると、一般ツアーの年間最大受け入れ可能来場者数は16万7000人となる。ボーイング社のホームページでは、最近は年間11万人の来場者とあるので、稼働率は67%だ。シアトルが北緯47度と稚内よりも北にあり、冬はかなり寒い都市なのに、この稼働率は驚異的だ。4か月客が来ないで、8か月満員ならば稼働率は67%となる。有料でありながらこんなに多数の来場者を集めている工場見学は、日本にはおそらく存在しない。アメリカでもライバルになる施設があるのかどうか、分からない。

やはり、「ここでしか見ることができない」という、オンリーワン展示の威力と言えるだろう。さらにここの展示物は、オンリーワンに加えて、あまりにも巨大だ。誰もが生まれて初めて見る光景を楽しめる。新鮮な感動がある。リピーターは決して多くはないだろうが、印象がかなり強烈なので、一度見学した人から友人・知人へ口コミはどんどん広がっていく。私も、友人の誰かがシアトルに遊びに行くことになったら、きっとこの工場見学を勧めることだろうと思う。

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