フーバーダム

視察日:2002年8月12日(月)


施設の概要

場所−−−ボウルダーシティ(ラスベガスの南東30マイル)
規模−−−高さ221m(アメリカ最大)、長さ379m
完成−−−1935年(ダム本体)、1936年(周辺施設)、
       1937年(見学ツアー開始)
開館時間−9時−17時(ツアーチケット販売は16時半まで)
休館日−−サンクスギビングデー・クリスマス
入場料−−大人10ドル、子ども4ドル(ツアー)

施設の特徴

フーバーダムは、グランドキャニオンを流れてきたコロラド川を堰き止めている巨大な重力式アーチダム。アリゾナ州とネバダ州の州境に位置する。「フーバー」の名は当時の大統領の名。ダム湖であるミード湖は世界有数の人造湖(貯水量はアメリカ最大)。コロラド川の氾濫防止だけでなく、ラスべガスへの電力供給や、ネバダ州やアリゾナ州だけでなくカリフォルニア州やメキシコまで幅広い地域への水の供給など、多面的に役立っている。このダムがなかったら、今のラスベガスやリノの繁栄は存在しなかった。

ダムの完成から間もない1937年から見学ツアーが始まり、今では年間100万人以上のツアー参加者を集めている

見学

 ミード湖・ビジターセンター

ミード湖(フーバーダムのダム湖)を見下ろす高台にある。風がそよそよと吹いているが、気温は華氏109度(摂氏42.8度)。めまいがする暑さの中、よろけるように冷房の効いた建物内に入り、まずは水分を補給した。ミネラルウォーターの500mlくらいのペットボトルが1.5ドル。生き返った。

このビジターセンターは規模が小さく、いくつかのジオラマ模型とミニシアター、パンフレット配布コーナーのみ。ほとんど来館者がいないようだが、シアターの映像はなかなかおもしろかった。

 フーバーダム・ビジターセンター・駐車場

ダムの手前に検問所、乗用車はほとんどがノーチェックで通過。水と電気の供給源だけあって、警備に力を入れている。ビジターセンターの駐車場はビルになっていて、5ドル。なかなか繁昌していて、なかなか空きスペースが見つからなかった。観光バスが何台も来ていて、ここは観光地なのだなあと実感した。

 フーバーダム・ビジターセンター(チケット購入)

チケットカウンターはビジターセンターの建物内。ボディチェックを受けて、建物の中に入ると、販売窓口がずらりと並んでいた。ほんの2〜3分でチケットを買えたが、待ち行列用のロープパーテーションがかなり長く用意されていたので、混む日は長い行列ができるのだろう。暑くない冬が、このあたりでは最も混雑する季節ではないかと推測する。

チケットは大人10ドル、子供4ドル。子供料金は大人の半額ぴったりにはせず、すこし高くする(MSIC、AIC)か、少し安くする(エバレット工場とここ)のがアメリカ流なのかもしれない。通常のツアーに加えて、背景合成の記念写真付きコースやおみやげのヘルメット(黄色いプラスチック製、子供のおもちゃレベル)付きコースもあった。これらのコースは急に値段が高くなるのだが、ヘルメットを被っている子供は少なくなかった。気分盛り上げ効果が評価されてよく売れているものと思われる。

 シアター(フーバーダム・ビジターセンター)

シアターは2室あり、2作品を上映している。フーバーダムの建設ストーリーの方だけを見た。もう1本はフーバーダムとミード湖の自然環境について、というようなタイトルで、あまり魅力感じなかったのでパスした。15分待ちで入ったシアターは意外に広く、上映時間ぎりぎりに来ても何とか空席が見つかる状態。上映された作品は、25分くらいのモノクロ映画。工事の初期は断崖絶壁に道を付け、重い資材を人力で運んでいた。道を踏み外したり、道が崩れたりしたら命はない。さぞかしたくさんの犠牲者が出たことだろうと複雑な思いがした。

 ガイドツアー(フーバーダム・ビジターセンター)

シアターから出ると、ガイドツアーの待ちスペースになっていた。ほどなくしてガイドが登場し、出発。エレベーターに乗って、ダムの内部の底にあるパワープラントへ。このダムには発電室が2つあり、こちらはネバダ・ウイング。ダムの反対側のアリゾナ州側にアリゾナウイングがある。発電量はネバダウイングの方が少し多いとのこと。

発電機は8基で、発電中のものは上部の赤ランプが点灯する。一番手前の発電機は最初は止まっていたが、誰かがどこかでスイッチを入れたようで、低くゆったりとうなり出した。うなりのピッチがどんどん速まり大きくなっていく。じっと見ていると、やがて上部の赤ランプが点灯した。14時ころのことなので、おそらくはがんがん気温が上がったため、ラスベガスあたりで冷房のための電力需要が増えて、それに対応して運転する発電機を増やした、ということであろう。おもしろいシーンを見ることができた。

 展示室(フーバーダム・ビジターセンター)

ダムの建設に使った工具や建設風景の写真などが並んでいた。古い写真だがよくコレクションされていて、なかなか興味深かった。この写真はダムが建設される前、水がとても貴重品だった時代の道路脇の看板。5ガロン15セント、10ガロン25セントと書いてある。フーバーダムの建設作業員のギャラは1日50セントとどこかに書いてあったので、10ガロン(約38リットル)の水が、1日の日当の半分をも占めていた計算になる。

 徒歩見学(フーバーダム・ビジターセンター&その外)

ガイドツアーの終了後、ビジターセンターの屋上に出た。デッキからダムやパワープラント、ミード湖などの眺めがよい。周囲は赤茶けた岩山で、送電用の鉄塔だらけだった。

その後、ビジターセンターを出て、ダムを目指す。取水塔もネバダ側とアリゾナ側の2本があり、観光客が近づけるのは取水塔に通じる橋の途中まで。しかし、やはり屋外は強烈に暑い。さらに気温が上がっている。あきらめて途中で引き返した。水はたんまりあるのだから、見学コース上に服の上から浴びることができるミスト装置かシャワーを用意していただきたいと思う。

駐車場に戻る動線上、ミード湖にせり出すような位置にカフェを発見したので、急いで逃げ込んだ。しばし休んで、元気を取り戻して、最後の駐車場までがんばった。へばった。

 ミード湖展望台

帰路、展望台の標識を発見したので立ち寄ってみた。眺めは良かった。15時半の時点で、気温は華氏115度(摂氏46.1度)。直射日光の下には、5分といられない。

 ミード湖の湖畔

その後、ミード湖の湖畔に出られる道を発見したので、行ってみた。公園のようになっていて、入場料を徴収するための料金ゲートがあったが、無人だったので無視した。湖畔に出て、ミード湖の水を触ってみたが、予想に反してお湯ではなかった。でもかなりぬるい。湖水浴をしている家族連れがいたが、波は小さいし、浅いところで遊んでいる分には安心できる。さすがに直射日光の下で身体を焼いて、そのままミイラになろうとしている人はいなかった。

往復の道のり

 行き

ラスベガスのホテルのレンタカーオフィスで、オープンカーを借りて出発。風の巻き込みが激しいのでフリーウェイではあまりスピードを出せず、頭のてっぺんをじりじり焼かれながら50分かかって、フーバーダム・ビジターセンターの手前にあるミード湖・ビジターセンターに到着。ここを見学後、約10分の距離にあるフーバーダム・ビジターセンターへ向かった。

 帰り

脱水症状気味だったので、帰路は屋根(ハードトップ)を着けて、エアコンを全開にして走った。

 その後

せっかくオープンカーを借りて、すぐに返すのはもったいない(24時間の契約だった)ので、日没後ラスベガスの街に繰り出した。大渋滞のストリップ大通りを何往復もして、路上のクルマたちをよく観察した結果、オープンカーの割合がとても高いことが分かった。そのほとんどがレンタカーと思われる。雨が降らない砂漠地帯なので、この点ではオープンカーはラスベガスによく似合う。しかし昼間に屋根なしで走るのは、根性試しか我慢大会だ。おそらくはみんな、昼間少し走って暑さに懲りて、日没後なら大丈夫とまた出てきたのだと思う。アホなやつらだ。そう考えてよく見ると、オープンカーに乗っている連中は、みんながみんな頭が悪そうな顔をしていた。

飲食&物販

 カフェ(オフィシャルショップと思われる)

駐車場ビルの1階に飲物と軽食のセルフサービス式カフェ。安いテーブルと安いイスで、質素な作り。かなりにぎわっていて、なかなか空席が見つからなかった。フーバー・バーガー(大型ハンバーガー)、フーバー・ドッグ(大型ホットドッグ)など、メニューに工夫が感じられる。試しにフーバー・ドッグを頼んでみたが、大きすぎて途中で飽きた。3人分の飲物と軽食で27.85ドル。値段がけっこう高い。アメリカにも観光地価格というものが存在することが判明した。

 カフェ(非オフィシャルショップと思われる)

ダムと駐車場ビルの中間からやや入った位置に、ぽつんと1軒のカフェ。こちらも安いテーブルと安いイスで、質素な作り。安いアルミサッシの向こうにミード湖が広がっている。しっかり冷房が効いていて、そのためだろう、かなりにぎわっていた。窓からは、遠くにボートや遊覧船が見えた。アイスクリームが2.5ドル、ミネラルウォーターが1.5ドルと値段は良心的だった。

 ショップ(オフィシャルショップと思われる)

上記のカフェに隣接したショップは、あまり頭の良さそうなものがなくて、日本の観光地の土産物屋ととても似た品揃えだった。変わっているのは、絵はがきのバラ売り(アメリカでは絵はがきは普通はバラ売り)くらい。

 記録資料類

スーベニールブックは9.95ドル。日本語版があるので開いてみたら、本文(カラーページ)は普通の英語版。よく見ると、中央部に別冊(黄色い紙にスミ1色刷り)を綴じ込んであり、この別冊が文章の日本語訳となっていた。実にユニークな方法だ。これなら、低コストで各国語版を作成できる。思いついた人はなかなかアイデアマンだ。

英語版の写真を見ながら別冊の文章を読むという、少しややこしい読み方になるが、それでも電子辞書を傍らに分からない単語を翻訳しながら読むよりはましだ。この方法を考えついた人は、なかなかのアイデアマンに違いない。写真の印刷はアメリカの印刷物とは思えない美しさで、この部分に予算を集中投下しているものと思われる。

企画のネタとして

ここもエバレット工場と同様に、「どーだ、でっかいだろう」という単純明快な施設。「分かりやすい」=「幅広いターゲットに対するアピール力がある」、そして「他にはない」=「強力なアピール力がある」の組み合わせなので、多数の来場者を集めている。そして見学コースもしっかりしていて、なかなか見応えがあった。「わざわざ暑い中、がんばってやってきたけど、でもその甲斐があった」と感じられる出来映えだ。エバレット工場と同様に、このあたりに行く友人・知人がいたら、「なかなかおもしろい」と見学を勧めようと思う。

その後、日本の黒四ダムを見に行った。クルマでは途中までしか行けないので、時間的にも予算的にも行くまでで大変だった。そうして苦労して現地にたどり着いたが、資料館はカスみたいな代物で、もっぱら眺めを楽しむだけの観光地だった。日本を代表するダムなので、しっかりした見学コースが用意されているのではと期待していったのだが、まことに拍子抜け。時間とお金が腐るほど余っている人以外には、お勧めできないと感じた。

日本とアメリカ、それぞれを代表するダムの見学コースは、実に対照的である。その理由は、どのへんにあるのだろうか。深く考えさせられる一件であった。

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