オー

視察日:2002年8月10日(土)


ショーの概要

会場−−−ホテル・ベラッジオのオーシアター(専用劇場)
出演−−−シルク・ド・ソレイユ
料金−−−121ドル(1階席)・99ドル(バルコニー席)
公演回数−1日2回(19時半、22時半)
休園日−−水曜・木曜

ショーの特徴

水にまつわる命の不思議さを肉体で魅せるファンタジア。有名なシルク・ドゥ・ソレイユが、人間業を超えた肉体の妙技を披露する。ここまでは同劇団の他の作品と同じだが、違うのは舞台装置。巨大なステージは瞬間水位調節可能型プールとなっていて、さっき高飛び込みをしたかと思えば、その数秒後には水面を人間が歩いていたりすることができる。

テーマの「オー」は、無限の和を象徴するとともに、水(フランス語の水「eau」はオート発音する)をも意味する。使う水は150万ガロン(約587万リットル)、専用劇場の舞台の設備&工事費は9000万ドル。

公演の様子

 チケット購入

ベラッジオのホームページで7月上旬に申し込んだ。予約システムはなかなか良くできていて、簡単に空席状況が分かる。座席表を見ながらなるべくいい席が空いている公演を探した。すぐに回答メールが来た。

 チケット受取

宿泊したマンダレイ・ベイから会場のベラッジオまでは、歩けない距離ではないが、タクシーに乗って13ドルだった。チケット受取は、開演の1時間前までに劇場入口のチケットオフィスで受け取るルール。17時50分に到着したが、行列は2〜3組ですんなり手に入った。

受け取りにはクレジットカード(ネットで予約した際に入力したもの)と写真つきの身分証明書が必要。クレジットカードの番号で予約記録を取りだしてその場で発券するシステムのようだった。航空会社のeチケットと同じだ。チケットを発行して郵送する手間が省けるので、今後このようなシステムはどんどん増えていくことだろう。

 夕食

開演まで1時間半あるので、ベラッジオのビュッフェで夕食。ここのビュッフェはラスベガスの中でもかなり高級な方で、値段がとても高く1人31.95ドル。しかしそれにも拘わらず入口は長蛇の列。しかし待っている客はみな平然としており、この程度の行列はあたり前といった感じ。あまり待たされたら食べる時間がなくなるので、係員に陰でチップを握らせて早く案内してもらうか、あるいはファーストフードの店に作戦変更しなければならないと心配したが、列はどんどん進み、15分で案内された。

店内は新しく明るく美しい。ゴージャスな内装材をふんだんに使いました、と手すりまでもが強烈にアピールしている。料理は値段相応、いや値段以上に素晴らしい。肉類はもちろん魚介類や蟹まであり、デザートもフルーツも種類が豊富。とても全品を食べられない。1時間で充分満腹になった。芝居見物の前のように、ケツカッチンの食事には、ビュッフェスタイルは向いている。15分待たされたが、努力すれば15分で満腹になれる。

 入場

19時15分、劇場に入場。ロンドンのミュージカルと同様に、客席での飲食が禁止されておらず、飲物とバケツのような紙パック山盛りのポップコーンを持って席に着く客が目立った。

 公演

休憩なしの2時間だが、まったく飽きさせない、素晴らしい完成度のショーだった。Synchronized Swimming、Trapeze、Barge、Cadre、Aerial Hoops、Bateau、High Dive、Contortion、Fire、Russian Swingという構成で、それらに物語性をもたせてつないでいる。水を使ったサーカスと言えば分かりやすいだろうが、自在に変わるプールの形状や深さ、美しい衣装、あふれる色と照明で、実に幻想的な世界を作りあげている。もはやこれは、サーカスという次元を超越している。

肉体の妙技もさることながら、水の多彩な表情を多面的に活用している点に感心した。表面の波紋、水しぶき、緩衝材としての飛び込み、反射材としての光の演出、水をかける、雨、霧、滝など。水中からのせり上がり登場も斬新な演出で目を見張った。スキューバダイバーが泳いでいる姿でせり上がってきて、水がなくなってもばたばたしているシーンが実にコミカルだった。

また、足だけ見せるシンクロナイズド・スイミングの長い長いシーンは、どのように息をしているのか不思議に感じた。それ以外にも、長時間水に潜ってから平然と出てくるシーンが多数ある。簡易スキューバ装置(口にくわえる小型エアータンク)を水面下で使っているのかもしれない。

出演者は総勢60人くらい。水への飛び込みは多彩で高度や距離があり、息をのむ迫力。吊りものの性能も素晴らしい。高速移動で動きの精度が高い。人間の演技は、これまでのシルク・ド・ソレイユの持ちネタが少なくないが、舞台装置や演技の構成が斬新なので、新鮮なインパクトがある。さらに、水に飛び込む、飛び込んですぐに島に上がって再度演技に参加するなどの演技の幅が広がって、見応えがある。濡れた身体での演技は難しいと思うが、失敗と思われるシーンはまったくなかった。音楽はライブで、PAの音質もとても良かった。

飲食&物販

 劇場内軽食売店

売れ線はコーラと山盛りポップコーン。

 グッズショップ

入場前はそれほど混んでいなかったが、終演後は大混雑していた。プログラムは10ドル。薄いが美しい写真が並んだ写真集になっていて、よく売れていた。

備考

 チケット価格

2003年7月の段階では、料金は4種類。細分化され、少し値上げされている。 

 ホテル・ベラッジオ

ベラッジオは、ホテルの建物の前庭での噴水ショーが大人気。終演後少し待てば22時のショータイムだったので、じっくり見学した。音楽にあわせて高く低く交わりながら揺れる噴水が、実に美しかった。照明は白っぽい色一色だけだが、格調高くよい感じに仕上がっている。このホテルは、隅から隅までセンスがいい。

企画のネタとして

このショーは、ステージでのパフォーマンスが素晴らしく充実しているので、セリフがまったくいらない。ということは、英語力に関係なく、誰でも楽しめる。大人気の理由のひとつはこの点にあると思われる。実際、観客席にはアジア系や中南米系の客も少なくなかった。しかし、ショーの内容のためか、あるいはチケットの価格が高いことが影響してか、子供連れはあまり見かけなかった。

1ドル=120円とすると、ステージセットだけで108億円もの巨費を投じている。出演者のギャラも安くはなさそうだ。素晴らしい内容のショーだが、採算が取れているのか分からない。そこで大ざっぱに計算してみた。収入は、座席数1800席(座席表からおおざっぱに類推、常時満席と仮定する)・平均客単価125ドル・週に10回公演=月に40回公演とすると、月当たりの売上は900万ドル。経費は、出演者200名(1回の公演に60名くらい出演しているので、3チームあると仮定、さらにバンドは20名と仮定)・スタッフ100名・1名平均月給5000ドルと仮定すると、人件費だけで150万ドル。思ったよりも安い。劇場の家賃や電気代や水道代で月に200万ドルかかっても、毎月の粗利は550万ドル。広告宣伝費で毎月100万ドル使っても、450万ドル残る。この調子なら、20か月で、ステージセット9000万ドルを回収できる。減価償却が終わったら、月々450万ドルの黒字だ。初期投資での作品制作費やリハーサル中の経費を1000万ドルとしても、初期投資の総額は1億ドルで、22.2か月で初期投資総額を回収でき、以後の黒字は月々450万ドル。すごく儲かる。しかし、作品が当たらずすぐにこけてしまった場合は、初期投資は全額損失となる。リスクもものすごく大きい。興行の世界はやはり、成功するか失敗するかで、極端な結果が待っている世界だ。

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