視察日:1997年8月9日(土)
場所−−−タンパ市(オーランド市中心部の南西120km)
面積−−−敷地面積121ha
開業時期−1959年
営業時間−21時まで(視察日)、閑散期は18時までらしい
入場料−−大人35.95ドル、子供29.95ドル
(長期割引チケット、複数パークセット割引チケット各種あり)
遊園地と動物園がセットになった広大なテーマパーク。構成のユニークさと内容の充実度から、フロリダ西海岸で最も集客力の強い観光施設となっている。テーマは17世紀のアフリカ(暗黒時代)。もともとビール工場の従業員の厚生施設で、ビール工場は今もなお操業中らしい。年間300万人の入場者数は、全米でベスト10に入る。
土曜日のためかハイウェイはやや渋滞している場所もあり、オーランドから1時間30分。誘導された駐車場はパーク本体とはかなり離れた、野球のグラウンドのような空き地。グレイラインのバスがシャトルバスとして運行されていた。5分くらいでゲートに到着。ゲートに近い駐車場からはトラムが運行されてた。
チケット売場は40mもの長蛇の列。たいして広くないゲート前広場が、人で埋まっていた。根本的に、チケット売場が少なすぎる。さらに、クレジットカード払いが多いので、なかなか列が進まない。40分くらい並んで、ようやくチケットを購入できた。暑さのため、もうこの時点で、だいぶ体力を消耗してしまった。
ショー型のアトラクションは9つほど。一番大きいのがモロッコ宮殿劇場。数少ない冷房空間なのにキャパシティが大きい(1200席)ためか空いていて、開演15分前に入場したらガラガラだった。開演時刻になって、ほぼ客席が埋まった。出し物はアイススケートショーの「ハリウッド・ライブ・オン・アイス」。有名な映画の名場面を再現したオムニバス的ショーで、天井からグライダーに乗ったジェームスボンドが滑り降りて来たり、雪に見たてたシャボン玉が降る。「雨に唄えば」「キングコング」らしきものも登場した。
BGは面積的には7割が動物園、3割が遊園地。動物園のスペースだけでもかなり広い(多摩動物園よりも明らかに広い)ため、パーク全部を回るには1日ではとうてい足りない。動物展示の目玉はセレンゲティ草原(ヌーの巨大な群の季節的大移動で有名なアメリカの草原地帯、同名のI−MAX映画もある)というゾーン。人間が立入禁止の広大な草原に、キリンやシマウマ、ガゼール、サイ、ダチョウなどが放し飼いにされている。その面積は、なんと60エーカー=2400アール=24ha、つまり600m×400mの原っぱ。
これだけ広いと、向こう側はおろか、真ん中近辺にいる動物ですら、双眼鏡がないと良く見えない。そのため、セレンゲティ草原の動物を眺められる交通機関的ライドが、モノレール、ロープウェイ、鉄道と、3種類用意されている。
1周15分で、セレンゲティ草原をのんびり一回りする。運転手のおじさんはガイドを兼ねていて、いろいろ説明してくれる上に、見どころではゆっくり走ってくれるなど、サービスがいい。上野公園と同じ懸垂型モノレール(線路は車体の上にある)なので、水平から下方向の眺めが良く、死角が少ない。そのため、草原を広く見渡すことができて、なかなか楽しかった。15分待ちだった。
モノレールよりも待ち時間が長く、30分待ち。園内の奥へ連れていってくれるのだが、この暑さの中、そこから歩いて戻ってくる元気がなかったので、乗らなかった。往復乗車することも考えたが、帰路の待ち時間を係員に聞いても「分からない」と言うので、やめにした。セレンゲティ草原近辺ではモノレールとほぼ同じようなルートだったので、眺めも似たようなものと思われる。
乗った駅に戻ってこられるので、30分待ちだったが並んだ。途中の2つの駅に5分づつ停車して、1周40分。走行スピードは非常に低速で、これで動物がたくさん見られれば文句はないが、見えるのは柵や木立ばかり、たまに動物がチラリと見える、という程度。疲れていたので寝てしまった。
ゲートに一番近い鉄道の駅(エジプト駅)のそばに、セレンゲティをジープで回るサファリツアーのデスクがあった。別料金で大人12ドル、子供10ドル。安くはないが、すでに売り切れていた。セレンゲティの広大な草原は、歩いては入れないので、このツアーが動物たちも最も近くで見られるアトラクションとなる。切符は午前中早い時間に売り切れてしまう、とのこと。
セレンゲティ草原の一角と、その隣に、動物を集めて展示している動物園的なゾーンがある。セレンゲティ草原の一角の方(エッジ・オブ・アフリカ)は、1周30分か1時間くらい。ライオンやカバやワニがいた。仕切のガラスのすぐ脇で大きなライオンが寝ていて、格好の記念写真ポイントとなっていた。こーいう時の客の行動は、白人も黒人もアジア人も変わらない。少し怖がる子供をガラスの前に立たせて、うれしそうに親が写真を撮っていた。
その隣のゾーン(ナイロビ)には、ゴリラやアフリカゾウがいて、こちらも1周30分か1時間くらい。
珍しい動物としては、白いベンガル・タイガーがいるが、場所は園内の最奥部なので行かなかった(鉄道で通りかかったが見えなかった)。ベンガル・タイガーやオラン・ウータン、大トカゲなどは、動物園的なゾーンではなく、遊園地的なゾーンの一角で展示されていた。
ジェットコースターの充実したラインナップも、このパークの魅力のひとつとなっている。気合いの入ったコースターは2つ、高くて長いバンディットのMONTUと、大きくて速いKUMBA。ビッグなスケール感が、いかにもアメリカらしい。待ち時間はともに45分くらい。そのほかにループコースターが2つ、SCORPIONとPYTHON。これは日本にあるコースターとほぼ同じスケールに見えた。
鉄道の線路は、動物を見せるよりも、この4つのコースターを見せることを重視してコース設定しているようで、至近距離からコースターが見えて、絶叫も良く聞こえた。新しいMONTUとKUMBAに至っては、近づくだけでは迫力不足と思ったか、鉄道の線路の上をコースターが疾走する設計になっている。「動物ではリピーターを獲得できないが、コースターならリピーターを獲得しやすい、ならば動物を見に来た客にもコースターをアピールしよう」とこのパークの経営者は考えた、と私は推理する。
コースターのほかには、滝下りびしょぬれライドのタイダル・ウェイブと、川流れびしょぬれライドのリバー・ラピッズの列が長かった。
フロリダの夏は暑くてめまいがするが、この日のBGは特に暑かった。全然風が吹かず、園内には日陰が少ないので、外を歩いているとすぐに体力を消耗してしまった。これだけ暑ければ、アフリカから連れてきた動物たちは、元気に育つことと思われる。もしかしたら、フロリダ西部はオーランド(フロリダ中央部)よりも暑いのかもしれない。びしょぬれライドが混んでいたのは、この気候も一因と思われる。
ガイドブックには「アンハイザー・ブッシュ社のテーマパークではバドワイザーの試飲ができる」と書いてあるものもある。しかし園内で配布されていたガイドマップやダイニングガイドには、そのようなことはどこにも書いてなかった。スーベニールブックには、「パーク見学の後には、ビール工場の見学と、ホスピタリティ・ハウスでのビールサービスをどうぞ」と書いてある(写真参照)。行かなかったので、真相は謎。1993年の頃はやっていたけれど、今はやっていない、ということなのかもしれない。
レストランの数は、客の入りの割には多くはない。ダイニングガイド(入り口配布の紙)に載っているレストランはファーストフードも含めて9軒ほど。インドア・シーティングと表示された店が、冷房ありと思われるが、その数は3軒のみ。
その中で、一番高そうなレストランがクラウン・コロニー・レストラン。ダイニングガイドに「涼しく快適にお食事を」と書いてあったので、迷わずここに決めた。混んでいそうだが、「冷房の空間で待つのならば、1時間くらいは待ってもいい(涼しければ、待っている間に、たぶん体力が少しは回復する)」と考えた。
意外に空いていて、13時半頃に入ったら、30分待ちと言われた。涼しいウェイティングスペースで、何とかイスにも座れて、「ほー涼しくて幸せ、ここでなら30分待ちなんて全然苦ではない」となごんでいたら、15分で名前を呼ばれた。レストラン空間は、ウェイティングスペースよりもさらに冷房が効いていて、うれしかった。
案内されたテーブルは、セレンゲティ草原を見渡せる素晴らしい眺めの窓際で、おそらく店内で1番か2番の席。白いテーブルクロス(ビニールではなくて布)がかかり、ウェイターもきちんと姿勢を正して仕事をしていて、予想以上にきちんとしたレストランだった。
ビールはもちろん、ブッシュガーデンの経営元のアンハイザー・ブッシュ社のバドワイザー。汗ダラダラの過酷な暑さから冷房の効いた部屋に逃れて、窓からは草原にキリンやシマウマが見えて、あーやれやれと思いながら、ヒリヒリした喉に流し込めば、どんなビールでも美味しいものだが、ここで飲んだバドワイザーは、これまでに飲んだバドワイザーの中で最も美味しかった。
混んでいたためか、食べ物が出てくるのにやや時間がかかったが、窓の外の風景を眺めていればいつまでも飽きない。ウェイターたちは小走りに満席の店内を巡っている。私たちの担当のウェイターは、学生バイトのようにも見える若さだが、身体は体育会系、腕は見事に太く、何枚ものお皿をまとめて運んでいる。強いのは筋肉だけではないようで、5つか6つのテーブルを担当していたが、各テーブルの状況がしっかり見えている模様。私のビールが空いたら、テーブルに空き瓶を置くと同時にやってきて、「もう1本いかがですか」とにっこり笑う。そのこめかみには汗が筋になっていた。こう迫られては、たとえもう飲めないくらい飲んでいたとしても、もう1本頼まざるを得ない。オーダーするとすぐに持ってきて、私のグラスに注いでくれた。その胸元は、かなり息が切れていた。「この客は、私のサービスで、必ず満足させてやるぞ」という気合いを感じた。
料理の味は3人でビール2本を含めて31ドルほど。食べ物はこの値段ならまあこんなものかな、もう少し美味しくてもいいかな、という感じだが、ビールのお代わり以降もウェイターは精力的というか、情熱的とも言えるサービスを展開してくれたので、2時間近くかけて(冷房空間での身体のダメージ回復という意図もあったので)、ゆったりといい気分で食事を楽しむことができた。そのため、私としては破格のチップ、16.13%に当たる5ドルを置いてきた。もっとあげても良かったと思う。
このウェイターは、入り口から最も奥のエリアを担当していたので、エース級だったのかもしれないが、このような腕利きのウェイターのサービスを受けると、「日本のファミリーレストランも、ウェイター/ウェイトレスはチップ制にすべきだ、デニーズ以外のファミレスには、もっとまじめにウェイター/ウェイトレス教育をしろ!」と思ってしまう。
14.5ドルのビデオ(30分もの)と、3.99ドルのスーベニールブック(値段の割にページ数が少ない)を購入。内容は動物が中心だが、ライドも大小取り混ぜてかなりの種類を紹介してる。なお、ビデオ、スーベニールブックともに4年前の1993年版のため、1996年5月にオープンしたエジプトのゾーン(ぶら下がりコースターのMONTUがある)が紹介されていなかった。
ペニーつぶしは、ここでは発見できなかった。
いくつかの動物の前では、説明員が解説をしていた。また、ところどころに動物解説パネルがあったり、子供向けの動物に関するクイズが出題されていて、教育的な側面にもこのパークは力を入れているように見えた。
パークの経営は、バドワイザーを作っているアンハイザー・ブッシュ社であることもあって、WDWのパークとは異なり、アルコールが販売されていた。ブランドはバドワイザーのみ。
BGに隣接して、プールパークのアドベンチャーアイランドがある。午前中は人出が少なかったが、夕方は、BGの暑さにこちらへ避難した客が少なくなかったようで、けっこう人が入っていた。
通常の入場料は大人35.95ドル、29.95ドル。園内のゲストリレーションで買えば、翌日のチケットは9.95ドルになる。また、2ドルか3ドルを割り引くクーポンもあちこちで見かけた。
そのほか、いくつかのパークの入場券をセットしたものも種類が豊富だった。非WDWのパーク連合体が構成されているかのような感じである。
オーランド・フレックス・チケット−−−BG、USF、SW、WWの4パークに連続した10日間入園可、大人125.95ドル、子供99.95ドル。この価格なら、4つのパークにそれぞれ1回入園するだけで元が取れる。
アドベンチャー・パスポート−−−BGとSWの2パークに連続した5日間入園可、大人74.58ドル、子供61.93ドル。3回入園すれば元が取れる。視察日はキャンペーン中で、それぞれ65.95ドル、54.5ドルに値引きされていた。
タンパチケット−−−BG、フロリダアクアリウム、ローリーパーク動物園、そしてMOSI(何の略だか不明)に1回づつ入園可。大人54.71ドル、子供39.64ドル。
サーフィンサファリ・チケット−−−BGに隣接したプールパークのアドベンチャーアイランドに1回づつ入園可。大人34.19ドル、子供38.77ドル。
さらに年間パスポートも、BG単体や他のパークを組み合わせたものなど、数種類があった。
BGの近くにあったテーマパーク「ボードウォーク&ベースボール」は、不振のため、数年年前に閉鎖された。1988年頃に、「1992年にスペイン・タラゴナ(バルセロナの南)にブッシュ・ガーデンを開設する(194ha、事業費3億ドル)」という計画があったが、その後の進展状況は不明。
歩けば歩くほど、園内は絶望的に広かった。気候が良い季節であっても、この広さでは1日ではとうてい回れない。ここはアフリカの大地なのだから、1日ですんなり回れる規模ではいけないのであろう。
パークの広さや、内容の充実度(見学所要時間の長さ)、客の入り、レストランでのサービスなどの点では、BGはメジャーパーク級である。しかし、長蛇の列のチケット売場や日陰や冷房空間が少なく体力消耗の激しい会場設計など、欠点も少なくない。荒削りで完成度が高くないメジャーパークと言うべきか。
また、パークの構成も、本来は動物園的パークだったのだろうが、だんだんと集客のために動物園とは無関係にびしょぬれライドや大型コースターを導入したため、なんだか良く分からなくなっている。客層も動物園的なゾーンと遊園地的なゾーンでは明らかに違う。情緒的な「動物を眺める」という楽しみと、刺激的な「コースターで絶叫する」という楽しみが、入り交じって存在している。若者はスリルライド、高齢者や子供連れは動物園ということで、ターゲット別にきちんと対応している、と言えばその通りだが、パーク全体としてのテーマ性や統合感は希薄であるため、企画を仕事としていて、論理性を重んじながら企画書を書いている私としては、このようなやり方は許せない気がする。ビジネスとしては、正しい選択であったのかもしれないが・・・。
このパークから、スリルライドを撤去したら、客数は一気に減るだろう。そうなると経営の危機に陥ってしまう可能性が大である。しかし、そのようになれば、きっと落ち着いていて混まなくていいだろうなあ、とも思う。動物園の部分だけでも、BGは充分に魅力的なパークだ。反対に、スリルライドだけのパークとした場合は、西海岸のマジックマウンテンやグレートアメリカなどのライドパークには量的に全然かなわない。
現時点でもユニークな構成になっているので、今後どのような姿になっていくのか、楽しみなパークだ。また、WDWの4つ目のメジャーパークとしてオープンしたアニマル・キングダムとの客の取り合いにどのように対応するかも見ものである。アニマル・キングダムの完成後は、オーランドに滞在していて120km離れたBGまで足を伸ばす人は、間違いなく減少するであろう。
参考資料 −−− スポンサー企業一覧(52kBのJPEG画像)