視察日:1997年8月10日(日)
場所−−−ウインターヘイバンの町(オーランド市中心部の南南西70km)
面積−−−敷地面積90ha
開業時期−1932年
営業時間−19時まで(視察日)、混雑期(冬期)は21時まで
入場料−−大人29.5ドル、子供19.5ドル、シニア(55歳以上)24.5ドル
フロリダのテーマパークとしては最も長い歴史を持つ。ベースはフロリダの温暖な気候を生かした熱帯植物園で、これに情緒を損なわない程度の遊園地的要素が付加されている。テーマはアメリカ南部の伝統的なホスピタリティ。サイプレスとはこの近辺に見られるイトスギ(樹齢数百年から1600年)のこと。
オーランドからはクルマで50分の距離。最後は田舎道をトコトコ走り、到着前から寂しい雰囲気が漂う。無料の駐車場はこじんまりとしていて、クルマはパラパラ。ゲートにけっこう近い場所に止められ、BGとは雲泥の差、この日も暑かったのでうれしかった。
チケットブース、ゲートともにこぶりで、おみやげ物屋さんの軒下を借りたような位置にある。テーマパークと言うよりは、日本の観光地にある寂しげな古い観光施設、たとえば群馬の日本スネークセンターとか、何やら観音とか、その世界。付近に客の姿が全然見えないあたりも、良く似ている。本当に営業しているのだろうかと、少々心配になった。
そのへんに置いてあるクーポンブックに、CGの割引クーポンを見つけたので、しっかり切り取って持っていった。クーポンには5歳以下無料とあり、さすがに客集めに苦しんでいるマイナーパークだなと思っていたら、チケット売場には何と「キャンペーン中、6〜12歳も無料」の看板が出ていた。うーん、ここまで集客に苦しんでいるとは。「がんばれ」と声をかけたい気持ちになった。
案の定、チケットブースは無人。どうしたものかと店員がいるおみやげ物屋さんの方を見やっていたら、おばさんの店員が急ぎ足で出てきて、ブースの中に入って、チケットを売ってくれた。徹底的に人員が合理化されている。
クーポンで大人も3.25ドルも引いてもらえたため、家族3人で55.66ドル。WDW3大パークやUSFのほぼ半額。これでおもしろさがWDW3大パークやUSFの半分よりも上であれば、コストパフォーマンスでCGが上回ることになる。
チケットを入手したら、おばさんがゲートに出てきて、マップ&スケジュール表を開いてある地点を指さしながら、「このショーがもうすぐ始まる、急いだ方がいい」と教えてくれた。きわめてフレンドリーなサービスである。そうまで言われたら、行かざるを得ない。とぼとぼ歩いていたら、しっかり見張られていたようで、後ろから「ハリーアップ!」の声が飛んできた。
園内に入ると、掃除係とおぼしきおばさんまで、「次のショーはこっちだ」と手招きしてくれた。示された通りに進むと、けっこう大きなスタンドがあった。人影はまばらで、総数で50人くらい、客席の10%も埋まっていない。マップを見ると、ここはスキースタジアムで、1日3回水上スキーのショーが行われるのであった。
ピエロが登場し、ショーがはじまった。コミカルな構成だが、あまり洗練されていない。大した技も出ない。出演者もそう多くはない。でも、出演者はみな一生懸命に演じている。その熱意が客席に伝わってか、または自分が拍手しないと他に誰も拍手しないかもしれないという強迫観念からか、途中何回かのハイライトシーンでは、観客はみんな一生懸命拍手をしていた。拍手が聞こえると、出演者はうれしそうににっこりした。スケールが小さいため、舞台(水上)と観客席の一体感がある。広々と座れて、のんびり見学できたし、これはこれでまた味があるなと、好感を持った。
ショーが終わって、マップ兼ショー・スケジュールを見ると、大きなショーはここの他にはアイスショーとサーカスぐらい。この3つのショーは、重ならないようにスケジュールが組まれている。
次の大きなショーは、30分後のアイスショー。水上スキーショーを見終えた観客は、全員がそちらへ向かってのんびりと移動を開始する。良く見ると、若者がほとんどいない。小さな子連れや、高齢者ばかり。庭園から進化して、現在も刺激的なアトラクションは何一つない情緒的・牧歌的なパークなので、予想はしていたが、その通りだった。
アイスショーは、「モスコウ・オン・アイス・ライブ!」とタイトルはかっこ良いが、やはり小ぶりで、さらに演出が少々古くさい。10年かそれ以上前から全然リニューアルしていないものと思われる。BGのアイスショー「ハリウッド・ライブ・オン・アイス」には遠く及ばない。ハリウッドとモスクワでは、現実社会では経済力などを考慮すると最初から勝負にならないから、そういう意味では、ここのアイスショーのタイトルは、決して誇大広告ではないのかもしれない。
良かったのは、客席がガラガラで、正面の前の方で、その前の2列が空席という、とっても眺めの良い場所に座れたこと。そして、水上スキーのショーと同様に、出演者がみな、一生懸命であったこと。
小1の娘は、先ほどの水上スキーも、このショーも、とても楽しそうに見入っていた。このくらいの年齢なら、WDWとかUSFのショーには遠く及ばないレベルのショーでも、充分楽しめるものと思われる。それがかえって、少しうらやましい気もする。
先ほどと同様に、ショーが終わると観客はほぼ全員が、30分後のサーカスのテントへ向けて移動を開始した。そう大きくはないテントの中で、真ん中の四角い空間を取り囲むように、4〜5段の仮設の観客席が並んでいる。開放型のテントなので、特大の送風機が回っていた。
ショーの内容は、予想通り地味なもの。大がかりなシカケものはなく、動物の芸や人間の力技、そしてジャグリングなどのパフォーマンス。出演者は良く鍛錬されていて、けっこうハイレベルな芸を見せるのだが、いかんせん演出に工夫がなく、見る者にあまりインパクトを与えられない。そのため、拍手が最も多かったのは、ピエロの即興似顔絵描きだった。
これで大きなショーはおしまい。園内をぶらぶらお散歩した。生きた蝶の展示館ではたくさんの蝶が乱舞していて、次々と頭や肩に止まり、娘は大喜びだった。オウムを指に止まらせて説明をしている係員もいた。回転しながら上昇するライドのアイランド・イン・ザ・スカイは、SWでは別料金だったが、ここでは追加料金なし。当然待ち時間はなし。というよりも、誰も乗らないのでずっと止まっていて、私たちが行くと動かしてくれた。上空から眺めると、パークは大きな湖のほとりに位置していて、先ほどの水上スキーの舞台もこの湖の水面で、全体的に庭園になっていて、その中にぽちぽちと建物がある、という感じ。
園内は、ひっそりと静かで、BGMもない。時折、鳥の声が聞こえるくらい。日曜日だというのに、閉まっているショップが多い。どうも夏は暑すぎるので、閑散期となっている模様。営業時間も、冬の方が長い。でもこのパークは木が多く、日陰が多いので、気温が高くてもしのぎやすい。また、客が少ないので、精神的にもたいへん涼しい。快適性の点では、WDW3大パークやUSF、SW、BGなどよりもはるかに上。
ミュージック・エンターテインメントとして、小さなステージの上で、エルビス・プレスリーのそっくりさんのライブをやっていた。出演者はひとりだけ、カラオケにギターと歌をかぶせてのミニミニコンサート。あまり本物に似ていないそっくりさんだったが、10名くらいの観客(主として高齢者)は一生懸命拍手をしていた。心なごむ風景であった。
園内のあちこちには、サザンベル(すそがふわっとふくらんだドレスの、アメリカの南部美人)がいて、ゲストとの記念写真に応じてくれる。このサザンベルが、パークのキャラクターにもなっている。
関連して、女の子をサザンベルに仕立てるジュニアベル・ブティックもあった。通りがかったらちょうど、大人のサザンベルにエスコートされて、こぶりなサザンベルに変身した女の子が出てきた。通りかかる観光客に次々に写真を撮られて、少々恥ずかしそうにほほえんでいた。あー、何てのどかなところなんだろうと思った。
ライド系のアトラクションは、先ほどのアイランド・イン・ザ・スカイのほかに、もうひとつだけ、ボタニカル・ボート・クルーズがある。スキースタジアムの隣の乗り場に行ってみると、係員が「水上スキーのショーは見たか」とたずねてきた。「もう見た」と言うと「ナイス・ショーだからもう1回見てはどうだ」と言う。詳しく聞くと、このボートの航路と水上スキーショーの舞台(ともに湖のほとりに近い一角)は重なっていて、あっちのショーが終わらないとこっちのボートは出発できない、とのこと。
でも時計を見ると、ショーはあと10分くらいで終わり。今から行っても正味5分くらいしか見られないし、ちょっと疲れていたので、「ここで待つ」と答えた。そしたら、このボートに乗れ、と案内された。それから10分間、ボートの最前列に座って、プカプカ待った。チラチラと、水上スキーのショーも見えた。
やがて歓声が上がって、どうもショーが終わった様子。しかし、ボートは全然出発する気配がない。日陰だし、時折涼しい風が抜けるし、なかなか快適なので、まあそのうち出発するのだろうと、インド的な気持ちになり、のんびり待った。眠くなってきた。
水上スキーのショーが終わって10分くらいしたら、他のゲストが1組やってきて、ボートの最後尾に乗った。やっと船外機のひもが引っ張られて、エンジンが始動した。真ん中3列は、空席のまま。
ボートは湖のほとりをどんどん進み、500mくらい行ってから、森の中の水路へ入っていった。係員が大きな声でいろいろと説明してくれたが、知らない固有名詞(たぶん植物の名前)が多く、何を行っているのかほとんど分からなかった。いろんな植物があって、あちこちで花が咲いてる。うっそうとした森の中、水路が細く長く続いていて、新鮮な風景。アマゾンの奥地を探検する、という感じ(木の種類が違うのだろうけど)。
途中、急に森が開けて草原が広がった。きれいに刈り込まれた広い美しい草原の真ん中には、日傘を差したサザンベル。ゆったりとに手を振っている。すごく美しい風景がいきなり登場して、驚くやら見とれるやら感心するやらうれしいやら、非常に複雑な感動であった。サイプレスガーデンでいちばん印象的なシーン。うまく演出すれば、「風景を見せる」というだけでも、観客に強力なインパクトを与えられるものだということが、良く分かった。
しかし、あのサザンベルは、1時間に1回か2回ぐらいしか運行されないボートの乗客に手を振るために、猛暑の中重くて暑そうな服を着て、草原の真ん中で待っていたのだとすると、まことにお気の毒な仕事である。観客から死角になる部分に冷房付の控え室があり、ボートの接近に合わせて持ち場に出てくる、というシステムかもしれないが、それでも100m以上歩かないと草原の真ん中にはたどり着かない。木が茂っている中の草原だから、風は吹かないので、日傘を差していても、かなり暑いはずだ。「いろいろと困難もあるが、お客さんはきっと喜ぶから、草原のサザンベルはがんばって続けよう」とパーク経営者や運営スタッフたちが考えたのだと思う。その心意気や、まことに素晴らしい。
このボタニカルガーデンを歩いて回る散歩コースも設定されていたが、ボートからの風景とたいして変わらないだろうと考え、パスした。
パーク内で食べても良かったのだが、たいしたレストランはないし、それ以前にレストランは閉まっているところばかりに見えたので、退園してパークの隣のウォールマート(スーパー)へ行った。予想通りジャンクフードのフードコートがあった。ピザがなかなか美味しかった。
ビデオとスーベニールブックを、それぞれ2種購入。ビデオは昼編14.99ドルと夜編6.99ドル。35分ものと10分もので、それぞれ1996年版と1997年版。マイナーパークなのに予想外にビデオが新しかった。でも、このくらいの長さなら、1本にまとめてくれた方が助かる。スーベニールブックは、パーク紹介編と植物紹介編の2種、それぞれ3.99ドル。
全部買うと、けっこうな金額になるが、このパークはもしかしたらこういった物販の利益で生きながらえているのかもしれないと思い、だったら協力しなければならないと考えて、全部買ってきた。中身は、まあ、こんなものでしょうという感じ。
ここでは発見できず。
ガイドブックによっては、アンハイザー・ブッシュ社の経営なので、ビールの試飲ができる、他のアンハイザー・ブッシュ社のテーマパークとの共通チケットが売られているなどと書かれているが、現場にはそのようなものはなかった。
CGは、一時はアンハイザー・ブッシュ社の経営であったのかもしれない。しかし、アンハイザー・ブッシュ社が手放した、とすると、サイプレスガーデンの未来は明るくはないのかもしれない。
刺激的な楽しみはいらない、のんびりと人の少ないところで快適に、そしてあくびが出ない程度に楽しく1日過ごしたい、という人には、素晴らしいテーマパーク。小学校低学年とかそれよりも小さい子供がいる場合、または高齢者がいる場合は、大混雑のメジャーパークで途方に暮れるよりも、サイプレスガーデンで静かな1日を過ごした方が、心地良い疲れを得られるに違いない。パークの雰囲気は、向ヶ丘遊園や読売ランドに近い。
私もお金持ちになって、リタイヤ後はフロリダで暮らせるようになったら、ここの年間パスポートを買って、月に1回くらいは花やサザンベルや見て回りたいと思う。年間パスポートは、シニア49.95ドル、大人59.95ドル、子供(6−12歳)29.95ドルだった。集客力の弱いテーマパークの場合、2回か3回の来訪で、年間パスポートの元を取れるような価格設定が一般的であるが、ここは2回で元が取れる。
とにかく客数が少ないので、運営ノウハウが高いのか低いのかは良く分からないが、係員はとてもフレンドリーで、ショーの出演者も一生懸命だった。みんなして「このパークが好きだ、だから客は少ないけど、私はがんばるんだ」という思いで働いているように見えた。
参考資料 −−− スポンサー企業一覧(70kBのJPG画像)