スペースシャトル発射見学

視察日:1997年8月7日(水)


イベントの概要

場所−−−ケネディスペースセンターの敷地内外
        (オーランド市の中心部から東へ80km)
入場料−−無料(カーパスで見学の場合)

イベントの特徴

KSCでは、スペースシャトルの発射を公開している。見学の方法は、ケネディスペースセンターの敷地外で見る、敷地内で見る(事前にカーパスを申請し取得しておく必要がある)、敷地内の見学ツアーに参加する(1人10ドル)の3種。

ショー

 カーパスの申請

一度はスペースシャトルの打ち上げを見てみたいと思い、NASAとかKSCのホームページで調べたら、今回の視察スケジュールではスペースシャトルの打ち上げがなかった。しかしその後、打ち上げが延期になったミッションがあり、「これはもしかしたら、向こうからこっちの予定に歩み寄ってくれるかも」と期待していたら、まさにその通りになった。STS−85というミッションである。

そこで、ホームページで見学方法として紹介されている3種類の方法の中から、第1希望・カーパス、第2希望・見学ツアーと考えて、カーパス希望のエアメールを出してみた。しばらくしたらカーパス送付予告状が届き、そして予告状に書かれた通りに打ち上げの2週間前くらいにカーパスが届いた。

 たどり着くまで

届いた「カーパス」には、「8月7日の午前10時41分発射、ゲートオープンは4時間前、ゲートクローズは1時間前、2時間前には到着しなさい」などと書いてあった。そこで、まだ暗い5時半に起床し、まだ暗い6時15分頃に出発。近くはないが、道は簡単で、7年前の記憶も少し残っていたので、安心して走れた。こんな時間ではさすがにハイウェイがガラガラで、ずっとクルーズコントロールで、70マイルくらいで巡航できた。

ホテルを出て1時間くらい、もうすぐKSCの敷地に入ろうかという地点で、10分くらい渋滞。警官数名が車線をひとつに絞り、KSCの敷地内に入れるクルマ(カーパスを持っている、など)と入れないクルマを振り分けていた。ここで3/4くらいのクルマは入れない方に振り分けられ、側道に消えていった。カーパスを持っている私たちには、警官が棒で「こっちへ進め」と入れる方の道を指し示してくれたが、その棒を振るアクションがまるで映画のようにかっこ良かった。日本の道路工事の誘導係とは雲泥の差だ。

その後、どんどん進むと、駐車場まであと5マイル、3マイル、1マイル、半マイルと看板が出て、誘導されたのはKSCのビジターセンターからしばらく南へ行った地点、左右にラグーンが広がる一本道沿いの草むら。7列くらいに分かれて、縦列のまま前のクルマに続くようにして草むらに乗り入れた。前のクルマが止まったら、こっちも止まって、そこが駐車位置となる。前も後ろも、やや車両感覚を広めに取りながらも他のクルマがいる。横もゆったりとはしているが、クルマで抜けられるほどは広くはない。ということで、一度止めたら、途中で帰ることは不可能な状況となった。

 観覧席

観覧席は、特に指定されていないが、人が集まっているのは駐車スペースの北側、ラグーン沿いの幅10mくらいの草むら。レジャーシートや毛布、巨大タオルなどが敷かれて、デッキチェアやビーチベッド、日傘なども持ち込まれている。草の長さは5センチほどで、そのまま座るとチクチクする。たまたまクルマに荷物をたくさん積み込んでいたので、トランクから新聞とタオルを探し出して、重ねて敷くと、まあまあの座り心地になった。

さて、スペースシャトルはどこにあるのかなと眺めても、良く見えない。望遠レンズが向いている方をじっと見ると、何か小さな建物がぼんやり見える。しかし、少しモヤがかかっていて、はっきりと形までは分からない。

この時点で8時前。まだ発射予定時刻まで3時間近くある。気温はすでに高くて、座っていると5分で汗が出てきた。クルマに戻ってクーラーをかけて涼もうかと思ったが、まわりを見渡してもそのようなことをしている人はいない。たまにクルマの中にいる人がいるが、エンジンは切って、窓を開けて、赤い顔をして汗をかきながら寝ている。国民性の違いなのか、それともアイドリング状態でクーラーで過ごすことが地球環境問題的に問題ありという意識が浸透しているのか、とにかく「郷に入らば郷に従え」と言うので、私たちも日なたでジリジリ焼かれていた。

 車内での休憩

1時間前あたりから、スピーカーで流されている交信のやりとりが忙しくなってきて、何を言っているか良く分からなかったが、何となく臨場感が高まってきた。さすがにこの頃から、あまりの暑さにクルマのエンジンをかけて、車内でクーラーで涼む作戦に切り替える人が出てきた。

30分前に、隣のクルマのトランクに座って赤い顔で盛大に汗をかいているお姉さんに、「この放送では何を言っているのでしょうか」と聞いたら、「発射はオンタイム、みんな順調」とのこと。しばし雑談して、「日本から見に来た」と言ったら、たいへん驚いていた。「あんまり暑いから、涼しいクルマの中で待とうかと思っている」と言ったら、意外にも「それはいい方法だ」みたいな答えだった。「地球環境的問題もさることながら、健康問題も大切」ということなのだろうか。それとも「このくらいで音を上げて、根性なしめ」という皮肉だったのだろうか。少し悩んだが、終始お姉さんはにこやかな笑顔だったので、きっとこのお姉さんはスペースシャトルの発射見学を兼ねて発汗ダイエットをしているだけで、周囲の人にそれを強制するつもりはないのだろうと推理し、安心してエンジンをかけ、クーラーを全開にした。しかし、強烈な日差しでクルマの中がチンチンに暑かったので、なかなか涼しくはならなかった。

 スペースシャトル発射

10分前、クルマを出て観覧席へ。実況放送がかなりせわしなくなっていた。相変わらず、モヤがかかっていて、スペースシャトルはどこにあるのか良く見えない。うーん、これでは豆粒ぐらいにしか見えないのかなあと心配になってきた。

20秒前からカウントダウン開始。周りの人たちも声を合わせる。5、4、3、2、1、ゼロ、ちょっと間があって、遠くに赤い炎が輝いた。その上にスペースシャトルの形も、小さくおぼろげに豆粒ほどの大きさで見えた。巨大な花火がゆっくりと上がっていく。今まで見たことがないような、きれいな炎の色。数秒で雲の中へ、観客からはブーイング。しかしすぐに雲から出てきて、みんな「イェーイ」。白い煙の尾を引いて、ゆっくりゆっくり上昇していく。

注)この写真はイメージです。

発射からだいぶしてから、音が飛んできた。最初はまさに爆発音、空気を振動させ全身の肌を揺らした。そして続く図太いうなるような低音。どちらも、今まで聞いたことがないような音だ。特に爆発音は、想像以上の音量だった。この距離でこの音量とすると、いったい発射台の近辺はどのくらいの騒音なのか、想像もつかない。そして続く低音は、映画やテレビで見たときの発射音とはかなり違い、このあたり一帯が揺さぶられているかのような音だった。炎が見えてから最初の爆発音が伝わってくるまで10秒以上あったので、観覧席から発射台までは5キロくらいはあったのだろう。

注)この写真は、私が撮影した本物です。

スペースシャトルは次第にスピードを増して、やや弧を描きながら上っていく。良かった、たぶん成功したのだろう。やがて炎しか見えなくなり、その炎も上空で視界から遠ざかっていき、空には長い長い煙の白い尾だけが残った。

打ち上げ成功の瞬間に、ギャラリーがみんなして「イェーイ」と大喜びをするのではないかと予想していたのだが、どこまで上がれば成功なのか、この観覧席で見ている分には良く分からない。そのため、成功をみんなで喜ぶ瞬間というのはなかった。

 退却

スペースシャトルが見えなくなると、ギャラリーたちは一斉にクルマに移動した。しかしこの台数で、すぐに動くはずはない。移動するためというよりも、涼むためにクルマに入る、という感じ。案の定、30分くらいはクルマはぴくりとも動かなかった。すぐにはクルマに入らず、まだ日光浴を続けている人たちもぽちぽちいた。

たっぷり車内が涼しくなってから、ようやく少しづつ動き始めた。草むらから表通りに出るには、決まったルートがあるのではなく、みんな適当に緩い斜面を上って表通りを目指す。私たちはたまたま前方が開けたので、すんなりと表通りに鼻先をつける場所まで行けた。でも、表通りもクルマでぎっしり。日本だと、こういう状況だとなかなか本線には入れてもらえなくて苦労するのだが、さすがアメリカのドライビングマナーの良さは、このような混乱時でもいつもと同じ。表通りが動き始めたら、すぐに列に入れてもらえた。そのため、私たちも、その後入ってきたクルマをガンガン入れてあげた。表通りでゆるゆる動きだったのはほんの数分のことで、すぐにすんなりと流れ始めた。

飲食&物販

 仮設売店

朝食抜きでやってきて、食べ物や飲み物をほとんど持ってきてなかったので、観覧席の草むらに到着する前に、ビジターセンターでパンと飲み物を買った。でも、すぐに食べ飲み尽くしてしまったので、売店に飲み物を買いに行った。草むらの観客席にトレーラー型の仮設売店が設置されていて、数人が並んでいた。ノンシュガーの飲物が欲しかったのだが、ボトルド・ウォーターがあってうれしかった。

商品は、飲物数種類のほかには、スペースシャトル関連の玩具数種と、ポテトチップなどのスナック類が数種。子供の暇つぶしにちょうどいいので、おもちゃのコーナーはいつも親子連れで賑わっていた。

混雑状況は、観覧席に到着してすぐに買いに行った時は行列はほとんどなかったが、発射の1時間前に行ったら長蛇の列で、20分くらい待たされた。飲み物は多すぎるぐらい、事前に用意していくのが正解である。トイレは、仮設だが、車椅子用のまでしっかり用意されていて、アメリカらしいなと感じた。

 プロジェクトTシャツ購入

帰路、ビジターセンターが通り道だったので、スペースシャトル発射記念の名物土産のプロジェクトTシャツ(今回の作戦名「STS−85」の文字があしらわれた期間限定販売Tシャツ)を買うべく立ち寄った。しかしビジターセンターは、どこもかしこも大混雑。バスで基地内を巡るツアーのチケットカウンターも長蛇の列だった。ここの見学はまた後日とすることにして、今日しか買えないかもしれないプロジェクトTシャツをゲットすべく、売店に突撃した。

 ビジターセンターのレストラン

帰路立ち寄った時は、レストランも大混雑していた。

備考

 仮設スタンドの観覧席

後日KSCを再訪問した際のバスツアーの途中で、カーパスで入場できる草むら観覧席よりも発射台に近い場所に、観覧席があるのを見かけた。ここならかなり大きく見えそう。クルーの家族とか、NASAの関係者専用かもしれない。

 見学ツアーの観覧席

発射当日の朝、ビジターセンターには、見学ツアーを利用すると思われる人たちがたくさんいた。あの人たちは、いったいどこで発射を見たのだろう。見学ツアーは有料なので、無料のカーパスよりも良く見える場所であったのかもしれない。

 見学ツアーの申し込み方法

KSCのホームページの情報によると、電話か手紙で申し込み、1週間前にKSCに本人が出向いて(代理人は不可)、窓口で1人10ドルを払って購入する、という条件である。

企画のネタとして

かなり遠くから、それもほんの数秒しか見られないスペースシャトルの発射を見るために、半日以上を費やして、さらにダラダラ汗をかいてしんどかったわけだが、満足感はなかなか大きかった。やはり本物の炎の色や、本物の発射音は、映画やテレビとは違う。

ただ、カーパスでの見学もなかなかのんびりしていて良かったが、大きさが今ひとつだったので、次にスペースシャトルの発射を見学することがあったら、どのくらい近くで見られるのかは分からないが、見学ツアーに申し込んでみたいと思う。

草むらの観覧席で見渡したところ、その一角には300台くらいのクルマが止まっていたが、日本人どころか、アジア系と思われる客は私たち以外にはいなかった。基本的に、近くに住んでいる人が、2カ月か3カ月に1回の恒例行事として見学に行く、というモノなのかもしれない。そう言えば、大型のクーラーボックスやパラソル付イス&テーブルセットなど、あまり旅行者とは思えないような観覧用品を持ってきている人が大半だった。

参考資料 −−− カーパス送付予告状(82kBのJPEG画像)

参考資料 −−− カーパス・オモテ(62kBのJPEG画像)

参考資料 −−− カーパス・ウラ(79kBのJPEG画像)


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