翼端上反角のねじり下げ効果(08-03-04, -03-06)

上反角部の迎角の計算式から上反角のない翼央の迎角がaの場合に上反角部の迎角はa*cos(d)(dは上反角)となります。この事実から翼端上反角のねじり下げ効果が説明できます。

図で一番上の25度の上反角で例えば内翼部の迎角が8度の場合、上反角部の迎角は8*cos(25)=7.25度となり、内翼部の迎角の8度より0.75度小さくなります。つまり外翼部に0.75度ねじり下げが付いたのと等価です。
図で2番目の15度の上反角の例で内翼部の迎角が8度の場合、上反角部の迎角は8*cos(15)=7.727度となり、外翼部の上反角効果は0.27度に過ぎず、あまり効果があるとはいえません。

一番下は最近のハンドランチグライダーに見かける強い多段上反角の例です。上反角がパネル毎に10度ずつふえて、翼端では40度になっています。

上反角:a 0 10 20 30 40
cos(a) 1.00 0.98 0.94 0.87 0.77
迎角1 8.0 7.9 7.5 6.9 6.1
迎角1の捩り下げ効果 0.1 0.5 1.1 1.9
迎角2 10.0 9.8 9.4 8.7 7.7
迎角1の捩り下げ効果 0.2 0.6 1.3 2.3

迎角8度の場合(迎角1)、ねじり下げ効果は内翼部から翼端部に向かって0.1度、0.5度、1.1度、1.9度と徐々に増えていきます。これは英語でprogressive washoutといわれるものに相当し、上反角のないRCグライダーやハンググライダーなどでも使われていて空力的にも優れている様です。例2は例1の翼の迎角が更に2度増えて失速に近づいた状況です。翼端の上反角増は7.7-6.1=1.6度と翼央より少なくなっています。
この種の多段上反角グライダーは上昇頂点での「返り」が良いとされていますが、それには低速で大きい迎角の状況でこのprogressive washoutが失速の回避に寄与しているのも一因ではないでしょうか。
但し、大きい上反角の部分はマッコム氏の指摘によれば揚力を発生する機能に関しては極めて非能率です。例えば、40度の上反角のパネルの有効面積はcos(40)^2=0.77*0.77=0.59、つまり実面積の6割の働きに留まっています。有効揚力は小さくても抗力は実面積見合いで発生するので揚抗比の低下させそうです。一方、無段上反角に示した通り、楕円形の上反角翼は誘導抵抗が最低になるとされていますから、総合的には多段上反角が有利なのでしょう。


空力関連の話題いろいろ
ゴム動力模型飛行機ホームページ