ロイヤルハワイアン滞在記

(1993年7月)


4.ホテル前のビーチ

 プライベートビーチのスペース

 2列に並んでいるのが、プライベートビーチの
 チェア、頼めばパラソルも立ててくれる
プールの隣はワイキキビーチ。ホテル側の建物沿いに、けっこう広い面積がプライベートビーチ風にチェーンで仕切られている。このスペースに、まあまあゆったりと隣の人が気にならない程度の余裕を持って、ペアのビーチチェア(座椅子スタイル)が40組くらい配置されている。タオルはプール係員ブースで借り放題、頼めばパラソルも立ててくれるらしい。このビーチの席は、プールサイドのテーブル席よりは空いていた。おそらく、常時空きがある状態だったと思う。プールに比べると若い人が多く、子連れはほとんどいなかった。

チェーンの外側は公共ビーチで、みんな揃ってハワイ名物のゴザを敷いている。日中はかなり人口密度が高い状態で、湘南海岸を思い出させる。対照的にチェーンの内側はゆったりとした人口密度で、さらに3枚くらいのピンクのタオルを敷いて、座椅子にもたれて、パラソルがあればなお優雅。真っ昼間からカクテル飲んでいる奴がいたりして、時折うらやましそうな視線を浴びている。うーん、これはすごい落差だ。このプライベートビーチの最大の魅力は、ロイヤルハワイアンの客であることを自慢できることのような気がする。

人の視線が気にならない人なら、ゆったりとしたスペースで、波の音を聞きながらジリジリ日焼けできて快適な場所だと思うが、人が多いとそれだけで落ち着かない(群衆恐怖症の気も少しある)私は、このビーチ席はほとんど利用しなかった。

 砂遊び

夕方になると日差しが弱くなり人も少なくなるので、ビーチへ出て遊んだ。1歳半の海水浴の時は、こわいのか不快なのか砂の上を歩けなかった娘だが、今回は多少成長したようで、しばしためらった後、意を決して砂の上をヨロヨロと歩きはじめた。

腕輪の浮き輪と一緒にアラモアナショッピングセンターで買った砂遊びセット(3ドルくらい)を持たせると、その場でぺたんと座って、さっそく創作活動に入る。その横で、私も大きな山作り。ビーチ側のプールの入口(シャワーと足を洗うための水道がある)で汲んできた水をかけながら山の形を整えて、サンドアート風にならないか、とやってみた。しかし、垂直な壁を作り窓をいくつか描くと、娘が「ギャオース」と言いながら足で破壊するので、それ以上は進まない。大人が何人かでじっくり作れば、ちょっとしたサンドアートができそう。砂の質がこういうのに向いているのかもしれない。

 波乗り

波がこわい娘は、海の中にはだっこで1回つかっただけだった。波がこわくない私(若い頃、少しだけ波乗りをやっていた)は、ビーチでロングボードをレンタルして、ハワイの波乗りに挑戦してみた。レンタル代は1時間8ドル。傷だらけのボードばかりだったが、その中でも良さそうなのを選んで、けど持ってみるとかなり重く、そして幅がかなりあるので持ちにくく、陸上で扱いにくい板だった。さらに水の中でも、幅が広すぎて漕いでいる時に肘が水中に入らず、そのため推進力が不足していてなかなか前に進まない。波に乗れる場所はかなり沖で、そこまでたどり着くだけで疲れてしまった。

 サーフポイントは、ヨットの帆の上端のあたり
(右側の波で遊んでいるのは普通の海水浴客)
波の高さは浜からは腰くらいに見えたのだが、行ったらびっくり、小さくても肩、大きいのは頭まである。ポイントがかなり沖で波の大きさが良く見えず、なおかつロングボードは波頭とボードが比較的離れた状態の波乗りになるので、どうも波が小さく見えるようだ。

急に、下が心配になってきた。たぶん珊瑚礁(海底は見えなかった)。へたな落ち方をすると、ひじやかかとの肉がそぎ落とされたりする、と聞いたことがある。波のパワーが強いので、自分のボードや海底で強く頭を打ったりすると、沈んだまま浮かんで来れなくなる。海面にサーファーは少なく、隣の人とは最低5m、遠いと20mくらい離れていて、この人口密度の低さは、他人と絡まない点で安心だが、アクシデントがあった場合はすぐには助けてもらえないかもしれないので不安だ。なるべく他人から離れない位置にいるようにした。

よし、あの波がいい、誰もトライしていない、そら行け・・・と一生懸命漕いだ。しかし重いロングボードは、全然前に進まない。あれ、あれ、と思っているうちに、波は通過してしまう。加速が悪いか、場所が沖過ぎるかのどちらかだ。やや浜側に移動して、再度トライ。けれども結果は同じ。さらに浜に近づいてみた。わ、波がもう崩れようとしている、ここではあぶない。立ち上がった瞬間に波頭近くにいることになるので、その後すぐに波が崩れると、そのまま前へ落ちることがある。落差があり水深が浅いところに落ちて行くので、この落ち方はとてもあぶない。

はあはあゼイゼイ急いで沖に戻り、考えた。このボードの加速の悪さは、いくら私が10年間のブランクで腕の筋肉が落ちたとはいえひどすぎる。それに、他の人のボードの方がこのボードよりも浮力がありそうだ。とすると、このボードが重くて沈み気味なのが敗因だ。だとすると解決策は、やや沖から早めに漕ぎはじめて、筋力のすべてを出し尽くして、乗れるスピードまで加速するしかない。加速できたところで運良く波が来れば、立つこと自体は短い板よりも簡単なはずだから、なんとかなるだろう。

けれど、残っている体力を考えると、そう何回もトライはできない。一生懸命漕いで、それで結局乗れなかったら、もう沖に戻って来る元気がない。そして何より、持ち上げられ落とされるようなタイミングにはまってしまった時が問題だ。素早く移動できればタイミングを外してやり過ごすことができるが、今の私には無理。そうなったらボードを離して海中に潜るしかない。水の中でもみくちゃにされながら、頭上を波が通過するのを待つ方法だ。大きなボードが単体で大きな波で持って行かれると、パワーコード(足とボードを結んでいるロープ)が切れることがある。そうなったら、自分のボードを回収に行くのがたいへんなことになる。だからなるべくこの手は使いたくないけど、でも身体がケガをするよりはいいから、そうなったら仕方ない。

息を整えて、ラスト・アタック。浜に向かって、一生懸命漕ぐ。ボードの加速は鈍い。何枚もの波が通過していく。漕いでも漕いでもなかなか加速しない。ひいひい漕ぎ続ける。やっとスピードが出てきたが、乗れるスピードにはまだ足りない、頑張れ、でももうダメ、限界が近い、肩が上がらない、くるしいー、ともがいていたら、たまたまタイミング良く大きな波が入った。波の傾斜でボードが加速を始めた。がんばれ、もうちょっとスピードが乗れば立てる。しかし、ああ、波に取り残されてしまった。せっかくスピードが出ていたのに。

落胆の中、思い出した。波乗りの常識−−−「10枚の波のうち、大きいのは2〜3枚、普通の波の2〜3割増し、それが続けてくる」。後ろを振り返ると、やっぱり来ていた、大きい波。あわてて全開で漕ぐ。さっきの波のおかげでスピードは悪くない、タイミングもいいはず、がんばれ!!

波の斜面をボードがするすると滑りはじめる。これはいただきのスピード。握力のなくなった手でボードの両脇をつかみながら腰を上げ、膝をたぐり寄せる。左右のバランスを取って、慎重に、静かに・・・やった、うまくいった、立てた。ボードはさらに加速し、安定していく。なるべく長く乗っていたいので、曲がろうなんてことは考えず、前後のバランス(スピードのコントロール)だけに注意して、一路波打ち際を目指した。

波が急に力を失ってボードから降りたら、もう足が届く浅瀬だった。帰り道の半分以上を乗って帰ってこれた。「ハワイで波乗りをしたい」という昔からの夢を叶えた私は、精根尽き果て、こみあげる吐き気と戦いながら、ボードをずるずる引きずって返しに行った。たった1本だけの波乗りで、ちょうど1時間だった。

一部のガイドブックに「ビーチでレンタルするサーフボードは程度が悪いので、借りるならサーフショップへ」とあったが、たぶんこの情報は正しい。ビーチでレンタルできるボードは傷が多く、ロングボードはバルサで作っているはずなので、傷が多い=水が浸入して重くなる=浮力が落ちて使いものにならない、ということになる。実際、アラモアナSCかどこかで売っていたロングボードは、試しに持ち上げてみたら浜でレンタルしたボードよりもはるかに軽かった。

過激な運動で、身体はかなりまいってしまったようで、吐き気は深夜まで続き、夕食はパスした。そして背筋やわき腹の腹筋の筋肉痛は、夜中に寝返りを打ったら痛くて目が覚めるほどだった。さらに悪いことに、翌日になって肩が上がらなくなった。たぶん、海に入る前の準備体操が足りなかったからだと思う(自分のトシのせいだとは思いたくない)。

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