航空会社のFFPケーススタディ


6.注目すべきポイント

 基本的な発想のよさ

航空会社のFFPの基本構造は、「客席はいつも満席とは限らない。そこで、空いている席をプレミアムとしてプロモーションを展開し、自社便の指名買いを促進しよう」ということ。この発想は、実に素晴らしい。空いている自社便の席であれば、プレミアム原価は極めて安くなる。その分、プレミアム率を上げて、顧客にとって魅力的なプレミアム・キャンペーンとすることができる。プレミアム・キャンペーンにはいろいろな種類があるが、FFPほどプレミアム率の高い総付け(ポイント蓄積型)キャンペーンは、他にはない。

 強力で多面的な累進制

「プレミアム率を上げられる」というプロモーション特性を生かして、さらにFFPの魅力を強化しているのが、強力な累進制である。2倍のポイント(マイル)を貯めれば、得られる特典は2倍以上、3倍とか4倍になるので、ひとたびマイルを貯め始めると、より多くのマイルを貯めたいと誰もが思う仕組みになっている。そのため、顧客はできる限り同じ航空会社を利用するようなる。たとえば、第一希望日にマイルを蓄積している航空会社の便が満席だった場合、普通の顧客ならば他社便を探すところだが、マイレージシステムに囲い込まれた顧客は、マイル欲しさに可能な限り日程変更やルート変更をして、その航空会社を利用しようとする。

また、累進制が多面的である点も、良くできていると言える。Yクラスの1.5倍のマイルでCクラスに乗れ、またYクラスの2倍でFクラスに乗れるという、無料航空券での累進制だけでなく、上級会員制度になればさらに特典が広がるという累進制も、マイレージシステムの大きな魅力となっている。この上級会員制度により、収益の柱であるCクラスやFクラスを利用する顧客層をと囲い込む力がさらに強化されている。

 ポイントの貯めやすさ

飛行機に乗るだけでなく、提携しているホテルやレンタカーを利用すれば、マイルが加算される(1回の利用または1泊につき500マイルなど)。また、提携しているクレジットカードは、年会費がやや高めだが、利用額が大きければマイルはどんどん貯まる。このように、マイルを貯める方法が多彩に用意されているので、顧客はマイル蓄積意欲を失いにくい。

特に提携クレジットカードでのマイル加算は、通常のサラリーマンならばそれほどのマイルを獲得できないが、高額所得者だけでなく、企業の役員や自営業者、フリーランスの仕事の人など、仕事関係の支払いに自分のクレジットカードを利用できる立場であれば、マイルはどんどん貯めることができる。このシステムの開始当初は、年間加算限度額(マイレージプラス・UCカードのゴールドで年間300万円=マイル加算3万マイルまで)が設定されていたが、その後限度額は撤廃されたので、さらに多くのマイルを貯めることが可能となった。

さらに最近では、航空会社同士の提携が進展したため、たとえばマイレージ・プラスでは、UAのほかにスター・アライアンス加盟航空会社の便を利用しても、マイルが加算されるようになった。加算率は、UA便と同じか、やや低く設定されており、たとえば最も最近スター・アライアンスに加盟した(厳密にはスター・アライアンスへの正式加盟ではなく、UAとの提携)全日空を利用した場合のマイレージ・プラスへのマイル加算は、国内線で75%〜125%、国際線で70%〜150%となっている。


スター・アライアンス発足当時(1997年春)、合計5社


スター・アライアンス発足2年後(1999年春)、合計8社

 プレミアムを家族で共有することが可能

無料航空券は、マイルさえあれば、家族分をまとめて得られる。ということは、仕事の出張でマイルを貯めて、たくさん貯まったら家族みんなで旅行に行く、という作戦が使える。これはとてもうれしい仕組みだ。マイルを貯めた本人の分しか無料航空券をもらえないならば、その無料航空券は仕事に使うしかない、ということになりやすいが、家族の分ももらえるならば、話が全然違ってくる。

毎月のようにNY出張を繰り返している知人がいる。当然、FFPの会員で、それも最上級の1K会員だ。出張のたびに家を長く空けることになるので、奥さんや子供に申し訳なく思っている。しかし奥さんや子供は、まんざらでもないらしい。なぜならその知人一家は、知人が貯めたマイルで毎年、それもCクラスで、ハワイやアメリカ・メインランドに家族旅行に行っているからだ。1回の出張で、実航マイルが13940マイル、会社の役員なのでCクラス利用なので25%のボーナス、さらに1K会員なので100%のボーナスが付く。合計すれば1回の出張で31365マイル、年間10回の出張で313650マイル貯まる。家族3人分では、ハワイへのCクラスは240000マイル、アメリカ・メインランドへのCクラスは360000マイル必要だ。しかし彼の場合、提携しているクレジットカードに利用によるマイルや各種のボーナスマイルを加えると、毎年コンスタントに360000マイル以上を獲得しているので、「いつもマイルの使い道に困っている」とのこと。

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