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なぜ垂直上昇するのか(06-07-20, -08-09)
安定板が適切な位置におかれたゴム動力ヘリコプターは垂直上昇します。その理由を考えて見ます。
安定な垂直上昇のためには頭上げモーメントの発生機構が内在する必要がありますが、それはプロペラの首翼効果です。
なお垂直上昇の前提となる安定な上昇にはローターのもつ大きな角運動量が貢献していると考えられます。
機体はほぼ45度の傾斜で胴体軸方向に上昇中です。このとき機体に働く力はプロペラの推力(−全機抵抗)Tと重力Wです。その合力は図の通り機体を斜め下方向に加速します。これにより機体は斜め下に「下滑り」し、長い2本の線で示した気流に対することになります。ここで機能するのがプロペラの不安定効果別名首翼効果です。
首翼効果によりプロペラは空気力Lpで右上に引かれます。一方安定板にも下方から気流が当るので揚力Ltが発生します。実は安定板は回転しているのでLtの大きさ、方向は回転にしたがって変化しますが、ここでは1回転の平均値とします。安定板の位置を適切に選べた頭上げ回転モーメントLpxlpはLtxltと「W+Tの合力」による頭下げモーメントよりも十分に大きく、機首を垂直方向に回転させることになります。
このメカニズムは機体が傾いている限り継続するので最終的には機体は垂直上昇します。
安定板の重心位置を動かしてみましょう。
重心を前進させ、ltを大きくするとLtxlt>Lpxlpになり、頭下げのモーメントが頭上げのそれよりも大きいので機体は徐々に機首を下げていき、地面に向かって墜落します。。
一方、重心を後退させLtの作用点が重心(x印)よりも前進するとプロペラ、安定板の効果が相加され、強力な頭上げモーメントが発生します。この強力な回転モーメントにより機体は垂直上方を通り越して逆方向に傾きます。逆方向では丁度反対方向の回転モーメントが発生して逆向きの回転をおこし、この振動つまり尻振りまたは蛇行が繰り返されます。
以上の動作解釈は、これもヘリコプターの垂直上昇調整のポイントでふれた
1 尻振りや蛇行などダッチロール気味のときは主翼の重心位置を前進(翼を後退または機首に重り)
2 上昇の途中から垂直上昇の進路がそれて墜落に向かうスパイラルダイブ気味のときは主翼の重心位置を後退(翼を前進または機尾に重り)
とよく一致します。
実はKotobukiのサイトの書籍案内に「ジュニアのための科学研究ガイド」誠文堂新光社が紹介されていてその一章が「スカイスクリューはなぜ垂直上昇するか?」になっているので読んでみましたが、その内容は満足できるものではありませんでした。