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バルサヘリコプターの安定化−翼端重りの付加 (2006/8/25)
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ゴム動力ヘリコプターが垂直に上昇する理由は別記:なぜ垂直上昇するのかの通りですが、その大前提としての方向安定は回転の運動方程式の直接の帰結と考えられます。これはジャイロコンパス、こまや竹とんぼと同様のメカニズムで、回転体のもつ角運動量が大きいほどその回転軸を動かすには大きいトルク(力のモーメント)が必要だという物理法則です。角運動量=慣性モーメントx回転の角速度の関係があり、角速度は毎秒回転数x2πですから、慣性モーメントが大きく(例:外周部が重い)高回転のローターを使えば少々の外乱では方向安定は乱れないのです。

直径15cm、重さ1.13グラムの軽量のバルサプロペラを付けたこの機体、高性能を狙いましたが最初は全く安定に上昇しませんでした。 文献に見るゴム動力ヘリコプター「広範囲のトルクに対して安定化するにはローターの翼端に重りを付ければいい」との指摘をヒントに 下の写真の重りを追加したところ安定に上昇しました。計算してみると元々プラスチックプロペラの2/3だった慣性モーメントが数倍になっているので安定上昇は当然です。(プラスチックプロペラの慣性モーメントは36gcm^2、バルサプロペラの慣性モーメントは21gcm^2、重り付加後の慣性モーメント101gcm^2、15cm若草色プロペラのデータ 参照)

一方、この機体の胴体を半分にし、ゴムも半減したテストでもほぼ安定に上昇しました。この場合、安定板の中心とプロペラとの距離もほぼ半減しています。この機体に働く外乱は安定板に作用し、それが回転軸を動かすトルクを発生すると考えられますが、トルクの腕が半分になり従って外乱によるトルクもほぼ半減して、ほぼ安定な上昇になったのでしょう。


外周に重りをつけた慣性モーメントの大きいプロペラと普通のプロペラのヘリコプターを水平に発進させてみると、慣性モーメントの大きいプロペラの場合が垂直上昇になるまでの経路がやや長く、角運動量が大きい方が方向安定性が大きいことが確認できます。

胴体と安定板の回転数はローターの回転数の1/10以下です。実際に意味を持つのは慣性モーメントに回転の角速度を乗じた角運動量であり、胴体と安定板の慣性モーメントがローターと同程度以上でも問題になりません。

このバルサ機は不安定な上昇では、ぼぼ直進から直径数メートルの周回運動に転じますが、この周回運動は回転軸にトルクを加えた場合の歳差運動と直進運動の組合せと考えれば理解できます。