万恒河沙 巫女と似非探偵と怪人のいる処-和風ファンタジーと不条理小説


ご案内 オフライン さかきちか創作部屋 ツカノアラシ創作部屋 LINK 管理人日記

黒少女な50の単語 配布元はこちら

お題に沿って書きたる代物。ちまちまと少しづつ増やす予定。私の根がおかしいのか、幻想お耽美小説を書くつもりがどんどんシュールになっていく。とほほ。一応、和風黒少女と洋風黒少女の闘い(そうなのか?)としておこう、うん。

MENU

[01 眠り姫] [02 お人形] [03 黒] [04 洋館] [05 棺] [06 花園]
[07 鍵] [04 鐘の音] [05 御伽噺]


眠り姫(01)

 どこかの町の小さな四階建てのアパートにて。  部屋の中には、天蓋つきのアンティークな銀色の寝台が置かれていた。  天蓋から流れるような薄物のレースはひらひらと舞い、銀色に塗り複雑な彫りを加えられた寝台の柱には薔薇の造花が緑色した蔓とともに芸術的に纏わりつかせてある。お姫様の寝台と言い切って構わないような出来である。
 寝台の上には、死んだように誰かが眠っている。眠っているのは美しき眠り姫か。童話の中の場合であるのならば、眠り姫のように美しいお姫様が眠っているのだろうと想像するだろう。残念ながら童話の中どころか、この光景は私のアパートの部屋にいつのまにか繰り広がられていたのである。
 だいたい、この寝台はどこからやってきたのだろうか。私には全く皆目つかなかった。そもそも、この小さなアパートに運び込む時に誰にも不振に思われなかったのだろうか。
 私は多少の期待をしながら寝台に近づいて寝台の上を覗き込んだ。この状況、多少の期待をしても神はお許しになるに違いない。
寝台には銀色の王冠を被ったミイラ姫が鎮座していた。真珠のように白い歯、扇状に広がる黒髪、そして胸の前で組まれた形の良い手。永遠の眠り姫。接吻をしようが、水を掛けようが彼女は目を覚まさないに違いない。ミイラ姫の手には、何やら白い封筒。白い封筒には金色の飾り文字で『招待状』と書かれていた。
 どうやら、この招待状を渡すために誰かがミイラ姫と寝台を用意したらしい。 しかし私は招待状よりも、現実問題として目の前の寝台とミイラ姫をどうすれば良いのか悩んでいた。
 やはり燃える日に出すしかないのだろうか。
 途方にくれたまま、夜は更けていく。

menuヘモドル

お人形(02)

 私のお人形はいい人形。闇のように黒いドレスに、喰いつきたくなるほど赤い唇を持っています。
 私のお人形はいい人形。アスラバスターのように白い肌に、櫻貝のようなピンクの小さな爪を持っています。
 私のお人形はいい人形。凍ったような黒い瞳と、纏足したかのような小さな足を持っています。
 私のお人形はいい人形。絹を裂くような可愛らしい謳い声と、苦悶に歪むような魅力的な笑顔を持っています。
 私のお人形はいい人形。飽きてしまったので解体して、箱に詰めました。どくどくと赤い液体を出てきて、折角用意した素敵な箱を汚してしまいました。仕方ないので、私は泣く泣く、お人形をお庭に捨てに行きました。お庭にはオトモダチの可愛いお墓がいっぱいあるので、今度のお人形もきっと寂しくないでしょう。私は精一杯歌って踊ってお人形を慰めてあげました。
 夜になったら、次のお人形を狩りに町に行きましょう。黒ウサギさんと大ハサミを持って出かけましょう。次のお人形はどんなのが良いでしょう。不思議の国へ行った少女、それとも中国娘、それともそれとも絵草紙のお姫様。私の胸は期待にどきどきしています。
 るんたった、るん。

menuヘモドル


黒(03)

 しゃらん、しゃらん。黒塗りのぽっくりに付いた鈴が鳴る。しゃらん、しゃらん。白い坂道に影が二つ。しゃらん、しゃらん。初夏の午後。道には裾に白黒の蓮の花が染め抜かれた黒い着物に紅い帯した美少女と、白麻のスーツを着て白い日傘を差している若い男が歩いていた。
 町で評判の少女探偵と、そのお供のご登場。しゃらん、しゃらん。
 初夏の午後。ゆらゆらと空気が揺れている。しゃらん、しゃらん。
 少女の紅い帯は胸高で締められただらり帯、黒い着物は裾長で、白い手で小粋にちょいと摘んでいる。黒漆のような黒髪を肩の辺りで揃え、眉の上辺りで切りそろえた前髪の下から覗く大きな杏形の瞳は、右と左で色違い。漆黒の髪が映える陶磁器のように白い肌は蒼褪め。果実のようにぷっりととした紅い唇には皮肉気な笑みを称えていた。
 はてさて、こんな気取りきったご格好で少女探偵を名乗るとは如何。いったい、彼らは何のための登場したのか、また何を始めるのか。全てが謎である。
 それはともかく、二人はどこへ行くつもりなのであろうか。しゃらん、しゃらん。
 しゃらん、しゃらん。初夏の午後。

menuヘモドル


洋館(04)

 招待状を持って出かけよう。はいほー、はいほー。謎と神秘の招待状を持ってお出かけだ。
 私はミイラ姫が持っていたの招待状を持って出かけることにした。お供は、黒兎号と名づけられた自転車と早起きして作った特製サンドイッチ。封筒の中に入っていた簡略を絵に描いたような地図を頼りに、てくてくと出かけよう。
 急がなくちゃ、急がなくちゃ、イソガナクチャ。でも、何故に。
 さて出かけてみると、目的地は迷路の先。入りくんだ道と、似たような路地。階段しかない坂に、細くて行き止まりの道。うろうろする事、数時間。白い坂の上に黒々とした森が現れた。森の入り口には、黒い鉄製の門。門は私が来るのを待っていたかのように、音を立てながら開いた。きぃきぃきぃ。門の先に待つは黒い闇のような木々と白い道。私は 誘われるようにどんどん奥に黒兎号を転がしていく。くるくるくる。
暫く進むと、黒い洋館が現れた。誰のお屋敷なのだろうか。さすがに、気後れして踵をかえそうとした、その時。
「いらっしゃいませ、お客様。招待状をお持ちですね」  と、背後から声がした。振り返ると、そこには絵に書いたような執事姿の白兎が立っていた。白兎と言っても、頭だけ白兎の着ぐるみを被っているかのような姿だった。その前に彼はいつどこから現れたのだろうか。  はてなだらけの私に対して、自らの姿と出現方法について何も疑問に思っていないかのように冷静に執事の格好をした白い兎が言う。 「先ほどから、ご主人がお待ちかねです」  さてはて、ご主人とは誰なんだろうか。私は小首を傾げながら、質問は受け付けないとばかりに先に立って歩いて行く白兎を追いかけたのであった。
 洋館にようこそ。

menuヘモドル


棺(05)

 洋館へようこそ。
 私は洋館に入った途端、ひとりぼっちになってしまった。何故なら白兎の執事が「少々、ここでお待ち下さい」と言うなり私を玄関ホールに置いてどこかに行ってしまったからである。本当に、素早い輩である。この素早さは兎の面目躍如と言うところだろうか。
 仕方なく、私は玄関ホールを勝手に見学させて貰うことにした。吹き抜けの玄関ホールの中心には大きな階段があり、階段を上りきった壁には少女が描かれた大きな絵が掛けられている。少女の絵は美しいが背景も少女自体も暗い色で描かれており、素人である私にはさて玄関ホールに相応しい絵なのだろうかと不思議に映った。まあ、そこまでは良い。 問題は、何故がホールの中心に金で縁取りされた硝子製の棺がオブジェのように置かれていることである。
 棺の側面から見えるは毒々しいほどに紅い薔薇。そして、ちらちらと見える黒い色。どうやら、中には何かがいるらしい。
 私は好奇心に駆られて、そっと棺に近寄る。棺の中には、黒いゴスロリ風のドレスを着た美しい少女が眠っているのかのように横たわっていた。蒼褪めた頬に、夢見るように閉じられた目、そして血色の悪い唇。少女は胸の辺りで手を組まされて棺の中に横たわっていたのである。
 屍体なのだろうか、屍体なのだろうか、屍体なのだろうか。私の頭の思考は壊れたレコードのように同じ所をぐるぐる周る。ぐるぐるぐるぐるぐる。
 好奇心は猫をも殺す。
 先人は良い事を言ったものだなと、私はひとりごちた。

menuヘモドル


花園(06)

 秘密の花園には、何があるの。閉じられた秘密の花園には何があるの。
花園には、白い十字架がいっぱい。白いお墓がいっぱい。
 さて、誰のお墓。誰がお墓を作ったの
 お人形さんのお墓。黒うさぎさんと、黒少女が作ったお墓。
 なぜ、黒うさぎと黒少女はお墓をつくったの。
 それは、ないしょのしょ。それとも、アナタも埋まりたい?

menuヘモドル


鍵(07)

 よくよく見れば、棺の中の少女は大きな黄金色の鍵を抱いていた。さてさて、何処の鍵なのでしょうか?もしかして、私は何やら悪趣味なゲームにいつの間にか参加させられてしまったのだろうか。私は途方に暮れて、棺の中を見下ろした。
 少女が抱いている黄金色の鍵は、私の上腕程の長さで、驚くほど重量があるように見える。いったい全体こんなに大きな鍵はどこに嵌るのだろうか。ホールを見渡すが、それらしき鍵穴はない。執事は、まだ戻ってこない。生きているのか、死んでいるのか、はたまた、ただのできの良い人形なのだろうか。執事は、まだ戻ってこない。ビスクドールのような白い肌。キリキリキリ。螺子が回るような音。きりきりきり。少女の目が見開いて、出来の悪いマリオネットの動作のように序々に上体を起こしていく。キリキリキリ。緑色の瞳に、金の髪。きりきりきり。少女は、黄金色の鍵を両手で身体の前に持つと、そのまま自分の身体に突き刺した。キリキリキリ。そして、鍵を開けるかのように、鍵を一回転させたのである。
 どこかで、重い扉が開く音がした。
 そして、少女は薔薇色の唇の端から一筋の血を垂らすと、緑色の瞳を見開いたまま、ばったりと棺の中に崩れ落ちたのであった。次の瞬間、少女は耳をつんざくような気味の悪い声で笑い出す、笑い出す、笑い出した。止まらない少女の笑い声。
 執事は、まだ戻って来なかった。
 さて、これから、私はどうしたら良いのだろうか。なかなか解答は出そうになかった。

menuヘモドル


鐘の音(08)

 ごーん、ごーん、ごーん。どこからか、お寺の鐘の音がする。少女探偵とその執事は一瞬足を止めて、鐘の音に耳を澄ませた。
少女探偵は、猫のように目を細める。くるくると回る白い日傘。少女探偵は優雅な仕草で、帯から吊り下げた銀色の小さな懐中時計の時間を確かめると、再び歩き出した。誰かと何処かで待ち合わせでもしているのだろか。少女探偵と執事は、少し歩みが速まったように見えなくもない。
 蝉の鳴き声が聞こえる。くるくると回る白い日傘。くるくるくる。くるくるくる。くるくるくる。

menuヘモドル


御伽噺(09)

 始まりは、鏡だった。  昔々、その昔。黒い森の奥の塔にはお姫様が囚われておりました。呪われし姫君は、白馬に乗った王子様が呪いを解くその日まで塔の中にいなければなりません。「麗しき姫君」と仮面を被った侍女達は、お姫様のことをそう呼びます。姫君ほど、美しく、聡明でお優しい方はおりませんとみな口を揃えて称えます。しかし、塔の鏡には厚い布が被せられ、硝子窓には、板が打ち付けられているので、お姫様は自分の美しさを確かめるには、魔法の手鏡を覗くしか術がありません。手鏡はお姫様が生まれた時に魔女から贈られたものでした。お姫様は、毎日毎日手鏡の中の自分をうっとり見とれながら、いつかやってくるであろう王子様をいつまでに待っているのです。 はてさて、呪われし姫君の呪いとは何。

 地下室には拷問部屋。急募、容貌麗しく若き女性。高給待遇。姫君の美容と健康のために、鉄の処女や針だらけの鳥籠などが貴女をお待ちしております。

menuヘモドル



黒少女な50の単語 奇妙な季節・春 奇妙な季節・夏 奇妙な季節・秋 奇妙な季節・冬 異人館T 白雪と探偵 異人館U
解体少女人形箱 青髭の塔


Copyright (C) 2006. Mangougasa. All Rights Reserved.