万恒河沙巫女と似非探偵と怪人のいる処-和風ファンタジーと不条理小説


ご案内 オフライン さかきちか創作部屋 ツカノアラシ創作部屋 link 管理人日記

list
■奇妙な季節・春
■奇妙な季節・夏
■奇妙な季節・秋
■奇妙な季節・冬
■異人館T
■白雪と探偵
■異人館U
■解体少女人形箱
■青髭の塔
■402号室の客
■嵐の孤島
■薔薇の葬列
■Rの晩餐
■バーの外で待ち合わせ
■鬼首邸殺人事件
■神田川一生氏の災難
■夢
黒薔薇男爵の逆襲と災難
ひとくいのかがみ/しんちゅうあそび

切り刻まれて25人の紳士に食べられたA・アップルパイ氏の悲劇的な最後

Aはアップルパイのaだった。
扉を叩くノックの音。
二十六人目の招待客の華やかなる登場。
A・アップルパイ氏から、ご自慢の手作りを食べに来ないかと招待状が来た。僕は一も二もなく、この御招待を受けることにした。何故なら、みなさんご存知ないと思うが、 A・アップルパイ氏お手製のアップルパイは、口では言い表せない位、この世のものとは思えないほど美味しいのである。
一口食べれば、夢気分。口にしたら最後、誰でも病みつきになってしまうこと請け合いである。

あれこそが悪魔の手によるアップルパイ哉。(字余り)
招待された当日、僕が少し遅れてa・アップルパイ氏の家を訪れた。すでにA・アップルパイ氏の家には二十五人の客が到着していた。ほんの少し遅れたつもりだったが、どうやら僕は他のお客より随分と遅れてしまったみたいである。それとも、他のお客が僕よりも相当早くA・アップルパイ氏の家を訪れたのだろうか。真相は未だに解らない。
とにかく、僕は二十六人目の招待客だったらしい。その上、夜会服をしっかり着こんだ二十五人のお客は遅れてきたヒトを待ってくれるほどお優しくはなかったらしい。
なぜなら、二十五人の招待客はすでに大きな皿にソースが滴るA・アップルパイ氏特製のアップルパイをみんなで仲良く切り分けていた。
黙々と口に入れられるアップルパイ。
次々と皿から消えて行くアップルパイ。
憮然とする僕のことなんぞ全く眼中なしで、みんな揃って無我夢中でアップルパイを食べていた。
b氏は齧って、c氏が切って、d氏が分けて、e氏が食べて、f氏は腕ずく、g氏が手に入れ、h氏は飲んで、i氏が調べて、k氏が残して、l氏は憧れて、m氏が泣いて、n氏は頷いて、o氏が空けて、p氏は頷いて、q氏が四つに分けて、r氏は追いかけて、s氏が盗んで、t氏は取って、u氏がひっくり返して、v氏は良く見て、w氏は欲しがって、x氏・y氏・z氏・&氏が揃って一切れ手に入れたがっていた。
僕はどうして良いか解ず、戸口で立ち尽くしていると顔見知りのb氏が口の周りに、アップルパイ氏特製のアップルパイ用の赤いソースを口から滴らせてこう言った。
「残念ながら、君の分はないよ」
b氏は全く悪びれずに言いたいことだけ言うと、すぐに僕に背を向けてアップルパイとの格闘に向かってしまった。あまりに素っ気ない態度。どうやら、アップルパイは二十五 人の招待客で綺麗に分けてしまったらしい。僕はアップルパイを七転八倒した後に漸く 諦めた。ない袖は振れない。ないものはないのである。落胆のあまり僕はA・アップルパ イ氏に挨拶もせずに、さよならも言わずに家に帰った。

二十六人目の招待客のおまぬけな退場。
翌日、A・アップルパイ氏が謎の失踪を遂げたことをヒトづてに聞いた。


はろうぃんぱーてぃ

オ菓子クレナイトイタズラシチャウゾ。とんとん、名にの音?血のように真っ赤な月夜の夜だった。牛乳瓶を片手に玄関に出ると。扉の影からまかり出たるは、ふれんちかんかんを踊る卵男と南瓜男。二人ははんぷてぃ・だんぷてぃを口づさみながら踊っている。だんす、だんす。ひとしきり踊って満足したのか、にやりと笑って二人揃って片手を出した。どうやら、お菓子をおくれと言うことらしい。恐らくここで断れば、世にも思わぬいたずらをされるに違いない。仕方ないので、彼らを招き入れると、私はパンプキンプリンを手際良く作り一人で賞味して楽しんだ。ハッピー・ハロウィン。
さて、卵男と南瓜男は何処?

殺人事件

pjは誰?
霧の中から現れた烏誓遊という名の奇妙な町。死んだ資産家の館。少年の作った奇妙な箱庭の館。少年の作った箱庭に存在する首のないpjと言う名の女。pjは誰?母親の違う住人の子供。黒服の小悪魔、もとい探偵。毒入りの吹き矢。浴室の全裸の美女の屍体。 pjは誰。時計台に磔になった男。哀れひとり、ふたりと消えていく登場人物。25人の紳士に切り刻まれ食われたA・アップルパイ氏の悲劇的な最後。
pjは誰?


■コメント■
「切り刻まれて25人の紳士に食べられたA・アップルパイ氏の悲劇的な最後」は、マザーグースでも有名な歌のひとつです。abcの覚え歌なんですが、実際に「aはアップルパイだった」から始まりbから&まで上に記載した通りの歌が続いています。かなり、不気味と言えば不気味ですが・・・割とマザーグース多いです、こういう歌。因みに、オフライン本と同題名ですが、全く違う話になっています。こっちに乗せたのは、10年以上前の作品だったりして・・・。(汗)


前のページ リストに戻る 次のページ

万恒河沙top


copyright (c) 2006. mangougasa. all rights reserved.